【古本の年齢】

【古本の年齢】

古書で注文した新書本が届いて、奥付を見たら昭和三十年三月の発行になっている。発行日の僕は生後六ヶ月であり、その三か月後に妻が追いかけるように生まれてくる。三者はほぼ同い年であり、自分たち夫婦もこの本のように古びているのだなと思う。

人間同様に古びたその本の表紙はシミだらけで、天地も小口も茶色く日焼けしている。ていねいに読まないと製本が崩れて本の体裁を失うかもしれない。

シリーズ名は「がくえん新書」といい、法政大学出版局が発行者になっている。

法政大学卒業後徴兵され、人を殺すのが嫌で病人を装って戦場から逃げ出し、坊主の跡取りになる道から逃げ出すため自らすすんで徴用工に志願して戦地に送られ、終戦後の法政大学で哲学を教えて亡くなった哲学者の本だ。

朝の郵便受けをのぞいたら、はるばる長崎の古書店から届いていた。

コメント ( 2 ) | Trackback ( )
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コメント
 
 
 
書物の解体学 (みんくまごろー)
2023-05-10 09:30:10
こんな詩を書いたことがあります。
よろしければ、読んでみてください♪ ^ ^
 
 
 
RE:書物の解体学 (den6blog)
2023-05-10 11:12:39
お久しぶりです。
ご健在がなによりもうれしいです(笑)
お互いにコロナ禍を生き延びましたね。
三好さんがさっさと生前葬を済まされたりしたのでなおさらです。

詩、読ませていただきました。

僕は最近、すでに亡くなられて著書が古書でしか手に入らなくなり、「時代」という括りでは確定されてしまったものの、この人は「いい人」だったんだなあと思える方の、ボロボロになった本を買って読むのが好きです。思想は古びても思索は繰り返されるだけで古びない。

古いレコード盤に針を落とし、著者の「思索の過程」が刻んだ溝をたどり、その溝から「思索の過程」が読者の中に再生される、そういう言葉の不思議が楽しくてたまりません。どうぞお元気で。
 
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