◉冬の夜空と昇天

2018年1月30日
僕の寄り道――◉冬の夜空と昇天

凍える夜に後架(漱石はよく厠のことをそう書いている)に行き、身震いしながらもどって温かい布団に潜り込むと
「ああ、あったかーい!もうこのまま死んじゃってもいい!」
などとオンナコドモは言い、男は黙って心の中でそう思う。

湯に浸かって手足を伸ばし「あーーっ極楽極楽」と声が出るのが男で、オンナコドモは「あーーっ極楽極楽」とはあまり言わない。極楽は親父臭いので、オンナコドモはただ黙って気持ちがいいのだろう。

かつて我が家で飼っていたミニチュアダックスフントは、夜が更けて布団敷きが始まるとピョンピョン飛び跳ねて喜び、飼い主が横になった布団の脇に潜り込み、気持ちがいいのかふーんと小さな吐息を漏らし、人の言葉に翻訳すれば
「ああ、あったかーい!もうこのまま死んじゃってもいい!」
だったのだと思う。

冬の夜は暖かい寝床に入るのが気持ちよく、あまりに気持ちよくて真上に光る人生の北極星が思い浮かぶ。昇天とは生き物にとってほんらい気持ちの良いものだったのかもしれない。


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