▼仕業(しわざ)……3

 

 人が何かをした痕跡がある場所には人の残像がある。そこでどんな残像を見るかは人それぞれの勝手なのだけれど、無人の八百屋を見て働く魚屋の残像を見る事はまれなので、場所はたいがい場所固有の残像を持っている。




街角で見つける小さな人の痕跡たち



 親に客があって帰ったあと、タバコの煙とヤニ臭さ、人が発散した体温、整髪料や化粧の臭いにまみれた体臭が残っていたりすると、さっきまでそこにいた人の輪郭が見えるような気がするのが、幼い頃からずっと不思議だった。



 思えば子どもの頃に、ブリキのおもちゃや積み木で町を作ったりしてひとり遊びしたのは、そこにかつて見たことのある人の輪郭と仕草を縮小投影して遊んでいたのであり、生まれてから死ぬまで、人は残像と実像を同時に見ながら暮らしているような気がする。

 

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