電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
「あの夏」
2017年2月26日
僕の寄り道――「あの夏」
ニュースの見出しに「あの夏」とあって、「あの夏ってどの夏?」と思う。
記事を読んでみたら若者世代、そのごく一部の人々によってのみ共有され得る「あの夏」についての記事だった。おじさんは当然知らない。そういう記事が全国紙に出ている。
人にはそれぞれ他人とは違う「あの夏」がある。昭和の時代に「あの夏」といえば被曝や敗戦という出来事のあった「あの夏」が多くの人々に共有されていた。戦後生まれの自分たちでも、親たちが「あの夏」と言えば「あの夏」のことだろうと思えた。
国民的に共有される「あの夏」は遠ざかり、いまはひとりひとり個別に「あの夏」がある。
「あの夏」の文字を見て自分にとって忘れがたい「あの夏」を思い出したけれど、「あの夏」でわかりあえる人はもう誰もいない。新聞に「あの夏」の文字を見て「あの夏」と刻まれた墓標があったら手を合わせてみたくなった。人それぞれに黙祷したい「あの夏」があるだろう。
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