【円融無碍】

【円融無碍】

子どもの頃、蚊のお医者さんがかわいい蚊注射をする童謡かとおもった「カチューシャの唄」。その作詞者である相馬御風の書斎(糸魚川)に、坪内逍遥絶筆のひとつである「圓融無碍」(えんゆうむげ)四字の丸盆があったという。いまは記念館にあるのかもしれない。

私はこれを仰ぎながら、しみ/″\ありし日の先生を偲んでゐる。夏目漱石の最後のモットーが「去私則天」であり、坪内先生のそれが「圓融無碍」であつたのも興味深く思はれる。(相馬御風「独愁」)

1999年7月1日 都営バス
DATA : SANYO SX112 

相馬御風と小川未明は高田中学(現新潟県立高田高等学校)から早稲田まで学友で、ともに逍遥の薫陶をうけた。「円融」は個々を認め合いながら仲よくともにあることなので、融和の融より宥和の宥で円宥のほうが、無碍すなわち隔てるものなくたがいにゆるしあう感じがしてふさわしい気もするけれど「融けあう」の「融」になっている。ゆるしあう主体となる自性(じしょう)などないという唯識思想だからだろうか。

雪国上越に育った相馬御風も小川未明も、その作風を思い浮かべると、どちらもとけあうようにやさしい。なんとなくそこからよろけて急に吉本さんの『良寛』を読んでみたくなった。

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