【手っ取り早い方法】

2020年6月20日

【手っ取り早い方法】

十代の頃は暗記力が優れていた。大学入学直後もまだその力が残っていたようで、フランス語の授業は一度しか出席しなかったけれど、副読本の日本語訳を探して手に入れ、突き合わせて完全に丸暗記し、最後の試験に出たらスラスラと答案が書けて AA の単位がもらえた。楽しく丸暗記できたのは記憶力云々より本の内容自体が楽しかったのかもしれない。暗記しようとしたせいか集中して読めた。誰が書いた何だったか忘れたのが残念だ。そういういい加減な体験のおかげでフランス語の響きがいまも好きだ。

よく出てくる「表象」という言葉の意味することが書き手と本によってとっ散らかって自分には感じられ、ショーペンハウアー『意思と表象…』全3巻をうんうん唸りながら読まされたこともあり、また「表象」かと文字を見るたびにうんざりする。うんざりするので、その2文字が出てくるたびに「ルプレザンタシオン」と心の中でルビを振っている。

あらかじめシナリオを読んで丸暗記してしまえば、踊るように演じる役者たちを見ているだけで、どんな会話が行われてどう話の筋が展開していくかわかってしまうわけで、それはあの安直な丸暗記フランス語単位取得大作戦に似ている。あらかじめ自分が用意した「プレザンタシオン(台本)」を自分で「ル(再現)」して自分が観賞するわけで、自分の背後から光を投射して自分の姿が前方の壁に投影される様子を自分が観劇するわけだ。表象とはそういうルプレザンタシオン、すなわち再表現的に自作自賛をする人間の思考方法のことであると解することにしている。フランス語だと覚えやすい気がするので。

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