メンディングテープ

2016年10月26日
僕の寄り道――メンディングテープ

セロテープのように使用して表面がマット状なので上に文字が書けるテープ、などと説明しなくてもだれでも知っていると思っていたメンディングテープが、近所の文具店に行ったら「いま太巻きは置いてないんです」と言う。メンディングテープが昔ほど使われなくなったのか、使用量が減ったので径の小さい細巻きしか売れないのかもしれない。

「よければ取り寄せましょうか?」と言ってくれた時代もあったけれど、最近はそういう商店が少ない。「まとまった量の箱買いでいいから取り寄せられませんか?」と聞くとダメだと言う。20世紀の終わり頃からすでに「うちにも普通の暮らしをさせてください、いまより面倒なことはしたくないんです」などという言葉を商店主から聞くようになったので、近所の個人商店から物を買うという消費はその頃から縮小傾向だったのかもしれない。みんなが普通の暮らしを受け身でする人になり、そこにロボットのようなネット通販が台頭した。

昔は個人商店を便利屋という名前の移動問屋が回っており、どんなものを少量でも仕入れて届けていたので、街の商店は気軽に客の要望を聞いて何でも取り寄せてくれた。最近はああいう職業がなくなったのだろうか。近所の小さな診療所が好きで通っているが、頻繁に御用聞きが来てしょっちゅう医療品を届けにきており、頼めば何でも持ってきそうなので、町医者という商売の世界ではああいう小回りをきかせた仕事がまだあるのだろう。

近所の個人商店がなくなると困るので、なるべく近所で買い物をしたいと思っている。けれど、ないものは取り寄せても売りますという店が次第になくなっていくので、仕方なしにネット通販で取り寄せる機会が増えている。そして、作り手と買い手の間にあった富を分かち合う仕組みが消えて、豊かさと貧しさの両端だけが肥大していく。この20年くらいを振り返ってそういう流れになっているように思う。

 

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