魚紋(もじり)

2014年4月18日(金)
魚紋(もじり)

00
開高健に出てくる「魚紋」という二文字だけを検索窓に入力してやると、飲食店情報と、手相見のサイトと、壷屋焼の金城次郎さんがヒットするが、それらの読みはみな「ぎょもん」である。「魚紋+もじり」と入力してやると、漁師や、釣り人や、愛魚家のページが検索の網に掛かるが、なぜ魚紋を「もじり」と読むのかがわからない。

01
「もじり」という言葉を調べてみたら「捩り捩る」があって「すぢりもぢる」と読む。辞書には近松門左衛門の浄瑠璃『冥土の飛脚』から引用があり、
「里の裏路(うらみち)畦路(あぜみち)をすぢりもぢりて藤井寺(ふぢゐでら)」
♪里の裏道や畦道を曲がりくねって藤井寺に着いた(内山田洋とクールファイブ風)、というように用いられている。

02
魚が水面近くにやってきて餌となるものを捕食する際、水面が波立って模様ができることを魚紋(ぎょもん)といい、その「魚紋」に餌を追って体をくねらせる「捩り(もじり)」の読みを当てたのだろう。開高健ではこんな風に用いられて出てきた。

03
 どこの池や川へいっても釣る人がいないので不気味なくらい静かだった。杭、桟橋、岩かげ、藻のかげ、淵、いたるところに魚紋(もじり)があって、影が閃く。魚にみちみちている。藻かげで魚の呼吸する音、水面に跳ねる音、もつれあって逃げる音などにみちている。あとは木の葉のそよぎと、水や泥のうえで煮える日光のざわめきがあるだけだ。(開高健『青い月曜日』)

04
「水や泥のうえで煮える日光のざわめき」などとというすごい表現を寝転んで読みながら、なんて表現が的確で上手なんだろうと身体をすぢりもぢりした。

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