【ぼたとおはたき】

【ぼたとおはたき】

(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2003 年 4 月 15 日の日記再掲)

自分の日記を読み返してみると、2000 年 11 月 20 日の日記にこんなふうに書いている。

「割れた米を「ぼた」と呼ぶ地方もあるそうだ。ぼたで作った餅だから「ぼた餅」だというのである。「牡丹餅=ぼた餅」の異説である。いずれにせよ、食べ物を大事にしていた時代のお話だ」
 
牡丹餅・お萩というのは春と秋のお彼岸商戦に合わせて和菓子屋が付けた名前であり、もともとは「ぼた米」で作ったから「ぼた餅」だったと僕は思っている。ボタ山の「ボタ」とも語源を同じくしそうな穀類の屑である「ぼた」を、北陸では「おちらし」と呼び、郷里静岡では「おはたき」と呼ぶ。米俵の底をはたいて出てくる割れ米も大事に食べたのだ。その「おはたき」と「ぼた餅」を繋ぐものは無いのかしらと心の片隅で思っていた。
 
郷里静岡県清水の駅前銀座商店街。
すっかり人通りが少なくなったけれど、顔見知りの店主もいるこの商店街が、しばし介護生活から離れての買い物に都合がいい。

義父の食事にはスプーンより蓮華(れんげ)が適しているとわかったのだけれど、樹脂製の蓮華では可哀想なので、薄い磁器製の蓮華を買ってあげたかった。馴染みの『リビングハウスこまつ』で
「磁器のレンゲあるかな?」
と聞いたら、ベトナムで仕入れてきたという素敵なデザインのが見つかったので、義父が落としてもいいよう、あるだけぜんぶ買い込んだ。

続いて義父母の部屋の照明器具、そのグローランプが 2 種類切れていたのを出掛けにポケットに突っ込んで帰省したので、斜め向かいの電気屋に行き
「これと同じやつ」
と言ったらすぐに棚から取り出してくれた。すいている商店街というのは店主の応対もきめ細やかで、消費者にはかえって便利なのだ。

 
帰省するたびにシャッターを下ろした店舗が増えていくのだけれど、その前に荷物を広げて野菜や乾物を商う人たちが現れていて、わずかだけれど活力を補っているのがいいなと思う。戦後元闇市から発展した商店街を再生する鍵は、平成の闇市を復興することにあるのかもしれない。

清水駅前銀座商店街にて

何か買うものはないかしらと道端に並べられている商品を眺めていたら、「おはたきもち」なるものがあるのに驚いた。やはり、欠けた割れ米を集めて餅にした伝統食だという。この「おはたき(ぼた)もち」を丸めて餡をまぶしたものがきっと「ぼた餅」の原型だったのだろうと意を強くした。

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