緊張


D810 + AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G

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電車に乗っていたら、ある駅で、顔を隠した男が、勢いよく乗り込んできた。
真っ黒な帽子を深くかぶり、黒いマフラーを顔に巻いている。
外から見えるのは、目の部分だけだ。

その目を見ると、どうもアラブ人のようだ。
中型のリュックを背負っている。
その男が、正面の席にドンと座った。

思わず目が釘付けになる。
誰が見ても危険人物に見える。
車内の多くの人が、緊張しているのが伝わってくる。

男から目を離すことが出来ない。
つい様子を窺ってしまう。
男と目が合ってしまい、慌てて目を逸らせる。

顔を隠したアラブ人、それも何かの入ったリュックを持っているのだ。
人種差別をする気はないが、だからと言って、無視するわけにはいかない。
あの映像の中で、ナイフを振り上げていた男と、ほとんど同じ扮装なのだ。
これで何とも思わないなら、そのほうがどうかしている。

顔を伏せて、視界の隅のほうで、男を観察する。
自爆テロなら、身体に爆薬を巻きつけるはずだ。
しかしリュックに爆薬を入れることだって、当然できるだろう。

あの大きさなら、爆発したら車両が吹き飛び、下手をすると脱線するだろう。
真正面にいる自分は、絶対に助からない。
席を移動すべきか・・と真剣に考える。
次の駅で降りようかとも考えた。

男はせわしなく動くが、それほど緊張している様子はない。
もし事を起こす気なら、強い緊張状態にあるはずだから、もっと異常な動きをするはずだ。
そもそもテロを起こすなら、こんな空いた時間帯の電車を標的にはしないだろう。

やがて男は、顔に巻いたマフラーを取った。
中から若々しいアラブ人の青年の顔が出てきた。
どうやら寒くて巻いていただけらしい。

それにしても、少し無神経な服装である。
アメリカだったら、床にねじ伏せられていても、おかしくないだろう。
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出社


D810 + AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G

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今週は仕事がいっぱいで、建国記念日ではあったが会社に出た。
明日も明後日もスケジュールがぎっしり詰まっていて、かなり大変そうである。
少しでも仕事を進めておきたくて出社した。
来週はまた出張の予定である。



チャーチのライダー。
高品質なカスタム・グレードのスエード・チャッカブーツである。
色はダーク・グリーン。
ソールはクレープ・ソール。
ラストは81でサイズは7F。

まさに正統派のチャッカブーツである。
丸っこい81ラストで作られている。
幅は広めであるが、長さは寸詰まり気味のラストで、つま先の空間の余裕は少ない。

色は非常に珍しいダークグリーン。
恐らくショップ別注色だと思う。
阪急メンズ館のセールで売れ残っていたものを安く購入した。
もう作る予定は無いので、この機会を逃すと、二度と手に入らないだろうという。

こんなにいい靴が売れ残るなんて、お客も見る目が無い・・と思ったが、この色は確かに合わせづらいかもしれない。
いざ買うとなると、どうしても保守的な選択になり、結局は黒か茶色を選んでしまうものなのだ。
恐らくセールで安くなっていなければ、僕もこの大胆な色を買うことはなかったろう。

ハーフ・サイズ大きい7Hと何度も履き比べ、ずいぶん悩んだのだが、結局7のほうを選んだ。
普通の厚みの靴下を履いて、ほぼピッタリの大きさで、捨て寸の余裕は少なめである。
恐らく休日にしか履かない色なので(笑)、もう少しゆったり目のサイズでもいいかと思ったが、7Hの方は歩いてみると靴の中で足が少し動く。
スエードということもあり、素材が伸びる可能性も考慮し、ピッタリの7のほうにした。
この大きさだと、踵も吸い付いてくる。

なかなか美しいグリーンである。
発色がしっかりしており、いい素材であるのが、見ただけで伝わってくる。
阪急メンズの別注色として、あまり見かけない色のスエードを選び、何種類か作ったようだ。
実際玄関にこの靴が置いてあると、きっとオーナーは一家言ある人なのだろう・・と想像してしまう。
そんな存在感を持つ靴である。

服装とのマッチングには、少々悩みそうな色である。
買う人が皆そう言うと、店員さんも笑っていた(笑)
試着した際に、鏡の前に立たされたが、着ていた服の色に今ひとつ合っていないように見えて、考え込んでしまった。

しかし実際に履いて歩いてみると、意外に使いやすいことがわかってきた。
濃いグリーンといっても、出しゃばることはなく、しっとりとした感じで納まってくれる。
ジーンズとの相性もなかなかいい。
時計のベルトの色をグリーンにしてみたら、それがまたよく合ってくれた。

クレープ・ソールということもあり、履いた感触は非常に柔らかい。
厚みのある靴下を履いたら、最初はかなりきつめで、失敗したかと思ったが、しばらく歩くとほどよくなってきた。
ただ指先の余裕が少なく、長距離を歩いたら両足の小指が痛くなった。
ひとつ上のサイズでは踵が緩くなるので、難しいところである。

この靴もダニエル・クレイグが「慰めの報酬」の中で使用しているという。
最近の007は、作品毎に英国の靴メーカーを順番に採用しているようで、「慰めの報酬」ではチャーチが担当したらしい。
ボンドも毎回靴を替えるとなると、小指が痛くなったりして、活動に支障が出るだろうに・・・

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俯瞰


D810 + AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G

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Mrs.COLKIDが子供の時に、家から道に飛び出してバイクに轢かれた。
その時、幽体離脱が起きたのか、事故現場を上から見下ろしていた記憶があるという。

大人たちが大騒ぎをしている。
周りの景色の詳細まで、はっきりと覚えているという。
轢いてしまった運転手が慌てて駆けつけて、謝っているのが見えた。
飛び出した自分の方が悪いのに・・・と思ったという。

まあ、よく聞く話である。
脳の中に、普段は機能しない部分があり、それが死に直面した際に初めて作用する。
その部分が動き出すと、少し高い位置から全体を俯瞰しているような感覚になる。
理由はわからないが、死にかけた時に初めてその機能が動き出すように、予めプログラムされているのだ。
そんな研究をテレビで見たことがある。

実はテレビのコマーシャルで、日産のアラウンドビューモニターを見ていて、それを思い出した(笑)
大体上から見るなんて、本当に幽体離脱でもしない限り不可能である。
そう思ったが、自動車の場合、いくつかのカメラの画像を合成し加工することで、あたかも真上から見ているような感覚を、擬似的に体験できるようになっている。
人間の場合は目をいくつも持っているわけでは無いが、視界の隅の方の情報も活用して、平面に変換することで、あたかも上から見ているような映像を作り上げているのかもしれない。
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缶コーヒー


D810 + AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G

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アルバイトのN君が、自動販売機で買った缶コーヒーを手に持ってやってきた。
「これ、何か変なんっすよ」
少し飲んで、味がおかしいことに気付いたという。

「ちょっと飲んでみてくださいよ」
・・と言われても、人の飲みかけの缶コーヒーなんてねえ・・・
別の社員が、恐る恐る口をつけてみた。
「・・何か酸っぱいような気がする」

缶に印刷された賞味期限と思われる数字を見ると、去年の春になっている。
「そのくらいなら大丈夫なんじゃないの?」
「でも本当に味が変ですよ」
「機械の中でずっと暖めていて変質したのかな」

もう夕刻であったが、とりあえず自動販売機の業者に電話して、報告だけしておいた。
翌日、担当者がすっ飛んできた。
事務所の入り口で、大きな声で「申し訳ありません」を連呼する。

まずは自動販売機の中に残っているコーヒーを、全部機械から出してチェックした。
すると、N君の飲んだ1本以外は、すべて賞味期限に問題ないことがわかった。
どうして1本だけ古いものが混ざったのか・・・

業者の人は平謝りで、何故こんなことが起きたのか、原因はわからないが、とにかく調査するという。
多分詰め替え作業の時に、古いものを機械から出して、誤って1個だけまた入れてしまった・・とか、そういう話であろう。
どんなに気をつけていても、ヒューマンエラーは起こり得る。

「その飲まれた方は大丈夫でしょうか?」
「ああ、彼なら頑丈な人だから、多分大丈夫ですよ」
「お会いしてお詫びしたいのですが・・・」

社員の話では、N君は今日は休んでいるという。
実は彼はお金持ちの家のぐうたら息子で、週に数日しか働きに来ないのだ。
家はすぐ裏だと言ったら、今からご挨拶に行きたいという。
仕方なく業者の人を連れて行った。

親御さんが出てきた。
「息子は・・今日はちょっと寝ています」
業者の人の顔色が変わった。
「お体の方は大丈夫でしょうか?」
N君は働かない日は昼まで寝ているのだ。
「息子なら大丈夫です。まったく問題ありませんから・・」
寝ているのを起こす方が大変らしく、親御さんは早く帰って欲しい、という表情だ。

会社に戻る間も、業者の人は謝りっぱなしである。
こちらはあまり気にしていないのだが、あちらがそうはいかない・・という感じである。
確かに、担当者にしてみれば、首がかかっている。
それほど重大なミスであろう。

まあ、相手がウチで運がよかったともいえる。
翌日、再度会社に来た業者の人は、一般には販売していない特殊な缶コーヒーの箱を、N君にと持ってきた。
さっきN君が両手にそれを持って、皆に配って回るのが見えた。
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冷たい雨


D810 + AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G

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体調が優れなかったが、用事があって外出した。
朝は青空も見えたのだが、程なく厚い雲に覆われ、途中から雨が降ってきた。
冷たい雨で、けっこう本格的に降った。

この暗さでは、写真の方は期待できそうにない。
35mmを付けて、三脚は持たず、軽装で出た。
スナップオンリーである。

雨の中の散歩は意外に楽しかった。
早稲田で用事を済ませ、地下鉄で大手町に出て、そこから銀座まで歩いた。
床屋に電話をしたら、混んでいるようで、少し時間がかかるという。
そこで靴屋などを覘いて時間を潰した。

疲れが出て、床屋では居眠りしてしまった。
終わる頃には、雨は止んでいたが、急に冷え込んで寒くなっていた。
来週から、また忙しくなりそうだ。
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忙しい日


D810 + Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZF.2

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昨日は異様に忙しい一日であった。
来客に次ぐ来客、電話に次ぐ電話・・・
来客中に電話が来て、それに出ているうちに、もうひとり別の客がきたりした。
今来客中なので・・と簡単に挨拶して、応接間に戻ろうとしたら、次の電話・・・
応接間で待たせているお客に、目でお詫びをしながら電話に出る。
「随分忙しいんですね・・」と驚いていた(笑)

こういう日もあるのか・・というほど、忙しかった。
夕方になって、ほっと一息つくと、急に疲れが出てきた。
しばらくボーッと座っていた。
朝は車が凍り付いていたというのに、寒いのか、熱いのか、わからない一日であった。
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凍結


D810 + Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZF.2

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今朝は車が凍り付いていた。
昨晩は予報が外れ、恐れていた雪は降らず、代わりに冷たい雨が降り続いた。
そのまま氷点下の朝を迎えたため、ボディに付着した水滴が凍ってしまった。

ボンネットもウインドウも屋根の上も、すべてガチガチ。
水滴形の丸い氷が、全面を覆いつくしている。
白くなった車の塊が、氷河の中のマンモスのように見える。

ドアノブに触れると、キーがオートで開錠された。
しかし、押しても引いても、ドアはびくともしない。
力を入れるとミシミシいうが、一向に開く気配は無い。
これ以上強引にやると、ゴムパーツなどが破壊されてしまうだろう。

4枚のドアをひとつひとつ回ってみると、後ろのドアが1枚だけ開いた。
最初はボディにへばりついていたが、力を入れたらバキッという折れるような音を立てて開いた。
一瞬、壊したかと焦るような大きな音だった。
そこから車内に入り込んだ。

前の席に移動して、運転席のドアを押してみる。
動かないので、ドンと思い切り身体をぶつけてみた。
そうしたら、バスッといって開いた。

エアコンをつけて室内を暖めた。
窓ガラスにも温風を吹き付ける。
表面に飛び石の傷などある場合、急激に暖めると窓が割れることがある。
心配ではあるが、自然に溶けるのを待っていたら遅刻してしまう。

外に出て、プラスチック製のヘラで、フロントウインドウの氷を引っ掻いた。
ガリガリと表面をこすっても、最初のうちはまったく落ちる様子はなかった。
しかし室内が少し暖まると、氷が浮くのか、急激に落ちるようになる。
ドアウインドウを覆った氷も落とし、何とか視界が開けてきた。

結局、車が走り出すまでに20分ほどを要した。
この凍り方では道路も危ないなと思い、ゆっくりと慎重に走らせた。
ところどころ、凍結した路面が光っているのが見えた。
幸いBSのスタッドレスは性能がよく、特に滑ることも無く、無事会社に到着することが出来た。
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インスタント


D810 + Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZF.2

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コーヒー好きというわけではない。
もともとコーヒーの味自体が、それほど好きではないのだろう。
通が好みそうな、酸味が強いコーヒーほど苦手だ。

味のわからないものに、とやかく言う権利は無いのだが、缶コーヒーはかなり苦手だ。
人からもらっても、飲む気にならず、そのまま何年も経ってしまった缶が、まだ部屋に置いてあるほどだ。
あの口の中に残る感じが、何とも好きになれない。

会社では、ドトールのドリップコーヒーを飲んでいる。
コーヒーの粉が、不織布の袋に入っていて、パカッと開けてお湯を注ぐあれだ。
特別こだわりはないのだが、ドトールのオリジナルブレンドは、意外に飽きなくて長く飲んでいる。
好きではないと言いながら、お客さんが来るたびに入れるので、一日にけっこうな杯数を飲む。

家ではほとんど飲まない。
日曜日の朝食などで、牛乳や豆乳に、ネスプレッソを1個加えて飲むことはある。
これはかなり美味しいのだが、要するにコーヒー牛乳である。
コーヒーと同列に語るべきではないだろう。

先日ドリップコーヒーを切らしてしまい、仕方なくスティック状のインスタントコーヒーを飲んだ。
フリーズドライになった粒が粗めのものだ。
スプーン一杯の水でこねる様に溶いて、ペースト状にしてから、お湯を加えると美味しく入れられる・・と教わった。
テレビでやっていたらしい。
それで飲んでみたら、本当にけっこういける。

それが好きになってしまい、切らしていたドリップコーヒーが届いてからも、しばらくインスタントコーヒーばかり飲んでいた。
まあ、コーヒーには違いないが、これもまた別の飲み物と言うべきかもしれない。
そのスティックを、ついに全部飲んでしまったので、美味しいインスタントコーヒーはないかと、今探しているところである。
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ブログ


D810 + Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZF.2

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それにしても、ブログの寿命って思っていたよりも長いな・・と思う。
ブログという仕組みそのものの寿命である。
こういう世界だから、もっと短いサイクルで、次の新しい何かに変わるだろう・・と予想していたのだ。

ブログは、ウエブログを略した呼び方で、インターネットを通じた情報発信の方法のひとつである。
文字と写真をアップロードして積み上げていくだけという、非常にシンプルな機能。
それだけに汎用性が高いともいえ、様々な活用方法が思いつく。
情報がどんどん流れていくFacebookやTwitterと違い、じっくりと読むのに適しているのも、ブログが生き残った理由だろう。

ここは2005年3月5日にスタートしているので、もうかれこれ10年続いていることになる。
それまでいちいちHTMLで書いて更新していた日記を、当時流行していたブログに移行したのだ。
毎日日記を書くには、明らかにブログの方が向いていたし、簡単に更新できることで、工数も確実に減った。

ここを始めた時点で、ブログという形式は、既に世の中にある程度広まっていた。
僕は保守的な性格なので、こういうものにすぐには飛びつかないのだ。
要するに面倒臭いから、簡単には新しいことを始めないのだが、それはしつこくブログを続けている理由でもある。

2007年11月17日以降は、毎日欠かさずブログを更新するという、連続投稿記録が続いている。
やめるにやめられずに、今に至っている・・と言った方がいい(笑)
連続記録が途絶える前に、先にブログという仕組み自体が、役目を終えて世の中から消えていくかもしれない(笑)

長く書き続けること、それ自体がパワーであるのは確かだ。
すべてが残ってくれるのも、ブログのいいところである。
過去の記事を読んでみると、この数年の激動の時代の貴重な記録でもあることがわかる。
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更新


D810 + Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZF.2

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自分のブログを毎日更新していると言ったら、デザイナーから驚かれた。
本当にビックリしている様子であった。
まあ、ずいぶん暇なんですね・・という意味かもしれないが(笑)



ドウカルスの55047M・スタッグ・ネロ(多分、黒い鹿革の意)。
サイズは40。

イタリア製のジップアップ・ブーツである。
「ドゥーカルス」とか「デュカルス」とか表記される場合もある。
定価は意外に高いのだが、お店でかなり安く売られていた。
それで買ってみたのだが、家に帰って調べてみたら、どうもこのブランドの靴はあちこちで安く売っているようだ(笑)
定価自体が、最初から高めに設定されているのかもしれない。

1973年創業のイタリア・マルケ州の靴メーカーだそうで、ネットでも様々なモデルが売られている。
ところが、ことこのモデルに関しては情報が少ない。
店頭で気に入って買ってはみたものの、検索しても日本国内でこのモデルについて詳しく載せているサイトがみつからない。
唯一ロシア語のサイトが引っかかるので、あちらでも売られているようだ。
寒冷地でも通用する暖かさ・・ということだろうか(笑)

表面の革は、どうやら鹿革らしい。
よくあるカーフの型押しではない。
最初に見た時に、このシボの入ったしなやかな革が目に留まった。
その質感が大いに気に入ってしまったのだ。

この靴は、いわゆるセメント製法で作られている。
いつものグッドイヤー・ウェルト製法ではなく、ソールは単純に強力な接着剤で固定されているだけである。
要するに大量生産される普通の靴と同じである。
そのため驚くほど軽く出来ている。

この製法は、一般にもっとも安価な靴に使われる。
そのため、アッパーの素材も安いものと組み合わされる場合が多い。
それをあえて高級な素材で作り上げるのが、この会社の特徴だという。
そのアンバランスさがユニークである。
ソールとのつなぎ目にジッパー状の飾りをつけているのも、ちょっとお洒落でイタリアらしい。

通常この製法はソール交換が出来ず、使い捨てになってしまう。
(ただしこの靴に関しては、ミシンで縫い付ける形で交換は可能と言われた)
使ってみると、セメント製法ならではの軽快さというものも確かにある。
それを生かして他にない製品を作ろうという意図で、あえて採用しているのだろう。



内部は、ご覧のように全面にファーが貼られている。
何かと問題になっているリアルファーのようだ。
暖かいわけである。
アッパーもライニングも特別な素材で、非常に贅沢な作りになっている。

店頭で試着させてもらい、サイズは40を選んだ。
日本サイズでは25くらいだろうか。
厚めの靴下を履いていたが、足を入れるとピタリとはまり込む。
素材が柔らかいため、吸い付くような履き心地である。
もっともこの暖かさでは、靴下は薄いもので十分かもしれない。

グッドイヤー・ウェルト製法の靴とは、まるで違うもの・・と言っていいだろう。
室内履きのように軽くて、靴を履いているという重みがほとんど感じられない。
こう軽いと、かえって足を上げるのに労力がいる。
しばらく重量級の靴ばかり履いていたので、少々面食らった。

本格的な作りの重厚な紳士靴ではなく、ファッション性を重視したお洒落な靴である。
僕の足の形がよくないので、履くと少し膨らんで形が崩れるが、横から見るとスマートで抜群にカッコいい。
アッパーの素材がいいので、高級なブランドバッグのような存在感がある。
それでいて履き心地は快適で驚くほど軽い。
たまには、こういう靴も面白い。

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うんざり


D810 + Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZF.2

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首を切る映像には、もううんざりである。
しかし考えてみれば、わが国にもこういう処刑法に関しては長い歴史がある。
切腹は人の見守る中で行われたし、処刑を見世物にする場合もあった。
切腹のために自宅の庭を貸すのも普通のことだった。
昔の人にとっては、見慣れた光景だったのではないか。

現代の子供たちも、ネットでそういう映像を見ている。
どんな神経の大人になるのか、と心配になる。
自分たちの育った頃は、ここまで酷い環境ではなかった。
しかし、もっと昔の子供たちは、案外平気で見ていたのかもしれない。

Mrs.COLKIDの実家の方では、明治の終わりくらいまで、死刑囚の首を晒しものにしていたという場所がある。
そこは今は建売住宅になっており、住民にはその事を内緒にしている(笑)
残酷な処刑は、恐らく戦争中も行われただろう。
そう考えると、案外今が特別なのだろうか・・・
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お休みの日


D810 + Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZF.2

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今日は一日お休み。
特に疲れていた訳ではないのだが、外に出ようという意欲が湧かなかった。
最近は三脚も軽いものを買ったし、全般にエネルギーが減退気味か・・・
高画質な小型カメラが欲しいな・・なんて思うこともある。

昨日のグリーンに染め替えたデクスターだが、日中に自然光で撮影してみた。
といっても直射ではなく、日陰での撮影である。
ある瞬間グリーンが強くなったりする。
靴紐はオリジナルのブラウンのままだが、これが一番合うみたい・・・



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グリーン


D810 + Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZF.2

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プロにお願いしていた靴の染め替えが仕上がってきた。
今回は、銀座のオーダーメイドの専門店SARTOの中にある、ボールワークスに染め替えをお願いした。
ベースの靴は、古靴のデクスターの外羽根式プレーントゥ。
オリジナルは彩度が高めのブラウンで、既に2、3回履いている。
これをグリーンに染め替えていただいた。

素人がお店で売られている道具で靴のリカラーを行うと、どうしても顔料系の塗料を使うことになる。
以前ここでレポートしたが、ペンキを塗ったような、表面に塗膜を作る塗り方である。
出来れば顔料ではなく染料で塗装し、磨きなどの手入れの出来る仕上がりにしたい。
革用の染料も売られてはいるのだが、うまく定着させることが出来るかわからない。
まずは専門家にお願いして、染め替え作業がどういう仕上がりになるか見てみることにした。

ボールワークスの納期は短く、何とお願いしてから一週間で出来上がってしまった。
同店が「リファクト」と呼ぶ、独自の技術に基づく染め替え作業だ。
仕上がりの色を想定し、染料を調合希釈した脱色用溶剤を作る。
それで脱色を行いながら、同時に染色をしていくという、非常に手の込んだ方法である。


↑グリーンに染め替え後


↑オリジナルの状態

こちらの望む色がどのくらいの濃さであるか、伝えるのはなかなか難しい。
明るいグリーンではなく、かといって黒に近いほど暗いグリーンでもなく、一目でグリーンとわかる程度の濃い目のグリーンにして欲しいと頼んだ。
まあ、正直な話、こちらも具体的にこれというイメージが出来ているわけではなかった。
たまたま店内にブルティッシュグリーンの装丁の書物があり、その色に似せて欲しいとお願いした。

出来上がったものを、「これでどうでしょうか」と見せられたが、一発でOKとなった。
少し暗めではあったが、スタンドの光を当てると、グリーンが強く浮かび上がる。
このくらい落ち着いたグリーンなら、組み合わせる服の自由度も上がり、使いやすそうだ。

今回のデクスターに使われている革は、染料との相性がいまひとつだったそうで、もし色が落ちてもとのブラウンが出てくるようなら、修理するから持ってきて欲しいと言われた。
このまま市販の普通の靴と同じように手入れして、何ら問題ないという。
早速帰りに東急ハンズに寄って、サフィール角ビンのダークグリーンを買って帰った。

磨きを始めると、さすがに加工後時間が経っていないためか、クリームを塗る指に、緑色の染料がついてくる。
革と染料の相性が悪いというのは、定着に時間がかかるということかもしれない。
新しいブラシをグリーン専用におろしたが、たちまち毛が緑色に染まった。
多少手間がかかったが、全体に乳化性クリームを与え、先端部は透明のワックスで光らせた。

なかなかいい感じである。
あまり市場では見かけない上品な色で、もとの彩度の高いブラウンよりずっとよくなった。
革の質感もしっかり残っていて、さすがに専門家だけある納得のいく仕上がりである。
これは靴の趣味としては、新しい段階かもしれない。
早くも、もうひとつお願いしようかと考え始めている(笑)

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