精度


D810 + AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G

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最近はクォーツ時計を身につけるようになった。
以前はクォーツは好きではなくて、ほとんど腕につける事はなかった。
確かに機械式時計と比べると、少々趣味性には欠ける。
しかし実用品と割り切れば、これはこれで面白い。

電池が切れるまでは、放っておいても止まることはないし、それほど扱いに神経質になる必要もない。
重量も軽いので、つけていて負担が少ない。
気軽につけられるのは、クォーツ時計の長所のひとつといえる。

ところで、最近愛用しているグランドセイコーのクォーツは、普通のクォーツ時計とは少し違う。
グランドセイコーと名がつく以上、中身は平凡なクォーツではない。
選別された特別なクォーツが使われているのだ。
そのため時間の狂いは非常に少ない。

通常のクォーツ時計は、月差が最高で±20秒程度の表示になっている。
ところがグランドセイコーのクォーツは、「年差」で±10秒と謳われており、精度が特別に高いことを誇りとしている。
とはいえ、僕のグランドセイコーは中古で購入した古いもので、当初の性能が出ているようには思えない。

ここしばらく、手持ちのグランドセイコー・クォーツの精度を毎日確かめてきた。
ちょうど電池を交換したので、その日から毎日のように狂いをチェックした。
同じ日に普通のクォーツ時計であるトレーサーのタイプ6の電池も交換したので、比較するためにそちらも調べた。

その結果、僕のグランドセイコー・クォーツは、1ヶ月に1秒から2秒狂うことがわかった。
年差10秒というわけにはいかないが、何とか20秒以内にはとどまりそうだ。
年代を考えると、まあまあの数値である。

一方トレーサーのほうは、1ヶ月に8秒ほど狂う。
普通のクォーツは20秒程度の誤差を謳っているので、これも基準値内である。
1ヶ月経つとけっこう狂っているので驚くが、まあこんなところだろう。

グランドセイコーの時刻精度を調べていて気付くのは、日によって多少狂いが前後することだ。
クォーツは温度による精度の変動があり、それが欠点のひとつとされている。
高精度を謳う年差クォーツ時計には、温度センサーが入っていて、その誤差を補正する構造になっている場合が多い。
手持ちのグランドセイコーの精度の変動には、経年変化ばかりでなく、温度の変化も関係しているかもしれない。

クォーツ時計は、微妙な立場にあるといえる。
単に時間の正確さを競うなら、いまや電波時計や衛星時計のように補正機能を持つ時計がある。
同じクォーツ時計をベースにしているとはいえ、正確な時刻を表示する、という事にかけては、それらの時計に敵わない。
一方時計を宝飾品として見た場合、機械式以外の時計には、ほとんど価値は認められていない。

皮肉なことにその中途半端な立場ゆえ、かえって道が開けてきたように見える。
市場が成熟してきたのだろう。
ユーザーからの要求は変わり、クォーツ時計に性能ばかりを求められることは無くなった。
遊びの要素が加わり、身近で自由なファッションアイテムとなってきた。

もちろんグランドセイコー自体は、大真面目に性能と品質を追求して作られた一級品の時計である。
しかしあえてそれを気楽に日常に取り入れるのも、なかなか面白いやり方だと思う。
案外、現代におけるこの手の時計の、正しい使い方のひとつではないかと感じている。
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