酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

等身大の和みと癒やし~「南極料理人」の温かい世界

2009-11-19 00:48:13 | 映画、ドラマ
 日刊スポーツ1面に<仲間由紀恵熱愛>の見出しが躍っていた。30歳にして初ゴシップらしい。俺が仲間を〝発見〟したのは、「トリック1」の再放送を偶然見た7年前のこと。嬉々として会社で話したら、「何を今更」と笑われた。

 俺にとって仲間は南沙織以来の女性アイドルだったが、潤いと憂いを求められる年頃になった。シリアスな作品は当たらないとの声も強く、思い切ったイメチェンが必要かもしれない。

 先日、「南極料理人」(09年/沖田修一監督)を見た。きっかけはYahoo!の映画館検索である。部屋から徒歩圏の新宿周辺、仕事場近くの銀座周辺をチェックして観賞スケジュールを組んでいるが、ユーザー採点が4・33と高い「南極料理人」がずっと気になっていた。ちなみに評価という点で本作は、話題の「沈まぬ太陽」(3・88)、「ゼロの焦点」(3・33)を優に超えている。

 海上保安庁員の西村(堺雅人)はシェフとして南極大陸ふじ観測拠点行きを命じられる。刺激に乏しい環境で食事の持つ意味は、貧困者のエンゲル係数並みに高い。多少の軋轢が生じても、西村の柔らかい表情と工夫を凝らした料理が優しい糸になり、隊員たちの心を縫い合わせていく。堺の包丁さばきも堂に入っており、食いしん坊には楽しい映画だ。

 南極行きを報告するや妻は喜び、放屁して娘に尻を蹴られる。家庭人西村は十分情けないが、他の7人も似たり寄ったりだ。威厳の欠片もないきたろう演じる隊長、仮病で作業をさぼる者、こっそりシャワーを浴びて命綱の水を大量に使う者、国際電話で恋人に振られ失意に落ちる者……。

 南極派遣といっても決して精鋭揃いではない。どこにでもいそうな隊員たちに、「会社の上司とそっくりだ、いや、自分もあんなもんかな」なんて親近感を抱く人が多いだろう。本作を見て、自分の〝チーム好き〟を再認識した。もっとも俺が好きなチームは<鉄の規律が支配する軍団>ではなく、本作のように欠点を抱えた個人が緩やかに気持ちを寄せていく<柔らかな結晶体>だ。

 堺は冒頭に記した仲間と「武士の家計簿」(来秋公開)で共演する。仲間といえば生瀬勝久で、本作では気難しいが少しずつ周りと打ち解けていく本さんを好演していた。求心力としての役目を果たしていたのが豊原功輔演じるドクターで、「ずっとここにいたいぐらいだ」という台詞が心に響いた。東京で暮らすとはいえ、俺の心は永久の越冬隊員だから……。

 酷寒の地を舞台にした「南極料理人」に、初夏の雨のような温もりと湿り気を感じた。和みと癒やしが染み通るだけでなく、30年前のほろ苦さが甦ってくる。隊員たちは隔離生活で第二の青春を謳歌していた。


コメント
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