酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

どっこい生きてる~ジェスロ・タルの存在感

2005-04-14 06:59:02 | 音楽

 昨日(13日)、ジェスロ・タルの再発盤が発売された。5月の来日公演に合わせたものだろう。当日午後、タワーレコードで在庫切れになった作品もある。待望していたファンも多かったようだ。迷った揚げ句、「天井桟敷の吟遊詩人」と「神秘の森」を購入する。ともにアコースティックでトラッド色が濃く、聴き込めば味が出そうな作品だった。

 リーダーのイアン・アンダーソンはデヴィッド・ボウイと同じ1947年生まれで、同時期に世に出た。ボウイは当初「自閉的な少年」というキャラだったが、イアンは20代の頃から、笠智衆並みに年齢不詳だった。大道芸人、放浪者、ホームレス、屋根裏部屋の住人というイメージに、実年齢がようやく追いついた感じがする。

 ジャズ、トラッド、フォーク、ブルース、クラシックと、音楽的な幅の広さはトラフィックと匹敵するジェスロ・タルだが、日本じゃマイナーのままである。俺だって同時進行で聴いたわけではない。70年代後半、数年のタイムラグを経て、こんなすごいバンドが「いたんだ」という思いで傑作群に接した。俺の中ではとっくに「ロックの殿堂」入りを済ませていたのである。

 以前から手元にあった5枚のCDの感想を。

 デビュー作「日曜日の印象」は生硬な感じで聴くことは少ないが、セカンドの「スタンド・アップ」は好きな作品だ。「ア・ニュー・デイ・イエスタデイ」「ウィ・ユースト・トゥ・ノウ」など陰翳のある名曲が並ぶ中、バッハの「ブーレ」が出色と言うとミーハーかな? 初めて聴いた時、格調高い演奏に驚いたものである。

 「アクアラング」は切迫感を覚えるアルバムだ。タイトルチューンの1曲目からラストまで、起伏に富み、表情豊かな作品である。追加公演では全曲演奏するらしい。いい席が残っているようだし、皐月賞が的中すればチケットを購入するつもりでいる。

 「ジェラルドの汚れなき世界」と「パッション・プレイ」は評論家から難解という評価を受けたものの、全米チャート1位を獲得したコンセプトアルバム。ともに創造力と想像力の極致というべき作品である。気付くのは遅過ぎたが、ジェスロ・タルは前衛でありつつ、大衆性を獲得した稀有なバンドだったのだ。実験性に富んだ質の高いヒットアルバムを量産した点では、ビートルズに次ぐ存在といえる。とりわけ「ジェラルド――」は、世紀を越えても幅広い音楽ファンの鑑賞に堪える作品だと思う。

 “Too old to rock`n`roll, too young to die”。これは76年に発表されたアルバムのタイトルで、邦訳すると、「ロックをやるにはじじいだが、死ぬにはちょっと若過ぎる」ってとこ。皮肉が利いているが、30年後もピンピンして演奏活動を続けているなんて、イアン・アンダーソンにとって「想定の範囲」だったのだろうか。
コメント
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