<3244> 大和の花 (1138) エンジュ (槐) マメ科 クララ属
中国北部地方原産の落葉高木で、古くに渡来し、庭園や街路に植えられて来た。高さは10メートルから15メートル、大きいもので25メートルに及ぶものもあるという。樹皮は暗灰色で、縦に細かく裂ける特徴がある。葉は奇数羽状複葉で、互生し、小葉はごく短い葉柄を有し、長さが3センチから5センチほどの卵形で、先が尖り、4対から7対つく。枝はよく出て繁る。
花期は7月から8月ごろで、枝先に花序を出し、淡黄白色の蝶形花を多数つける。花は長さが1、2センチで、よくハチ類が訪れ、初夏のころ花を咲かせる仲間のハリエンジュ(ニセアカシア)と同じく蜜源植物として知られる。実は豆果で、莢(さや)の間がくびれ、普通長さが数センチの数珠状になる。
エンジュ(槐)の名は、槐子(えにす・槐の種子)の呉音読みの転じたものと言われる。学名にjaponicaとあるのは日本発によるもので、江戸時代には渡来していたことの証であろう。伝説ではもっと古く、神功皇后がこの木の枝にとりすがって応神天皇を生んだと言われ、その場所とされる福岡県の宇美八幡宮は応神天皇と神功皇后を主祭神の神社で、安産のご利益があるとされ、エンジュが縁の神社として知られる。このためエンジュはコヤスノキの別名でも呼ばれるようになったという。
中国では古く宮廷の庭に3本のエンジュを植えて、高職の三公(大臣)がこのエンジュに対して座ったと言われ、大臣のことを槐位(かいい)あるいは槐座(かいざ)と呼ぶようになったという。なお、実質でも利用価値が高く、若葉は茶の代用、花のつぼみは漢方で槐花(かいか)と呼ばれ、止血、消炎、高血圧症など、花や樹皮は染料に、材は堅く、光沢があって美しいので、床柱や机、鏡台などに用いられて来た。
地味な木であるが、いろいろに伝えられ、古来より尊ばれて来た木である。 写真は公園樹として植えられたエンジュ。花期の姿(左)、花序(中)、果序(右)のアップ。 冬陽差す 暖かければ猫眠る