大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年12月13日 | 写詩・写歌・写俳

<3257>  余聞 余話 「花と実」

      それぞれにそれぞれの花それぞれにそれぞれの実の草木の姿

 花は結実への夢であり、結実への働きを負う。花の魅力はその結実を叶える所以によってある。つまり、花は命を繋ぎ、種を保持し、発展させるという生に共通する大義名分を秘めてある。ゆえに共感される。花の多様性は、実の多様性で、草木の多様性を意味する。花の充実は実の充実に繋がり、それは、即ち、草木の充実にほかならない。

                      

 冬は実の時期で、霜枯れた草地を覗いてみると、結構いろんな実が見られる。その実は花の成果で、霜枯れる前の旺盛な草木のあるは春、または夏に見られた花の働きの結果である。その草木の姿は四季を彩り、私たちの感性にも関わりを持ちながら存在している。これは、つまり、生の共存の一つの姿であり、自然が則るところの風情ということになる。

   写真は散策の道端で見かけた草木の実。左からニラ、ハゼノキ、クズ、ワルナスビ、ジシバリ(冠毛の下側に痩果がついている)


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年12月13日 | 創作

<3256>  写俳百句  (25)  初冬の塔

             塔の意味冬には冬の景に立つ

                     

 斑鳩三塔の一つ法起寺の三重塔は広々と開けた田園の一隅に位置するので、ほかの二塔(法隆寺五重塔、法輪寺三重塔)に比べ、田舎の風情が残され、四季の移ろいに影響され、眺める側もそこに触発され、より四季の趣が感じられるということがある。

 初秋から晩秋にかけて長らく田園を華やかに彩り、塔との眺めを楽しませてくれたコスモスが花を終え、枯れて乱れ、稲田も収穫を終え、稲株ばかりになっている。そんな今。しかし、こうした初冬の風景に小春の日差しは明るく、ときに群鳥なども見られ、収穫を終えた安堵感に、塔の眺めも何か安らかな感がある。

 塔自身は何も変わらず、天を指して立っているのであるが、このように、四季によって移り行く周りの風景に馴染み、自らもその風景に調和して立ち、訪れるものを迎える。近年降雪が少なく、雪の風景を見ることが稀になった塔の一帯であるが、積雪ではまたイメージを異にする塔の存在があり、思われたりする。 写真は初冬の佇まいを見せる法起寺の国宝三重塔。