<1346> 自作短歌 回顧 (1)
移りゆく 時の流れに 棹差して 折々得たる 感の我が歌
( 写真は朝日 )
目に映る広き草原 あこがれの意にそふならば歩みゆくべし
晩鐘は今日の一日(ひとひ)の無事に鳴る 無事より明日は開かれゆける
この世とは過ぎてゆかねばならぬ身がありあるところ 今夏のひかり
黙しゐるごとくにありて冬人家 枇杷の花など傍らに見え
得しものは成果 こころに至りしを汲まんとするに 白梅の花
灯火の一つ一つの穂明かりにほのぼの宿る晩夏の薫(かほり)
人生は未完にありてゆける旅 抒情の歌などともなひながら
北を指すその北よりもなほ北のある切なさを旅と言ふなり
木犀の花散り終へぬ 便りには予後の穏やかなる日々が見ゆ
曼陀羅の挿話に通ふぬひぐるみ 並べて遊びゐる子らの声
曲折の道の半ばといふほどの曲折 そして壮年の歌
ここに来てなほ何処へか 胸奥に欲するそれや 一掬の水
捕らへ得ず転がるボール何処へか こころ焦りて追ふ夢の中
昼夢より覚めて追ひたるボールなく 遠く少年野球のかけ声
万有の万の中なる一個体、個を言はば 孤の一個性 我
楽天の天に転ずる悲の痛み 転じ終はらば 恵まれて来よ
野を過る群馬一群の毛並み良し 諾ふこころ高なればよし
修羅の身の心における昨日今日 なほ理不尽の撃てざる弱さ
悲は鬱へ 鬱はうつうつと虚しさへ 庭のそこここ崩るる牡丹
至り得ぬ心の旅の旅枕 来し方いづこ葉桜の下
時は往く 非情 無情 刻々と零されてゆくあまたの思ひ
遙かなる彼岸へ架ける橋ひとつ 見えて見えざる眺望の中
疎かに対応出来ぬものとあり あり且つ思ふ うつうつうつつ
越ゆるべき一つの意識越えてなほ行きゆく思ひの中の白梅
美と醜と諸刃において言ひおかむおのれ美としてあらねばならぬ
回廊は神の御座に続くなり若葉の影に沿ひ添はれつつ
波間より帰り来たりし千鳥かな 冬の命の今日の夕暮
白鳥の羽音高なるその姿 熱き思ひは行かしめてこそ
群像の胸板厚しそれぞれに自負の姿を持って立ちゐる
歩の一歩一歩一歩のその一歩その一歩なる明日への歩み
~ 続 く ~