shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Choral Beatles

2008-11-15 | Beatles Tribute
 私は思わず身体が揺れるようなノリの良いロックンロールやフォービート・ジャズが大好きな人間である。特に車の運転中に音楽を聴くことが多いので、音楽もドライビングのリズムに合ったハイスピード・サウンドが中心になってくる。前の車を一気に抜き去ろうという時にスロー・バラッドでは話にならない。ビートルズなら「レット・イット・ビー」より「ヘルプ!」を、ストーンズなら「悲しみのアンジー」より「黒くぬれ!」を、ということだ。しかしそんな単純バカの私でさえも思わず聴き入ってしまうほど強い説得力を持ったバラッド盤が存在する。この「コーラル・ビートルズ」がそんな、悪魔を改心させるような(笑)1枚なのだ。Choral とは「聖歌隊などの合唱による」という意味で、本来ならば私に最も縁遠い音楽のはずだが、例によって YouTube で面白いビートルズ音源を探していて偶然この「コーラル・ビートルズ」を見つけてしまった。まず鐘の音と共に始まる①「アクロス・ザ・ユニバース」のあまりの美しさに言葉を失う。アルバム「レット・イット・ビー」ではフィル・スペクターがごてごてと飾り立てて折角の名曲が台無しだったが、ここでは原曲の持つシンプルな美しさを見事なまでに引き出している。天国のジョンもさぞかし喜んでいることだろう。歌っているのは「ケネディ・クワイア」というアルゼンチンの女性合唱隊で、延べ500名が在籍、その中から選りすぐりのメンバーで製作された「究極の癒し系ビートルズ・カヴァー集」が本作というわけだ。リード・ヴォーカルの美しい響きとまるで天上の音楽のように優しく包み込んでくれるバック・コーラスのアレンジメントが絶妙で、寝る前に聴くと心地よい眠りが約束されること間違いなし。イントロに「風に吹かれて」のメロディーを上手く引用した③「オール・マイ・ラヴィング」や、文字通り「天使にラブソングを」という感じで思わずこっちも立ち上がって手拍子したくなるような④「ア・ハード・デイズ・ナイト」、スイングル・シンガーズも顔負けのコーラス・ワークが圧巻の⑪「ペニー・レイン」など、全曲素晴らしい!!!!! 尚、タイトルを「ヘヴンリー・ビートルズ」に、ジャケットも4人の天使の後ろ姿というベタなモノに造り替えた日本盤も出ているのでご一聴をオススメしたい。ジャンルを超えて、理屈抜きで音楽って素晴らしいなぁ... と実感させてくれる極めつけの1枚だ。

Choral Beatles



Born to Run / Bruce Springsteen

2008-11-14 | Rock & Pops (70's)
 このブログのタイトルになっている「明日なき暴走」はもちろんブルース・スプリングスティーンのアルバム名から取ったもので、原題は「Born To Run」。私が大学時代よく聴いていたFM大阪の朝の番組でアメリカ人のDJがいつもエンディング・テーマとしてかけていたのがタイトル曲の「明日なき暴走」で、その疾走するようなスピード感がたまらなく好きだった。いつもそれを聴いてから一日が始まるという感じで、完全に生活の一部になっていた。「一緒に悲しみを抱きながら生きていこう」「いつになるかは分からないけど、俺たちは本当に行きたい場所へ辿り着けるさ」「俺たちは突っ走るために生まれてきたんだ!」という歌詞の内容に大いに共感を覚えたし、随分勇気をもらった気がする。彼が尊敬するフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドをロックで再現したような分厚いサウンドもめちゃくちゃカッコ良かったし、特にクラレンス・クレモンズ怒涛のサックス・ソロの凄まじいまでのエネルギーの奔流には圧倒された。かれこれ30年以上音楽を聴いてきたが、これ以上カッコ良いロック曲を私は知らない。コンサートの映像で、この曲が始まるや否や巨大なスタジアムを埋め尽くした大観衆の地鳴りのような歓声が響き渡り、会場全体が大きなうねりになって揺れるように見えたのを今でもよく覚えている。まさにストリートに生きる若者達のアンセムといっていい、アメリカン・ロックの記念碑的な曲である。それと、アルバム冒頭を飾る「涙のサンダー・ロード」もタイトル曲に負けず劣らず素晴らしい。ピアノとハーモニカだけで静かに始まるオープニングから、歌詞の描く風景もサウンドの雰囲気も目まぐるしく変化し、気がつけば怒涛のエンディングを迎える。サンダー・ロード(雷の道)とは幸せの国に至る道、そこへ行くにはこのオンボロ自動車に君が俺と一緒に乗ってくれればいい、俺たちはもう若くはないが走ればまだ間に合う、苦い思い出で一杯のこんな町は捨てて二人でどこか新天地へ行き、人生の勝利者になろう、という実にドラマチックな歌である。一体どうすればこんなカッコ良い歌詞が書けるんだろう?何度聴いても震えがくる。ジャズ界にロリンズの「サキソフォン・コロッサッス」があるように、ロック界にはスプリングスティーンの「明日なき暴走」がある。このアルバムに出会えたことを音楽の神様に感謝したい。

bruce springsteen - born to run

Paperback Believer ???

2008-11-13 | Beatles Tribute
 「マッシュ・アップ」という言葉をご存知だろうか?CDジャーナルによると「かねてからDJの間で使われているリミックスのスタイルで、1つの曲からメロディーを、もう1つの曲からヴォーカルを取り出すなど、異なる複数の楽曲の中からメロディーやリフなどを選び合成して新たな1つの曲を作る手法」とのことで、原曲の一部を引用して「ネタ」や「素材」として使う「サンプリング」に対し、「マッシュ・アップ」は構成や細部に変化は加わるものの、余計な演奏や編曲を行わず、基本的に原曲そのものを使った手法で新たな楽曲を生み出すもの、ということらしい。
 私が初めてこの言葉を耳にしたのは2年前にビートルズの「ラヴ」が出た時で、名曲の数々が一旦解体された後、見事に再構築されて新たな曲に生まれ変わる姿に大興奮したものだった。特に「ア・ハード・デイズ・ナイト」の「ジャーン!」から「ジ・エンド」のドラム・ソロが始まり、「ゲット・バック」のイントロのギターへと続く流れや、「ドライヴ・マイ・カー」でありながら「タックスマン」のギター・ソロが被さって、いつの間にか「ホワッチャ・ドゥーイン」にすり替わり、「ザ・ワード」へと帰結していくあたり、さすがは5人目のビートルといわれたジョージ・マーティンだ。「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」のリンゴのドラムに「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」を乗せるなんてもう... その大胆かつ自由な発想に度肝を抜かれたものだった。
 それ以来「マッシュ・アップ」との接点はなかったのだが、最近 YouTube でメチャクチャ面白いモノを見つけた。題して「ペイパーバック・ビリーバー」...(゜д゜ )!!!!!! ビートルズの「ペイパーバック・ライター」とモンキーズの「アイム・ア・ビリーバー」のマッシュ・アップである。イギリスで プロデューサー/ミキサー/DJ として活躍するマーク・ヴィドラーという人の作品らしいが、これがもうコワイぐらいにピッタリ合ってて大笑いさせてもらった。文句なしに今年一番の笑撃作だ!

Long Version of Paperback Believer: Beatles vs. Monkees

僕のスウィング

2008-11-12 | Gypsy Swing
 「マヌーシュ」とはフランス北西部からベルギー国境付近のアルザス地方で暮らしているジプシーのことである。彼らは生まれつき手先が器用な民族で、その音楽は哀愁のメロディーを情熱的なギター・サウンドで表現する一種のストリート・ミュージックだった。1930年代に伝説のギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトがそんな土着のジプシー音楽にスウィング・ジャズのエッセンスを取り入れて完成させた音楽スタイルがマヌーシュ・スウィングというわけで、マカフェリやセルマー・タイプのギターを使っての、ザクザク刻むリズムをバックに哀愁のメロディーを奏でる超速弾きが大きな特徴だ。私にマヌーシュ・スウィングの扉を開いてくれたのが以前ご紹介したローゼンバーグ・トリオなら、私に「マヌーシュとは何か?」という根本的な問いに対する答えを示してくれたのがトニー・ガトリフ監督の「僕のスウィング」という映画であり、そこで主演したチャボロ・シュミットをフィーチャーしたこのサントラ盤なのである。ジャズであれ、ボサノヴァであれ、歌謡曲であれ、音楽とその土地の文化とは切っても切れない関係にあるが、「僕のスウィング」はジプシー・ミュージックの文化的バックグラウンドがとてもよく分かるように作られており、ヨーロッパにおけるジプシーの存在がどんなものなのかの一端を垣間見れる。「ロマ」と呼ばれる彼らは住んでる区域からして違う、定職もなく字も読めず、ギター片手にキャンピングカー暮らし... チャボロ演じるミラルドの生活ぶりこそが典型的なロマの生き方なのだ。そんなロマの少女スウィングとガジョ(非ジプシー)の少年マックスの心の交流と、そんな2人を隔てる目に見えない壁の存在、そしてユダヤ人・アラブ人・ロマ民族が音楽を通して一つになり平和を願う姿などが見事に描かれた素晴らしい映画だった。そのサントラであるこの盤の一番の聴き所は何と言ってもチャボロ一世一代の名曲名演、①「ミレ・プラル」にトドメを刺す。映画冒頭のタイトルロールのバックでいきなりこの曲が流れた時、あまりの強烈なインパクトにぶっ飛んでしまった(>_<) 心の奥底までビンビン響いてくるような熱いギターの音に圧倒されたのだ。大ジャム・セッション風の②「黒い瞳」の豪快なノリも凄いモノがあるし、⑭「平和の歌」のどこか中近東風のメロディーの合唱も耳に付いて離れない。マヌーシュ・スウィング・ブームの火付け役となったこの映画、CD/DVD共にマヌーシュ・コレクションには欠かすことのできない1枚だ。

Tchavolo Schmitt - Mire Pral



Bossa n' Stones

2008-11-11 | Cover Songs
 我々アナログLP世代のロック・ファンにとって、ストーンズの「スティッキー・フィンガーズ」といえば中身よりもまず「あぁ、アンディー・ウォーホールがデザインした、あのジッパーが付いてるジャケットのヤツね!」というぐらいユニークなジャケット・デザインで有名な盤なのだが、インパクトの強さで本家を遥かに凌ぐパロジャケ盤が登場した。それがここでご紹介する「ボッサ・ン・ストーンズ」である。この「ボッサン」シリーズ、他にも「ボッサ・ン・ローゼズ」(ガンズ・アンド・ローゼズのカヴァーで、皮のビキニに薔薇のタトゥー)や「ボッサ・ン・マーリィ」(ボブ・マーリィのカヴァーで、ジャマイカの国旗柄のビキニにラスタマンのタトゥー)、そして「友達紹介するわ」的なノリの続編「ボッサ・ン・ストーンズ2」があり、そのパロディー・センスが大いに笑えるのだが、これらはすべてアルゼンチンの Music Brokers という、エレクトロ・ボッサを中心に扱うレーベルが仕掛けた一種の企画盤なのだ。要するに大物アーティストの曲を超脱力系女性ヴォーカルでボサノヴァ風にカヴァーし、セクシーなジャケットに収めて一丁あがり(笑)、というわけである。普通こういった企画モノはナンジャラホイ盤が非常に多いのだが、このシリーズは違う。中身の方もジャケットに負けず劣らず素晴らしいのだ。あの毒気の強い「悪魔を憐れむ歌」が、「夜をぶっとばせ!」が、セクシーなウィスパー・ヴォイスによって見事に換骨堕胎され、癒し系エレクトロ・ボッサに生まれ変わっている。「素晴らしいカヴァーとは原曲を破壊することなく新しい生命を吹き込むこと」を信条とする私にとって、この盤はその基準を軽くクリアしており、Vol.2と共に愛聴盤になっている。特にVol.1の「アウト・オブ・タイム」やVol.2の「アイム・フリー」なんかはストーンズのオリジナルよりもこっちのヴァージョンの方が気に入っている。困ったものだ(笑) このシリーズはHMVやアメリカのアマゾンで試聴できるし、YouTubeにもライヴ映像(現地では凄い人気らしい...)がアップされてるので興味を持たれた方はどうぞ(^_^) 尚、未確認情報ながら、どうやら「ボッサンU2」(笑)というのも出たらしい。え?U2までボッサにすんの?まったく油断も隙もあったもんじゃない。カヴァー・ソング・ハンターに休みはないのである。

Bossa n' Stones - Let's Spend The Night Together


Lupin ! Lupin !! Lupin !!! (ベスト・オブ・ルパンジャズ)

2008-11-10 | TV, 映画, サントラ etc
 凄いCDを見つけた。同一曲の全22ヴァージョン入り2枚組、しかもその曲というのがあの有名な「ルパン三世のテーマ」なのだ!日本人ならおそらく誰も知らぬ者はいないであろうこの国民的名曲を、作者の大野雄二さんがそれぞれ異なった編成、アレンジで22通りの解釈を聞かせてくれる... それも大半がジャズ・フォーマットというのが嬉しい(^_^) 私自身この曲の80年ヴァージョンをテレビで見て、いや聴いて衝撃を受けた覚えがあるのだが、それが「'80 New Mix」である。ビッグバンド編成で「ニュー・ヴァイブ・マン・イン・タウン」のゲイリー・バートンみたいなヴィブラフォンが例のメロディーをスインギーに奏でるわ、絡みつくようなピアノのオブリガートがめちゃくちゃカッコエエわで、文句なしの最強ヴァージョンだ。ジェリー・マリガンとシャーリー・スコットとミルト・ジャクソンが特別参加したような(笑)「'99 Version」は原曲がアニメ・ソングなんて死んでも言えないくらいコテコテのジャズに仕上がっている。これは痛快だ!ラテン・アレンジで歌う akiko のヴォーカルがめっちゃカッコ良い「Featuring akiko」、ラムゼイ・ルイスが憑依したかのような「Funky & Pop Version」、ソニア・ローザが気だるく歌うムード満点のボッサ「Featuring Sonia Rosa」、ケニー・バレルの「ミッドナイト・ブルー」そっくりのブルージーな世界が展開する「JAZZ Version」、キース・ジャレットもビックリのシビアなインプロヴィゼイションの応酬が凄まじい「PLAYS THE “STANDARDS” Version」、絵に描いたようなジャジーなヴォーカルが聴ける「Featuring Salina Jones」、ワルツのリズムに乗せてマイルス・デイビス風ミュート・トランペットが舞い踊る「Waltz Version」、シャカタクみたいなオシャレ・サウンドを再現したサバービアな「'97 Version」、フィリー・ジョーみたいなブラッシュに乗ってベイカーとマリガンがピアノレスでスイングするような「More Lupintic Version」と、実際に聴いてみればわかるが、とにかくバリバリのストレートアヘッドなジャズが満載で、ジャケットに騙されてこの盤をたかがアニメ・ソング・コンピレーションと侮っていたらその凄さに腰を抜かすだろう。偏見や先入観抜きで音楽を楽しむ人に超オススメの「羊の皮をかぶった狼」盤である。

ルパン '80 New Mix

The Great American Songbook / Rod Stewart

2008-11-09 | Jazz Vocal
 ロッド・スチュワートはスーパー・ヴォーカリストである。70年代、ジェフ・ベック・グループからスモール・フェイセズを経てソロ・デビュー、「マギー・メイ」「セイリング」「ホット・レッグズ」「アイム・セクシー」と大ヒットを連発していった。今でもロッドといえばこの時期の「金髪美人にヒョウ柄タイツ」のイメージが強いが、私自身、91年のビルボード・チャート集計方式改悪以降、洋楽ロック・ポップスを聴かなくなったこともあって、ロッドの名を耳にすることもほとんどなくなった。ところが最近、ひょんなことからロッドと再会することになった。いつものように iTunes でスタンダード・ナンバーを試聴しまくってた時のこと、「今宵の君は」という曲のアーティスト欄にペギー・リーやスタン・ゲッツに混じってロッド・スチュワートの名前があったのだ。あのロッドが?まさか...ね。同名異人かな?でもこんな名前めったにないし...(笑) 恐る恐るクリックしてみると、そこには昔と変わらぬキツツキ・ヘアーでニッコリ微笑むロッドがいた(>_<) タイトルは「ザ・グレイト・アメリカン・ソングブック」、つまり「ロッド・スチュワート、スタンダード・ソングを歌う」といういわゆる企画モノである。調べてみるとロッドのこのシリーズは第4集まで出ているらしい。ポップスの世界には落ち目になるとスタンダード・ナンバーの助けを借りて復活を目論む悪い風習がある。リンダ・ロンシュタット、オリビア・ニュートンジョン、シーナ・イーストンetc... しかし試聴したどの曲も凄~くエエ感じなのだ。これはひょっとすると掘り出し物かも... 早速アメリカのアマゾンで全4作を1つにまとめたCDボックスをオーダー、4枚組CD+ボーナスDVD付きで$12というバーゲン価格が嬉しい。1週間後に届いた全55曲を聴いて私は強く確信した。これは売らんがための企画盤なんかじゃないと。ロッドはこれら不滅のアメリカン・スタンダード・ナンバー1曲1曲を、ジャズも歌えるロックンローラーとしてではなく、一人のヴォーカリストとして慈しむように歌っている。心底これらの歌が好きなんだという気持ちがダイレクトに伝わってきて感動する。天性の渋い声も程よく枯れて円熟味を増し、歌詞の一言一言が心にしみ込んできてとっても心地良く、まるで古き良きアメリカにタイムスリップしたような錯覚に陥ってしまう。秋の夜長に小音量で聴くのにピッタリのロマンチックなアルバムだ。

Rod Stewart & Bette Midler - Manhattan


ザ・ピーナッツ・デラックス

2008-11-08 | 昭和歌謡
半年ほど前のある日のこと、友人の901さんから電話をもらった。
「ザ・ピーナッツがボサノバやってるの知ってる?」
「へ?マジっすか(゜д゜ )!!!!!!」
「よさこいボサノバ、ってタイトルらしいよ」
「それはエライことです!すぐに調べます(`・ω・´)」
それからネットで色々検索し、「よさこいボサノバ」は「レア・コレクション」というCDに入ってるとわかって一件落着したのだが、その探索中に YouTube で「可愛い花」の「ボッサ・スウィング・ヴァージョン」というのを見つけた。何なん、それ??? 早速聴いてみるとこれがオリジナル・ヴァージョンよりも遥かにカッコエエのである。しかし手持ちのピーナッツCDには入っておらず、どうやらメチャクチャ希少な音源らしい。色々調べて「ザ・ピーナッツ・デラックス」というLPに入っていることを突き止め、ヤフオクで首尾よくゲット。盤質抜群の67年オリジナルが1,800円、ラッキーラララである。A面が彼女らの代表的なヒットソング集、B面がスタンダード・ソングを含むポピュラー・ヒット・カヴァー集という内容。特に重要なのはA面前半の3曲が新録ヴァージョンだということで、それも単なるステレオ用録り直しではなく、テンポもアレンジもまったく違うテイクなのだ。 まずA-1 が例の「可愛い花’67」で、軽やかなボサノバ風のリズムが心地良く、哀愁舞い散るフルート・ソロが胸を震わす。今の耳で聴いてもその洗練された見事なアレンジに唸ってしまう。さすがは宮川先生だ。A-2 の「情熱の花’67」もその華やかでゴージャスなサウンド・プロダクション(ドラムよりでっかいタンバリンが登場!隠し味の木琴の使い方も絶妙)といい、大胆かつ遊び心溢れるアレンジ(途中で「カルメン」の一節が出てくるのにはビックリ!)といい、素晴らしい作品に仕上がっている。B面では特にB-3「セプテンバー・ソング」が絶品で、ジョー・スタッフォード、江利チエミと並ぶこの曲の3大名唱の1つに認定したい。アコーディオンとギター中心のシンプルな編成が生み出すほんわか・しみじみ感がたまらないB-6「男と女」、雄大で清々しいハーモニーが堪能できるB-2「いそしぎ」やB-4「ムーン・リヴァー」と、音楽って素晴らしいなぁと実感させてくれる名唱が続く。アメリカにフィル・スペクターとロネッツがいるなら、日本には宮川泰とザ・ピーナッツがいる。そう言い切りたいくらい素晴らしいレコードだ。

恋のフーガ

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Punk ! / The Punkles

2008-11-07 | Beatles Tribute
 ビートルズのカヴァーは難しい。金に目がくらんだレコード会社がこれまで何度も「クラシックで奏でるビートルズ」とか「ジャズ・ミーツ・ザ・ビートルズ」とかいったアホな企画盤をポンポン出しまくってきたが、そのほとんどが悲惨な結果に終わっている。多くのアーティストたちが楽曲の「力強さ」に振り回されたあげくに凡演の山を築いていくのを見るにつけ、改めてビートルズの凄さを痛感する。しかしここで紹介するドイツの “おバカ” バンド、パンクルズは一味違う。ビートルズ・カヴァーという難題を見事にクリアしているのだ。
 彼らが凡百のカヴァー・アーティスト達と決定的に違う点はビートルズとパンクロック(特にラモーンズ)への愛情に溢れていることである。演奏はもちろん、楽曲のアレンジからジャケットに至るまで細部にわたってこれでもかのパロディ攻撃に、ビートルズへの限りないリスペクトと彼らのセンスの良さが感じられるのだ。例えば①のLove Me Do、いきなり「ワン・トゥ・スリー・フォー!」... ラモーンズだ(笑)。ヤケクソ感が暴走列車のように押し寄せるイントロから 「ラーラーミドゥッ!」ときて一気に連れ去っていく。その快感と吸引力は凄い。原曲のゆるんだゴムヒモのようなのんびり感はどこへやら、高速化することによって新たな魅力を生み出すのに成功している。パンク・パロディはこうでなくてはいけない。
 同じく高速化された ②Drive My Car も、③From Me To You も、 ⑦It Won't Be Longも、そしてレノンの⑥Give Punk A Chanceも、一歩間違えればみんな同じ金太郎飴状態になるところだが、曲の良さと確かなテクニックで一気呵成に聞かせる。この高揚感は何だろう?どの曲も新たな生命力に満ち、何よりもメチャクチャ楽しい。結局、音楽は楽しけりゃそれでいいのである。
 元々アップテンポの⑧And Your Bird Can Sing や⑪All My Loving は更に速く、スローバラッドの⑩Michelle や⑬Yesterday ですら彼らの世界に引き込んでスピード感溢れるロックンロールとして料理しているのだ。中でも一番気に入ってるのが⑤Please Mr. Postmanで、重量感溢れる原曲を疾走するようなパンク・アレンジで超高速化...「初期ビートルズ好き」にはこたえられないヴァージョンだ。とにかくアルバム全体が躍動感に満ち溢れているのが何よりも凄い。ビートルズ・ファンはもちろん、すべてのロック・ファンに絶対の自信を持ってオススメできる痛快な1枚だ。

The Punkles - Drive My Car



Rosenberg Trio Live At The North Sea Jazz Festival

2008-11-06 | Gypsy Swing
私がマヌーシュ(ジプシー)・スウィングにハマってちょうど1年になるが、そのきっかけとなったのがこの盤である。カヴァー・ソング好きの私は好きな曲を色々な人の演奏で聴き比べて愉しむことが多く、その時も「ブルー・ボッサ」の知られざる名演を iTunes で探していて、偶然この Rosenberg Trio に出くわした。当然名前も知らない。「Trio ってピアノ・トリオかな?」と思いながらクリックすると、今まで聴いたことの無いようなスイング感溢れるギター演奏がスピーカーから飛び出してきた。あまりの素晴らしさに即HMVでオーダー。今まで色んな音楽を聴いてきたがまだまだこんな凄い演奏があるなんて!もう嬉しくってたまらない。まず①For Sephora、ストーケロ・ローゼンバーグのオリジナル曲だが、スタンダードソングも裸足で逃げ出すカッコ良さ。哀愁舞い散るメロディーに涙ちょちょぎれ、ザクザク刻むリズムギターに心が疼く。②Minor Swing、今ではすっかり耳に馴染んだマヌーシュ・スウィングの大スタンダードだが、当時はそんな知識もなく、①に続いてこれまたカッコエエ曲やなぁ、ギターも凄いなぁ、というマヌーシュ・ド素人(笑)だった。③のLes Yeux Noirs、「黒い瞳」はジャズやテケテケの演奏で知ってはいたが、この「瞳」はそれまで聴いたことのないようなもの凄い演奏で、ただただ圧倒されるばかり。これほどまでに高速なフレーズをミスタッチなく正確に弾きたおすなんて人間ワザとは思えない。ジャズでもロックでも、速弾きテクニックに走りすぎるとどうしても機械的で無機質な演奏に陥ってしまうことがよくあるのだが、このストーケロのギターは超高速でありながら歌心溢れるソロの連続で、もう凄いとしか言いようがない。この盤購入のきっかけとなった⑬Blue Bossaの他にも驚愕の「針飛び状態フレーズ」が聴ける④Chega De Saudade やラテンの情熱迸る⑫Armando's Rumba、ロマンチックな響きが印象的な⑮Les Feuilles Mortes(枯葉)など名曲名演が目白押しだが、この盤最大の聴き所は何といっても⑥のBossa Dorado。2分28秒丸ごと哀愁メロディーの塊のような大名曲を名手ストーケロがありとあらゆるテクニックを駆使して歌いまくっているのだ。もう「まいった」としか言いようがない。曲に酔い、いつの間にか演奏に酔いしれているという、10年に1度出会えるかどうかの大名演だ。とにかくこのアルバム、私にとって最初にして最高究極のマヌーシュ盤なのだが、このVerveのCDはカッティング・レベルが低く音がモコモコしてるので、私はCDレコーダーを使って自家製「ラウド・カット」盤を作り、そっちばかり聴いている。気分はすっかりルディ・ヴァンゲルダー(笑)だ。みなさんも一度お試しあれ。

Rosenberg Trio - For Sephora

津軽より愛をこめて / 小山貢・豊 Dr.K Project

2008-11-05 | エレキ・インスト
 カヴァーを成功させるには、素材を完全に自分のモノにしてしまう鋭いセンスと高い音楽性が要求される。確かなテクニックと適度な遊び心、そして何よりもカヴァーする対象へのリスペクト・愛情がモノをいう。それらが音楽的に高い次元で結びつくと、カヴァー・ヴァージョンの傑作が生まれることになる。
 ドクターKこと徳武弘文率いる Dr.K Project は日本のエレキインスト・バンドの第一人者で、これまでデル・シャノンの「太陽をさがせ!」からかぐや姫の「神田川」まで、ありとあらゆる素材をテケテケ化してきたが、ここでご紹介する「津軽より愛をこめて」はそれらを遥かに超える強烈なインパクトで迫ってくる。何と言っても副題が「津軽三味線 play ザ・ベンチャーズ」なのだ!エレキギターと三味線の共演といえば67年の寺内タケシと三橋美智也のコラボレーションによる「津軽じょんがら節」と「黒い瞳」が思い浮かぶが、あれから40年の時を経て、今回はアルバム丸ごと、それもすべてベンチャーズ・ナンバーというから興奮するなという方が無理な話だ。しかも津軽三味線は小山流家元(!)の小山貢師とその息子さんが親子で担当、①Caravan ではまだ軽い手合わせ程度のノリだったのが、②Diamond Head では「リード・三味線」と化して大暴れ(笑)、完全に主役の座を奪ってしまう。③Pipeline でもあのメロディーを津軽三味線で忠実に再現、間奏部分のたたみかけるようなノリがメチャクチャ楽しい。④Cruel Sea や ⑤Secret Agent Man では三味線とエレキギターが見事に一体化して独特なグルーヴを生み出しており、何より彼らが心から楽しみながらプレイしているのがダイレクトに伝わってきて聴いてるこっちまで楽しくなってくる。⑥Bulldog では掛け声を発しながらノリノリでホットな三味線・ソロをぶちかます小山師が最高だ。例の耳だこ・メロディーが三味線で演奏されると実に新鮮に響く⑧Walk Don't Run'64、まるで最初から三味線用の曲だったかのような違和感のなさに唖然とさせられる⑪Driving Guitars、そしてここまでやるかの徹底振りに頭が下がる思いの⑫Ventures Medley、ホンマにみんなベンチャーズ好きなんやね(^_^) ⑭Kickstandではもう笑うしかないほど三味線がピッタリとハマッてて、そのアレンジ・センスはさすがという他ない。こういう盤を肩肘張らずに面白がって楽しめる心の広い音楽ファンでよかったなぁ、と思う今日この頃である。

F1ブラジルGP

2008-11-04 | その他
 運命のいたずらという言葉があるが、今年の最終戦はまさにいたずら好きな勝利の女神に翻弄されたかのような劇的な幕切れだった。マッサも、ハミルトンも、そして明け方近くまでテレビにかじりついて見ていた我々ファンも、ハミルトンの前を走っていたトヨタがまさかあの場面、あと数十秒の所で失速するなどと一体誰が予想しえただろうか... まさに「最終ラップ、最終コーナーの悲劇」である。歴史は作られたのだ。
 それにしても物凄いレースだった。スタート直前の突然の雨に始まり、路面が乾き始めてもうこれで順位確定かと思ってたらラスト5周で又雨が来るという、もうハラハラドキドキのこれ以上ない展開。ラスト2周でベッテルがハミルトンをパスした時なんかもう「おぉぉ!"#$%&」と思わず雄たけびを上げて(笑)大興奮してしまった。このままゴールしたら去年に続いてミラクル逆転Vや!!! って思った瞬間にトヨタ失速... ふざけんな!!! 「逆転チャンプだ!」と勘違いして歓喜してたマッサパパが可哀想すぎる(>_<) それにしてもあれほどまでに悔しさに満ちた、笑顔のない表彰台は見たことがない。チャンプを逃したマッサはともかく、アロンソもライコネンも憮然たる表情... 虚しく響き渡るイタリア国歌... まるでお通夜のようだ。みんなよっぽどハミルトン嫌いやねんな(笑)
 マッサの優勝インタビューを見ていて、8年前鈴鹿でチャンピオン3連覇の夢をシューマッハに打ち砕かれたハッキネンが言った言葉を思い出した...「良き勝者になるためには、時には良き敗者になることも必要なんだ」... マッサはベストを尽くした。雨をものともせず母国の大観衆の前で完璧なポール・トゥ・ウィンをキメてみせた。しかし悲しいかな、今年はチームもマッサ自身もライバルに比べてアホなミスが多すぎた。特に給油ホースをつけたままバキュームカーみたいな姿でピットレーンを走って世界中に恥を晒したシンガポールGPや、ハミルトンを撃墜してペナルティーをくらった日本GPなんかはその最たるものである。これではチャンピオンになれるわけがない。
 この1年でマッサは本当に成長した。終盤サポート役に回されてプライド・ズタズタのライコネンも来年は目の色を変えて臨むだろう。もちろん現役最高のドライバー・アロンソもハミルトンの天下を黙って見ているはずがない。早くも来シーズンが楽しみになってきた。

ミコ・イン・ニューヨーク / 弘田三枝子

2008-11-03 | Jazz Vocal
 弘田三枝子といえばヴァケーション、確かにその通りなのだがそれはあくまで彼女のオモテの顔にすぎない。彼女のデビューは61年、わずか14歳の時である。そのダイナミックでパンチの効いた歌声を武器にいきなりヒットを連発し「カヴァー・ポップスの女王」と言われた彼女だが、実はバリバリのジャズ・シンガーでもあった。それも小学校2年の時から米軍キャンプでジャズを歌っていたというのだから恐れ入る。そんな彼女が18歳の時、何とアメリカの「ニューポート・ジャズ・フェステイバル」で並居るトップ・ジャズメンを差し置いて3日目のトリとして出場したのだ!で、そのステージでミコのバックを務めたビリー・テイラー・トリオのベン・タッカーが中心となって彼女のニューヨーク滞在中にレコーディングしたのがこの「ミコ・イン・ニューヨーク」というわけである。まず①のRight Here Right Now を聴いてぶっ飛んだ。凄い、凄すぎる!!! これが18歳の日本人少女の歌声か?スキャットを交えながら歌うミコは完全にジャズ・ディーヴァと化しており、ベン・タッカーのベースもいきなり本気モードでブンブン唸っている。まるでベテラン・シンガーのような絶妙なヴォーカルを聞かせる②Sunny、スロー・テンポでも全く破綻をきたさずブルージーに歌いきる③Lazy Lovin、ねちっこい歌い方でドス黒いフィーリングが全開の④Ramblin' Rover に続いて、ハービー・マンで有名な⑤I'm Comin' Home Baby... 何とカッコ良いスキャットだろう!ファンキーなテイラーのピアノも、よく歌うタッカーのベースも、すべてが完璧にキマッている。ゴスペル・シンガーも裸足で逃げ出す⑥I Wish I Knew、グルーヴィーな感覚が横溢する⑦The Message... もう真っ黒けである。そしてスキャットだけで歌いきる⑧Flying Home の凄まじいスイング感... これには開いた口がふさがらない(゜o゜) 日本のジャズ史上最高のヴォーカルがここにある。実はこの盤、CDでも再発LPでも持っているのだが、あまりに素晴らしい内容なのでオリジナル盤が欲しくなり、四方八方手を尽くして探した結果、2ヶ月ほど前についに手に入れた\(^o^)/ 何でも東京のレコード店では3万円というのが相場らしいが、ヤフオクでその1/3以下の値で買えたのだ。盤も見開きのペラジャケもピカピカである。音も抜群に良い。今では家宝としてレコード棚の特等席に鎮座していらっしゃる。今年買ったレコードの中で一番嬉しかった1枚だ。
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夢みるシャンソン人形 / フランス・ギャル

2008-11-02 | European Pops
 私の友人の901さんはとても懐の深い方で、ジャズ・ボサノヴァ・ホットクラブ・エレキインスト・昭和歌謡・そして最新のJ-Popsと、その守備範囲はとてつもなく広い。私はそんな901さんからかなりの影響を受けていて、その内のひとつがいわゆる「イエ・イエ(60年代のフレンチ・ポップス)」であり、そのきっかけとなったのがフランス・ギャルの「夢みるシャンソン人形」だった。
 私と901さん、plincoさんの3人はほぼ同時期に海外オークション eBay を始め、レコードを海外からガンガン取りまくっていたのだが、ある時901さんの ID を検索してその収穫物一覧を見ていると、ジャズのレコードに混じって1枚だけ聞いたこともない歌手のレコードを取っておられた。フランス・ギャル??? 誰それ??? 最初はマジで “フランスのギャル” のことかと思ったが(笑)、れっきとした歌手の名前だった。そしてそのシングル盤のジャケットにはめちゃくちゃ可愛い女の子が写っていたのだ。う~ん、これは気になる...
 早速音聴き会 G3 でそのシングル盤を聞かせてもらったのだが、これがもうめちゃくちゃ素晴らしい!!! フレンチ・ポップスでありながら何となくどこかで聞いたことがあるような懐かしい感じがして、その親しみやすいメロディーにすっかりまいってしまったのだ。これをきっかけにして私はフランス・ギャルの大ファンになったのだがそれと同時にこの曲のファンにもなり、それ以来「夢シャン」探しの日々が始まった。
 この歌は65年のユーロヴィジョン・ソング・コンテストのグランプリ曲だけあって、カヴァーも数多く存在する。何やかんやで現在31ヴァージョン集めたが、まだまだありそうな気がする。全国一千万の「夢シャン」ファンのみなさん、情報お待ちしてます。
France Gall - Poupee de Cire, Poupee de Son - 1965

Presenting The Fabulous Ronettes

2008-11-01 | Wall Of Sound
 ガール・グループと聞いてまず頭に浮かぶのがこのロネッツである。ロネッツといえばフィル・スペクター抜きには語れない。特に63年に作られたこのアルバムこそまさに究極のスペクター・サウンドであり、「悲しき雨音」みたいな効果音で始まるA①「Walking In The Rain」からいきなりウォール・オブ・サウンドが全開だ。A②「Do I Love You?」は典型的な60'sポップスをウォール・オブ・サウンドでコーティングしたような曲。大瀧詠一も泣いて喜びそうなナイアガラ・サウンドだ。スペクター版ブリル・ビルディング風ポップスのA③「So Young」に続くのはブライアン・ウィルソンがそのコーラス・アレンジをまるごとパクッたA④「Breaking Up」、まるでビーチ・ボーイズがバック・コーラスで参加しているかのような(?)サウンドだ。A面のベスト曲といえるA⑤「I Wonder」は、ガール・グループかくあるべしという感じのキャッチーなメロディーといい、きらびやかなコーラス・ハーモニーといい、すべてが素晴らしい! A⑥「What'd I Say」はスタジオ録音に歓声をかぶせたライブ仕立てヴァージョンだ。
Do I Love You- The Ronettes- 1964

The Ronettes-I Wonder


 B①「Be My Baby」はもう何の説明も要らない、スペクター・サウンドの、いや、オールディーズ・ポップスの代名詞といっていい程の大ヒット曲。 “完璧な” とはまさにこの曲のためにある言葉だろう。イキそうでイカない不思議な展開のB②「You Baby」、3分間芸術の極みB③「Baby, I Love You」、 打楽器のリズムが印象に残るB④「How Does It Feel?」、テディ・ベアーズの「会ったとたんに一目惚れ」をロネッツで再現したかのようなB⑤「When I Saw You」と怒涛の展開が続き、アルバムラストを飾るB⑥「Chapel Of Love」、しかしさすがにここまでやると残響音がキツすぎてまるで風呂場で聴いているような感じがする。過ぎたるは何とやらで、この曲に関しては有名なディキシー・カップスのヴァージョンの方が優れていると思う。
 何やらスペクター・サウンドの話ばかりになってしまったが、やはりロネッツの一番の魅力はロニーの歌声、これに尽きる。1986年、エディー・マネーのヒット曲「Take Me Home Tonight」に参加した彼女の「ウォッ、オッ、オッ、オー」という声を聴いただけでノックアウトされたのは私だけではないだろう。尚、このアルバムは今現在単独では CD 化されておらず、青レーベルのオリジナル盤は5万円を下らない。全曲が不滅のガール・グループ・クラシックスといえる、フィレス・レコードの最高傑作だ。
The Ronettes - Be My Baby (Shindig 1965)

BABY I LOVE YOU (ORIGINAL SINGLE VERSION) - THE RONETTES
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