shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Born to Run / Bruce Springsteen

2008-11-14 | Rock & Pops (70's)
 このブログのタイトルになっている「明日なき暴走」はもちろんブルース・スプリングスティーンのアルバム名から取ったもので、原題は「Born To Run」。私が大学時代よく聴いていたFM大阪の朝の番組でアメリカ人のDJがいつもエンディング・テーマとしてかけていたのがタイトル曲の「明日なき暴走」で、その疾走するようなスピード感がたまらなく好きだった。いつもそれを聴いてから一日が始まるという感じで、完全に生活の一部になっていた。「一緒に悲しみを抱きながら生きていこう」「いつになるかは分からないけど、俺たちは本当に行きたい場所へ辿り着けるさ」「俺たちは突っ走るために生まれてきたんだ!」という歌詞の内容に大いに共感を覚えたし、随分勇気をもらった気がする。彼が尊敬するフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドをロックで再現したような分厚いサウンドもめちゃくちゃカッコ良かったし、特にクラレンス・クレモンズ怒涛のサックス・ソロの凄まじいまでのエネルギーの奔流には圧倒された。かれこれ30年以上音楽を聴いてきたが、これ以上カッコ良いロック曲を私は知らない。コンサートの映像で、この曲が始まるや否や巨大なスタジアムを埋め尽くした大観衆の地鳴りのような歓声が響き渡り、会場全体が大きなうねりになって揺れるように見えたのを今でもよく覚えている。まさにストリートに生きる若者達のアンセムといっていい、アメリカン・ロックの記念碑的な曲である。それと、アルバム冒頭を飾る「涙のサンダー・ロード」もタイトル曲に負けず劣らず素晴らしい。ピアノとハーモニカだけで静かに始まるオープニングから、歌詞の描く風景もサウンドの雰囲気も目まぐるしく変化し、気がつけば怒涛のエンディングを迎える。サンダー・ロード(雷の道)とは幸せの国に至る道、そこへ行くにはこのオンボロ自動車に君が俺と一緒に乗ってくれればいい、俺たちはもう若くはないが走ればまだ間に合う、苦い思い出で一杯のこんな町は捨てて二人でどこか新天地へ行き、人生の勝利者になろう、という実にドラマチックな歌である。一体どうすればこんなカッコ良い歌詞が書けるんだろう?何度聴いても震えがくる。ジャズ界にロリンズの「サキソフォン・コロッサッス」があるように、ロック界にはスプリングスティーンの「明日なき暴走」がある。このアルバムに出会えたことを音楽の神様に感謝したい。

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