shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Mr.Children 単曲集

2008-11-26 | J-Rock/Pop
 これは台湾の旭聲という怪しいレーベルから出ているミスチルの逆輸入ベスト盤である。正直言って私はそれほど熱心なミスチル・ファンというわけではないし、特に最近の曲はインパクトに欠けるというか、ロック色が薄れて健全な癒し系ポップス路線にシフトしつつあるようで、いまひとつ馴染めない。しかしこの CD に収録されている94年~97年頃の、アルバムでいうと「深海」~「BOLERO」あたりのミスチルは凄かった。神がかっていたと言ってもいいかもしれない。まぁ彼らの根っこにあるのはロックというよりも70年代初期の日本フォークの要素だと思うが、世間で “ミスチルの暗黒時代” と呼ばれるこの頃の、フォーク・ソングをロックのサウンドで武装したような尖った楽曲群が私は大好きなのだ。
 私が最初にミスチルにハマッたのは94年の「everybody goes ~秩序のない現代にドロップキック~」で、そのシュールな歌詞とビートルズ直系のストレートなロック・サウンドに夢中になった。更にその路線を推し進めたのが「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」で、慣れ親しんだ洋楽の一番美味しいエッセンスを抽出し、それを彼らの感性で現代に甦らせてノリの良いロック曲に仕上げましたという感じの、まさに日本のロックの王道を行くような1曲だ。要所要所に挿入されるハンド・クラッピングはビートルズへの愛だろう。3分15秒からの迸るようなサックス・ソロはスプリングスティーン「明日なき暴走」へのオマージュそのものだ。私にとっては一緒に口ずさめるようなポップさを失うことなく毒を撒き散らしながらカッコ良いロック曲を連発していたこの時期のミスチルこそが最高なのである。
Mr.Children 「シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜」 MUSIC VIDEO


 この路線はビリー・ジョエルが憑依したかのような「マシンガンをぶっ放せ」、ミスチルにしか書けない「旅人」を経てビートルズ・フォロワーの遺伝子が疼く「ニシエヒガシエ」まで続くのだが、中でも96年の「名もなき詩」が圧巻だ。この曲こそまさにミスチルが到達した最高峰、極めつけの1曲である。桜井さんの歌も屹立しているが、もう歌がどうとかサウンドがどうとか、そういう次元で語る曲ではない。黙って聴けば理屈ぬきで感動が押し寄せる、邦楽史上に残る屈指の名曲なのだ。これはミスチルにとっての「ホテル・カリフォルニア」であり、30年前のイーグルスと同様に、彼らが突然の活動休止宣言で97~98年の2年間沈黙したのも頷ける。
Mr.Chirdren 名もなき詩(歌詞付き)


 復活後のミスチルは先に述べたように路線変更してしまったが、私にはこのベストCDと「深海」「BOLERO」、それに「ニシエヒガシエ」のシングルがあればそれで十分。いつだって最高のミスチルが聴けるからだ。
Mr.Children ニシエヒガシエ Concert tour Q