shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

僕のスウィング

2008-11-12 | Gypsy Swing
 「マヌーシュ」とはフランス北西部からベルギー国境付近のアルザス地方で暮らしているジプシーのことである。彼らは生まれつき手先が器用な民族で、その音楽は哀愁のメロディーを情熱的なギター・サウンドで表現する一種のストリート・ミュージックだった。1930年代に伝説のギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトがそんな土着のジプシー音楽にスウィング・ジャズのエッセンスを取り入れて完成させた音楽スタイルがマヌーシュ・スウィングというわけで、マカフェリやセルマー・タイプのギターを使っての、ザクザク刻むリズムをバックに哀愁のメロディーを奏でる超速弾きが大きな特徴だ。私にマヌーシュ・スウィングの扉を開いてくれたのが以前ご紹介したローゼンバーグ・トリオなら、私に「マヌーシュとは何か?」という根本的な問いに対する答えを示してくれたのがトニー・ガトリフ監督の「僕のスウィング」という映画であり、そこで主演したチャボロ・シュミットをフィーチャーしたこのサントラ盤なのである。ジャズであれ、ボサノヴァであれ、歌謡曲であれ、音楽とその土地の文化とは切っても切れない関係にあるが、「僕のスウィング」はジプシー・ミュージックの文化的バックグラウンドがとてもよく分かるように作られており、ヨーロッパにおけるジプシーの存在がどんなものなのかの一端を垣間見れる。「ロマ」と呼ばれる彼らは住んでる区域からして違う、定職もなく字も読めず、ギター片手にキャンピングカー暮らし... チャボロ演じるミラルドの生活ぶりこそが典型的なロマの生き方なのだ。そんなロマの少女スウィングとガジョ(非ジプシー)の少年マックスの心の交流と、そんな2人を隔てる目に見えない壁の存在、そしてユダヤ人・アラブ人・ロマ民族が音楽を通して一つになり平和を願う姿などが見事に描かれた素晴らしい映画だった。そのサントラであるこの盤の一番の聴き所は何と言ってもチャボロ一世一代の名曲名演、①「ミレ・プラル」にトドメを刺す。映画冒頭のタイトルロールのバックでいきなりこの曲が流れた時、あまりの強烈なインパクトにぶっ飛んでしまった(>_<) 心の奥底までビンビン響いてくるような熱いギターの音に圧倒されたのだ。大ジャム・セッション風の②「黒い瞳」の豪快なノリも凄いモノがあるし、⑭「平和の歌」のどこか中近東風のメロディーの合唱も耳に付いて離れない。マヌーシュ・スウィング・ブームの火付け役となったこの映画、CD/DVD共にマヌーシュ・コレクションには欠かすことのできない1枚だ。

Tchavolo Schmitt - Mire Pral



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