shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Punk ! / The Punkles

2008-11-07 | Beatles Tribute
 ビートルズのカヴァーは難しい。金に目がくらんだレコード会社がこれまで何度も「クラシックで奏でるビートルズ」とか「ジャズ・ミーツ・ザ・ビートルズ」とかいったアホな企画盤をポンポン出しまくってきたが、そのほとんどが悲惨な結果に終わっている。多くのアーティストたちが楽曲の「力強さ」に振り回されたあげくに凡演の山を築いていくのを見るにつけ、改めてビートルズの凄さを痛感する。しかしここで紹介するドイツの “おバカ” バンド、パンクルズは一味違う。ビートルズ・カヴァーという難題を見事にクリアしているのだ。
 彼らが凡百のカヴァー・アーティスト達と決定的に違う点はビートルズとパンクロック(特にラモーンズ)への愛情に溢れていることである。演奏はもちろん、楽曲のアレンジからジャケットに至るまで細部にわたってこれでもかのパロディ攻撃に、ビートルズへの限りないリスペクトと彼らのセンスの良さが感じられるのだ。例えば①のLove Me Do、いきなり「ワン・トゥ・スリー・フォー!」... ラモーンズだ(笑)。ヤケクソ感が暴走列車のように押し寄せるイントロから 「ラーラーミドゥッ!」ときて一気に連れ去っていく。その快感と吸引力は凄い。原曲のゆるんだゴムヒモのようなのんびり感はどこへやら、高速化することによって新たな魅力を生み出すのに成功している。パンク・パロディはこうでなくてはいけない。
 同じく高速化された ②Drive My Car も、③From Me To You も、 ⑦It Won't Be Longも、そしてレノンの⑥Give Punk A Chanceも、一歩間違えればみんな同じ金太郎飴状態になるところだが、曲の良さと確かなテクニックで一気呵成に聞かせる。この高揚感は何だろう?どの曲も新たな生命力に満ち、何よりもメチャクチャ楽しい。結局、音楽は楽しけりゃそれでいいのである。
 元々アップテンポの⑧And Your Bird Can Sing や⑪All My Loving は更に速く、スローバラッドの⑩Michelle や⑬Yesterday ですら彼らの世界に引き込んでスピード感溢れるロックンロールとして料理しているのだ。中でも一番気に入ってるのが⑤Please Mr. Postmanで、重量感溢れる原曲を疾走するようなパンク・アレンジで超高速化...「初期ビートルズ好き」にはこたえられないヴァージョンだ。とにかくアルバム全体が躍動感に満ち溢れているのが何よりも凄い。ビートルズ・ファンはもちろん、すべてのロック・ファンに絶対の自信を持ってオススメできる痛快な1枚だ。

The Punkles - Drive My Car