shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Hot Club de Norvege MORENO

2008-11-19 | Gypsy Swing
 モレノはマヌーシュ・スウィング界のナイジェル・マンセルである。天才肌のビレリ・ラグレーンやストーケロ・ローゼンバーグとは違い、実力はピカイチながら今ひとつメジャーになりきれないところや、時々豪快なミスもする(笑)がノッてくると誰も手がつけられないほどの超速弾きを炸裂させるところなんかがそう感じさせる所以である。いわゆる「記録よりも記憶に残る」タイプ...まさにマンセルではないか!そういうドライバー、じゃなかったアーティストほど熱狂的なファンが多いものだが、私もそんな一人でモレノの大ファンなのだ。もちろんラグレーンもローゼンバーグも大好きなのだが、CDトレイに収まる回数はひょっとするとモレノの方が多いかもしれない。そんな彼の超速弾き爆裂フレーズを聴くたびに、車を左右に揺すりながら豪快にアウトからかぶせて抜き去っていく荒法師マンセルをイメージしてしまう。こんなギタリストは他にはいない。
 彼はこれまでリーダー作を8枚出しており、中でも速弾きのライバル的存在であるアンジェロ・ドゥバールと競演した、ノルウェーのホット・クラブ・レーベルから出ているこのCDが一番凄い。マヌーシュ界では競演というと普通和やかな雰囲気でソロ回しをやったりするのが普通なのだが、この盤ではバチバチ火花が散っていて実に緊張感溢れるスリリングなソロの応酬が展開される。まるで92年モナコGPのセナ vs マンセルだ!①の「デヴィッド」や③の「メトロ・スウィング」を聴けばわかるように、同じ速弾きでも2人の弾き方はかなり違っており、そんな2本のギターがくんずほぐれつ絡み合いながら他ではちょっと聞けないような強烈なスイング感を生み出しているのがこの盤の凄いところ。⑤の「ノト・スウィング」では1st & 3rd ソロをアンジェロが、2nd & 4th ソロをモレノが弾いており、「負けるもんか!」とばかりに超速弾きを超正確にバリバリ弾きたおす2人のプレイはとても人間ワザとは思えない!史上最強のギター・バトルといってもいいかもしれない、本盤最高の聴き所である。⑫の「オール・オブ・ミー」でアンジェロを押しのけるかのように(笑)自分のソロを弾ききってしまうところなんかも思いっ切りマンセルしている。私のように豪快なマヌーシュ・ギターが好きな人間にとってはこたえられない1枚だ。

F1 1992年モナコGP セナvsマンセル