shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

もう1つの「タンパのペッパー」、遂にゲット!①

2024-08-26 | Jazz
 私は好きな音楽に関しては徹底的に極めるのが信条で、一度狙ったレコードはたとえどんなに時間がかかろうとも必ず手に入れるようにしている。ゲットするのに数年、ヘタすれば10年以上かかったレコードも少なくないが、だからこそ、苦労して手に入れた時の喜びは言葉では言い表せないくらい大きい。
 “タンパ” というマイナー・レーベルからリリースされたアート・ペッパーの2枚のレコードはフォービート・ジャズ・レコード・コレクターにとっては喉から手が出るほど欲しい垂涎盤。「あなたと夜と音楽と」の決定的名演が入ったマーティ・ペイチ名義の「Marty Paich Quartet featuring Art Pepper」(TP-28)の方は去年の冬に手に入れることができて大喜びしたのを今でもよく覚えているが、先日ついに「Besame Mucho」が入っていることで有名なもう1つのタンパ盤「Art Pepper Quartet」(RS-1001)を手に入れることができたので、今日はそれについて書こうと思う。
 そもそも「タンパのペッパー」は 2ndプレスにあたるピンク・レーベル盤でよければ掃いて捨てるほど見かけるのだが、ビニール材質のせいなのか音が悪すぎて問題外だし、そのことをみなさんよくご存じなのか、$30~$40で出ていても見向きもされない。このレコードは腹を括って1stプレスを狙うか、キッパリと諦めてUKのロンドン盤10インチで妥協するかの2択なのだ。
 ということで諦めの悪い私はこのレコードを “お気に入り” に入れてeBayやヤフオクに出品されるのを四六時中見張っていたのだが、マイナー・レーベルからリリースされたジャズのレコードということもあって年に2~3回ぐらいしか市場に出てこないし、出たら出たでコレクターがピアニアのように群がって落札価格が高騰するので、これまで数えきれないほど苦汁を舐めさせられてきた最難関盤の1枚だ。さすがにここ数年ほどは “まぁどうせ無理やろうけど万が一っちゅーこともあるから一応ウォッチしとこ...” と半ば諦めモード。そしてその “万が一” が起こったのが1か月半ほど前のことだった。
 いつものようにeBayでお気に入りをチェックしていると「Art Pepper Quartet」の黒ラベル真正オリジナル1stプレス(RS-1001)がスタート価格$14.95(約2,400円)で出品された。VGとかExといった盤質表記は一切無く、商品説明欄に “Has been played a lot but plays well with minor surface noise --- music comes through loud and clear.”(かなり聴かれてはいるがサーフェス・ノイズはそれほどでもなく、音圧が高くてクリアーなサウンドが楽しめる。) と書いてある。ジャケットの方は底割れアリだそうだが写真で見る限り他に大きな問題は無さそうだ。
 私はどうせすぐにピラニア・コレクターが集まってきて(←他人のこと言えへんけど...)数百ドルまで上がるやろ... と思いながら毎日ウォッチリストでチェックしていたが、〆切前日に3人ほどビッドが入ったものの、それでもあと数時間を残して $35(約5,600円)止まり。しかし “これやったらひょっとして獲れるんちゃうか...” という期待感よりも、“ひょっとしてこれってヤバい物件なんか? 何か重大な欠陥を見落としてるんやろか?” という不安の方が大きかった。
 〆切は木曜の早朝6時で、久々に早起きしてスナイプを敢行。送料込みで4万円が自分のリミットだったので$211を入れたところ、ほぼ同時に3つの入札があり、結局$192.49で私が落札。正直言ってアウトビッドされると思っていたので、画面に “You won!” と出てもしばらく半信半疑だったが、ヘタしたら10万円超えもありうる超稀少盤を3万円台で買えた喜びが後からジワジワとやってきた。しかし喜ぶのはまだ早い。レコードが届いて実際に聴いてみるまでは安心してはいけない。20年以上ネットでレコードを買っているとどうしても用心深くなってしまうのだ。
 それから3週間して待ちに待った「タンパのペッパー」が届いた。さぁ、当たりかハズレか... 早速レコードを取り出して盤面を見るとまさに満身創痍という感じで悲惨そのもの(>_<) 見た目はGか良くてもせいぜいG+ がいいところだ。“あ~、やってもうた... これはあかんやつや...” と目の前が真っ暗になり、SPレコードのような盛大なノイズの嵐を覚悟しながら恐る恐るレコードに針を落としてみた。実際にスピーカーから出てきた音はそこまで酷くはないにしても、やはり竹林の火事の如くチリパチうるさいことに変わりはない。一旦音楽が始まってしまうとオリジナル・モノラル盤特有の音圧の強さのおかげで相対的にノイズ感は軽減されるものの、まるでジョウロで水を撒いているかのようなジリジリというノイズがペッパーのアルトに纏わりついて煩わしいことこの上ない。しかもB面の方が更に盤質が悪く、肝心かなめのB②「ベサメ・ムーチョ」が一番ノイジーというのがめっちゃ悲しい(T_T)
 結局私の耳にはA面VG−、B面G+ というところで、決してセラーの言うような “マイナー・サーフェス・ノイズ” などという生易しいものではなかったが、値段を考えたらしゃあないか。VG+ 以上の盤になると確実に10万円近くはするし、こんなのでもまだピンク・レーベルの2ndプレス盤なんかよりは遥かにマシ。試しにプリアンプの高音を絞ってみたら少しだけ聴きやすくなったので、とりあえずは Filler(当面のつなぎ)として我慢することにした。 (つづく)
Art Pepper Quartet - Art's Opus

ジェイソン・ステイサム特集③ ~B級臭漂う隠れ名作編~

2024-08-21 | TV, 映画, サントラ etc

 ジェイソン・ステイサムにはB級映画が良く似合う。私の言っている“B級”というのはもちろんポジティヴな意味合いで、彼の場合は万人受けする超大作よりもその筋系のマニアックなファンたち向けのちょっと怪しいB級映画でこそ真価を発揮するように思えるのだ。例えるなら高級中華には決して真似のできない街中華のB級グルメならではの味に病みつきになるようなものだ。ということで今日はステイサム主演のB級映画の名作をご紹介。

⑨デス・レース(2008)
 刑務所で囚人たちによって行われる流血、破壊、殺戮なんでもOKのリアル・マリオカートという、もう設定からして無茶苦茶なB級映画にステイサムが出ているのを知った時は驚いたが、これがもうめっちゃ面白くて最後まで一気呵成に観てしまった。とにかく突っ込みどころ満載の、あまりにもバカバカしい脚本なので、頭を空っぽにして楽しむのが正解だろう。共演者もコーチ役に「ジョン・ウィック」でNYコンチネンタル・ホテルの支配人を演じたイアン・マクシェーン、刑務所長役に「ジェイソン・ボーン」でCIA内務情報局長を演じたジョアン・アレン、そしてライバル・レーサー役に「ワイルド・スピード」のローマンことタイリース・ギブソンと、私の大好きな俳優さんたちがたくさん出ているのが嬉しい。女の子の撮り方やバックに流れる音楽、そしてローマン(?)のマイアミ連呼はワイスピへのオマージュだと思った。
ジェイソン・ステイサムに手を出すべきではなかった(最高のデス・レースの戦闘シーン)


⑩セイフ(2011)
 この「セイフ」は金庫の暗証番号を記憶している中国人天才少女をめぐる中国マフィアとロシアンマフィア、それにNYの悪徳警官グループの三つ巴の争いにステイサムが巻き込まれるという実にわかりやすいストーリーで、彼がその少女を守りながら悪い奴らを次から次へとぶっ倒していくいつもの “ステイサム無双” を存分に楽しめる。中でも私が特に気に入っているのは、バーのカウンターで “これから殺そうって時に何て言うべきか...” と呟いた直後に隣に座ったマフィアの喉元にフォークを突き刺して大暴れするシーンで、山路さんの吹き替えの上手さも相まって実にスリリングなシーンになっている。
Bar Fight Scene | SAFE (2012) Jason Statham, Movie CLIP HD


⑪ワイルド・カード(2015)
 この映画も絵に描いたようなB級作品で、内容はスカスカやし、乱闘シーンも少なめやし、派手なカーチェイスもないしで、途中まではイマイチやなぁ... と思いながら観ていたのだが、ラスト5分間に凝縮されたステイサム無双はまさに圧巻の一言。ダイナーの屋根から飛び降りで敵に襲い掛かっていくシーンは何度見てもカッコいい。お下劣な笑いのセンスも絶好調で、“全人類の憧れ” とか “頭に乗っけるハムスター” とかのくだりには腹筋崩壊しそうになった。
ステイサムのアクション(ワイルドカード編)


⑫オペレーション・フォーチュン(2023)
 現時点で最新のジェイソン・ステイサム主演作「オペレーション・フォーチュン」もB級映画の王道を行くような作品だ。アクションが凄いのはもちろんだが、それに負けないくらいにコミカルな要素が満載で、思わずニヤリとさせられるようなユーモラスな台詞が随所に散りばめられている。チームのメンバーもクセが強く、エンタメ色の強いスパイ映画に仕上がっているが、中でもサラ役のオーブリー・プラザが実の良い味を出していて笑わせてくれるし、グレグ・シモンズ役のヒュー・グラントとダニー・フランチェスコ役のジョシュ・ハートネットの軽快な掛け合いがクールで面白かった。
ジェイソン・ステイサム主演『オペレーション・フォーチュン』吹替版予告編 山路和弘ら実力派声優集結


【おまけ】
ステイサムの吹き替えは山路さんしか考えられない。これはもう「コロンボ=小池朝雄」に匹敵する相性の良さだろう。
俳優別 吹き替え声優 411 ジェイソン・ステイサム 編

ジェイソン・ステイサム特集② ~ステイサム主演の傑作編~

2024-08-16 | TV, 映画, サントラ etc

⑤トランスポーター(2002)
 ジェイソン・ステイサムの魅力はその痛快無比なアクションと、クールでありながらユーモアのセンスも忘れないところだと思うのだが、そういった要素をグッと濃縮還元したような傑作が「トランスポーター」シリーズだ。この映画でステイサムは元特殊部隊のプロの運び屋の役を演じており、カンフーを駆使して敵を蹴散らしながらテンポ良くストーリーが進んでいくので観ていて実に気持ちが良い。スー・チー演じるヒロインのライも可愛かったし、フランス人らしいエスプリを感じさせるタルコニ警部も実に良い味を出していてキャスティングも文句なし。3作あるシリーズのうちではこの1作目が一番好きだが、3作目の “5秒やるからこの汚い手をどけろ” のシーンも必見だ。
『トランスポーター』予告編

5秒やるからこの汚い手をどけろ


⑥バトルフロント(2013)
 「エクスペンダブルズ」シリーズでコンビを組むシルベスター・スタローンが脚本を担当した作品で、ステイサムは可愛い娘を守る父親役を演じているのだが、これがもう絵に描いたような “最強の父親” そのもの。いじめっ子に対してこの娘が逆襲してボコったことが発端となって閉鎖的な田舎町の中で事態がどんどんオオゴトになっていくというちょっとダークな展開なのだが、基本的には “ケンカを売る相手を間違えたな...” 的なシチュエーションでのステイサム無双を堪能するための作品だ。敵役がショボすぎてハラハラドキドキ感に欠けるのが玉にキズだが、最終的に娘もネコも無事戻ってきてメデタシメデタシのハッピー・エンドなので、観終わった後は気分スッキリだ。
ジェイソン・ステイサム主演!映画『バトルフロント』予告編


⑦メカニック:ワールドミッション(2016)
 ステイサムの「メカニック」シリーズでは1作目の続編にあたるこの「メカニック:ワールドミッション」(原題は Resurrection レザレクション =“復活”)の方が断然面白い。1作目は主人公の殺し屋アーサー・ビショップのお披露目程度の内容で大したアクションも無かったが、この続編では世界を股にかけた大立ち回りがふんだんに楽しめて言うことナシ。冒頭で敵の部下を蹴散らしてゴンドラからダイヴしてパラグライダーに飛び移るシーンは007みたいなカッコ良さで胸熱だし、人質の女性が囚われている船に一人で乗り込んで敵を殲滅するシーンなんてまさに “ワン・マン・アーミー” そのものだ。キャスティングでは大好きなミシェル・ヨー(→スタートレックでフィリッパ・ジョージャウ役を演じた女優さん)がメイ役で出ているのが嬉しかった。
映画『メカニック:ワールドミッション』予告編


⑧ワイルド・スピード:スーパー・コンボ(2019)
 「スーパー・コンボ」は原題の「Hobbs & Shaw」が示すように、ルーク・ホブス(ロック様)とデッカード・ショウ(ステイサム)の二人が主演を務めるワイスピ・シリーズのスピンオフ作品で、時系列的に言うと8作目の「アイス・ブレイク」後日談という位置付けだ。価値観からライフスタイルまで何もかもが正反対の水と油な二人が世界の危機を救うために最強 “坊主マッチョ” タッグを結成し、お互いに文句を言い合いながらも(←これが一番オモロイwww)協力して悪の組織に挑んでいくという典型的なアクション・コメディー作品に仕上がっている。デッカードの妹役のハッティも随所でキレのあるアクションを披露しており、テクニカルな絡み技を瞬時にキメてしまうシーンには唸ってしまう。それと、スーパーカーのマクラーレン720Sがロンドンの街中を疾走するシーンがめちゃくちゃカッコ良かった。
仲良しwww 【ワイルドスピード・スーパーコンボ / Fast & Furious Presents Hobbs & Shaw】

【ワイルドスピードスーパーコンボ】マクラーレン720Sの最高にかっこいいシーン(吹替版)

ジェイソン・ステイサム特集① ~主役より目立ってるステイサム無双編~

2024-08-11 | TV, 映画, サントラ etc
 ここのところ40℃近い猛暑の日々が続いているが、私は暑さが何よりも苦手な人間なので出来るだけ外出せずに家で音楽を聴いたり映画を観たりして過ごしている。ただ、最近はあまり目ぼしいレコードを買えていないせいもあって、映画、それも単純明快スッキリ爽快なアクション映画を観る時間が増えた。
 そんなアクション系俳優で私が一番好きなのがジェイソン・ステイサムだ。この人が出ている映画はほとんど観ているし、ブルーレイもいっぱい持っている。彼の魅力は何と言ってもそのキレッキレのアクションで、殴る・蹴る・刺すと何でもござれなところがいい。ということで早速このブログでもステイサム特集をやることにした。

①エクスペンダブルズ2(2012)
 私のステイサムとの出会いはシルベスター・スタローンを中心に新旧アクション・スターが集結した「エクスペンダブルズ」(2010)で、その豪華な顔ぶれの中で私の目を引いたのが他でもないステイサムだった。このシリーズは既に4本製作されているが、私が一番好きなのがこの「エクスペンダブルズ2」だ。スタローンを始め、アーノルド・シュルツェネッガーやチャック・ノリス、ジャン=クロード・ヴァン・ダムといった錚々たるメンツが霞んでしまうくらいキレッキレのアクションを見せるステイサムが超カッコいい。
ステイサムのアクション(エクスペンダブルズ2編)


②エクスペンダブルズ4:ニュー・ブラッド(2023)
 「エクスペンダブルズ」シリーズの最新作で、つい最近手に入れたのがこの「エクスペンダブルズ4」だ。“興行収入が悪かった” だとか “ラジー(最低映画)賞にノミネートされた” だとか “スタローンがあんまり出てこない” だとか前評判は散々だったが、私としては頭を空っぽにして楽しめる愛すべき作品として素直に楽しめた。冒頭でいきなりスタローンが爆死する(←もちろん偽装だが...)というストーリーのため完全にステイサムが主役の映画になっているが、だからこそステイサム好きにはたまらない逸品なのだ。ミーガン・フォックスやトニー・ジャーらが演じる新キャラも実に良い味を出しているし、随所に散りばめられたユーモアのセンスにも大笑いさせてもらった。
ジェイソン・ステイサム vsイコ・ウワイス、“最強”同士の戦いが実現! 映画『エクスペンダブルズ 』本編映像解禁


③ワイルド・スピード7:スカイ・ミッション(2015)
 「エクスペンダブルズ」と並んでステイサムを語る上で欠かせないのが「ワイルド・スピード」(原題は「Fast & Furious」)だ。「ワイスピ」は全10作品が出ている超人気シリーズで、ステイサムは7作目の「スカイ・ミッション」に前作の敵役であるオーウェン・ショウの兄デッカード・ショウとして登場し、たった一人でDSS本部に乗り込んでオフィスを破壊しロック様演じるホブスに重傷を負わせるわ、ドミニクのファミリーを爆殺しようと企むわとまさにやりたい放題の大暴れ。中でも私の一番のお気に入りはホブス役のロック様との意地の張り合いで、何かもう子供のケンカみたいなバカバカしさに大笑いさせられる。ファンの間で “夫婦漫才” とすらいわれる二人の掛け合い(?)はワイスピに無くてはならないコミカルな要素になっている。「キースムーン」と「ミックジャガー」にもクソワロタwww
【Fast & Furious 】 夫婦漫才はここから始まったwwww 【ワイルドスピード】


④ワイルド・スピード8:アイス・ブレイク(2017)
 この作品のステイサムは脇役的なポジションなので出番はそれほど多くはないが、出てきた時のインパクトが強烈なので私的には何の問題もない。大量破壊兵器強奪犯の濡れ衣を着せられて刑務所に入れられたロック様の向かいの房に入っていたのが前作「スカイ・ミッション」でホブスに逮捕されて収監中のステイサムという美味しすぎる設定で、お約束の意地の張り合いから脱獄までの一連のシーン、そして母親のマグダレーン・ショウ(←名女優ヘレン・ミレンが実に良い味を出している...)の仲介でファミリーと和解したデッカードが敵の飛行機に侵入してドミニクの息子を救出するシーンのアクション・シークエンスがたまらなく好きだ。
赤ちゃんを救出するステイサム(ワイルドスピード・アイスブレイク)


【おまけ】
 ステイサムの魅力を凝縮したような米通信大手XfinityのCMがこれ↓。色々突っ込みどころ満載で、もう笑うしかない。
もしハイジャックした飛行機にステイサムが搭乗していたら

「スター・トレック: ストレンジ・ニュー・ワールド」

2024-08-04 | TV, 映画, サントラ etc

 私はネット配信がどうも肌に合わず、今でもレンタルDVD屋を利用している古いタイプの人間である。この前たまたまゲオに寄って “何かエエのんないかなぁ...” とレンタルDVDを物色していた時のこと、お目当てのアクション物に目ぼしいのがなくて “今日は空振りか...” と諦めて帰ろうとした時に偶然目に留まったのが「スター・トレック: ストレンジ・ニュー・ワールド」の日本版DVDだった。
 スター・トレックのテレビ・シリーズとして8作目にあたるこの作品は2022年5月に本国アメリカで配信が開始された最新作で、今現在も第3シーズンが製作中。去年の3月にシーズン1のUS版ブルーレイが発売された時にすぐ買おうと思ったが、日本語吹き替えが収録されていないのを知って(←他のシリーズはUS版にも日本語音声入ってたのに...)購入を思いとどまった。「スター・トレック」は声優さんの個性も重要な要素のひとつなので、日本語吹き替えが無いとその魅力が半減してしまうからだ。それ以来、私は定期的にパラマウントのリリース情報をチェックしていたのだが中々出ないので、ひょっとすると最近増えてきた “配信オンリー” パターンなのかと誤解して、この数ヶ月ほどはチェックをサボっていた。
 それがいきなりレンタル屋で見かけたものだからビックリ。全く予期していなかった私は大コーフンし、その場でシーズン1の5枚全部を借りることにした。セット割とやらのおかげで安く借りれてラッキーだったが、私はその5枚全10話を2日間で一気見し、あまりにも面白かったのでネットで調べてみたところ既に日本版ブルーレイが発売されていたので即購入。ということで今日はスター・トレックの最新テレビ・シリーズ「ストレンジ・ニュー・ワールド」シーズン1のブルーレイ・セットを取り上げる。
『スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド』2024年6月21日(金)Blu-ray&DVDリリース!


 私がこの作品で気に入った点はまず、スタトレの原点に立ち返って “一話完結” スタイルで作られていること。確かに連続したストーリー仕立ての「ディスカバリー」も「ピカード」も “この続きは一体どうなるんや?” というハラハラドキドキ感はハンパなかったが、スタートレックと言えばやはりわずか50分の中で見事に起承転結を描き最後はキッチリとオトシマエをつける “わかりやすさ” が一番の魅力だろう。ファンの間で絶大な人気を誇る「オリジナル・スター・トレック」(TOS)も「新スター・トレック」も基本的には “一話完結” スタイルだし、賛否両論あった「エンタープライズ」だって “時間冷戦” などという糞みたいなコンセプトから解放されて原点回帰した第4シーズンが傑作揃いなのはそのせいだろう。
 この「ストレンジ・ニュー・ワールド」は「ディスカバリー」のスピンオフ作品として作られており、シーズン2のラストでディスカバリー号が未来へと飛び去った後に残されたパイク船長やスポックがエンタープライズ号で繰り広げる冒険を描いているので、時系列的に言えば「ディスカバリー」と「オリジナル・スター・トレック」の間に位置するわけだが、既出の作品との整合性がしっかりと取れているのはさすがの一言。これって簡単そうで実はかなり難しいことで、細部に至るまできっちりと設定を決めてかからないと辻褄が合わなくなりワケが分からなくなってしまう。その悪しき例がディズニーが作った新しい「スター・ウォーズ」で、珍奇な後付け設定を連発した結果、ルーカスが作ったオリジナルの「スター・ウォーズ」とは全く別物になってしまい(←フォースがただの魔法になっとる...)、旧来のファンからそっぽを向かれたのは周知の事実だが、SF界におけるもう一方の雄である「スター・トレック」シリーズはそれとは対照的に実に巧くストーリーが練られている。
 そしてその脚本がまた粒揃いの秀作ばかりときているのにも恐れ入る。各エピソードにはオリジナル・シリーズへのオマージュと思しき要素が随所に散りばめられていて、過去の作品を知っていればいるほど面白味が増すという好循環なのだ。例を挙げると、シーズン1最終第10話の「情けの価値」は「TOS」シーズン1第9話「宇宙基地SOS」への見事なオマージュ作品としてトレッキーには必見の神回だし、第5話「スポックの混乱」ではスポックと婚約者トゥプリングの魂が入れ替わってしまうというスタトレお約束のネタがクッソ面白くて腹を抱えて笑ってしまった。更にダメ押しとばかりにウーナとラアンの “エンタープライズ・ビンゴ” の小ネタをブッ込んでくるユーモアのセンスもスタトレならではだ。
Best Scene - Pike Meets Captain Kirk + Romulan Attack • Star Trek Strange New Worlds S01E10

Balance of Terror (part 2 of 7) Star Trek TOS 1966 1967 1968) #startrek #sciencefiction #spock


 各登場人物のキャラが立っていて感情移入しやすいのも重要なポイントだ。「エンタープライズ」や「ディスカバリー」はその点がイマイチだったが、この「ストレンジ・ニュー・ワールド」ではパイク船長とスポック以外のニュー・キャラもそれぞれが魅力的な存在として活き活きと描かれている。有能を絵に描いたような副長ウーナや数奇な過去を持つ保安主任のラアン、職人肌のイーナー人機関主任へマー、良きパパでもある医療主任ドクター・ムベンガ、竹を割ったような性格の操舵手オルテガスと、実にわかりやすいキャラ設定なのだが、古くからのファンとしては「TOS」に出ていた通信担当のウフーラや看護師のクリスティン・チャペル、そしてカーク船長の若かりし頃の姿がしっかりと描かれているのが何よりも嬉しかった。
 60年前にジーン・ロッデンベリーが製作した「TOS」路線への原点回帰というコンセプトの下、ユニークなキャラクター達が繰り広げる人間ドラマを実に魅力的に描いたこの「ストレンジ・ニュー・ワールド」、シーズン2ブルーレイの発売が今から待ちきれなくなってきた。
Star Trek: Strange New Worlds Season 2 Trailer