shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

津軽より愛をこめて / 小山貢・豊 Dr.K Project

2008-11-05 | エレキ・インスト
 カヴァーを成功させるには、素材を完全に自分のモノにしてしまう鋭いセンスと高い音楽性が要求される。確かなテクニックと適度な遊び心、そして何よりもカヴァーする対象へのリスペクト・愛情がモノをいう。それらが音楽的に高い次元で結びつくと、カヴァー・ヴァージョンの傑作が生まれることになる。
 ドクターKこと徳武弘文率いる Dr.K Project は日本のエレキインスト・バンドの第一人者で、これまでデル・シャノンの「太陽をさがせ!」からかぐや姫の「神田川」まで、ありとあらゆる素材をテケテケ化してきたが、ここでご紹介する「津軽より愛をこめて」はそれらを遥かに超える強烈なインパクトで迫ってくる。何と言っても副題が「津軽三味線 play ザ・ベンチャーズ」なのだ!エレキギターと三味線の共演といえば67年の寺内タケシと三橋美智也のコラボレーションによる「津軽じょんがら節」と「黒い瞳」が思い浮かぶが、あれから40年の時を経て、今回はアルバム丸ごと、それもすべてベンチャーズ・ナンバーというから興奮するなという方が無理な話だ。しかも津軽三味線は小山流家元(!)の小山貢師とその息子さんが親子で担当、①Caravan ではまだ軽い手合わせ程度のノリだったのが、②Diamond Head では「リード・三味線」と化して大暴れ(笑)、完全に主役の座を奪ってしまう。③Pipeline でもあのメロディーを津軽三味線で忠実に再現、間奏部分のたたみかけるようなノリがメチャクチャ楽しい。④Cruel Sea や ⑤Secret Agent Man では三味線とエレキギターが見事に一体化して独特なグルーヴを生み出しており、何より彼らが心から楽しみながらプレイしているのがダイレクトに伝わってきて聴いてるこっちまで楽しくなってくる。⑥Bulldog では掛け声を発しながらノリノリでホットな三味線・ソロをぶちかます小山師が最高だ。例の耳だこ・メロディーが三味線で演奏されると実に新鮮に響く⑧Walk Don't Run'64、まるで最初から三味線用の曲だったかのような違和感のなさに唖然とさせられる⑪Driving Guitars、そしてここまでやるかの徹底振りに頭が下がる思いの⑫Ventures Medley、ホンマにみんなベンチャーズ好きなんやね(^_^) ⑭Kickstandではもう笑うしかないほど三味線がピッタリとハマッてて、そのアレンジ・センスはさすがという他ない。こういう盤を肩肘張らずに面白がって楽しめる心の広い音楽ファンでよかったなぁ、と思う今日この頃である。