shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「ヘイ・ブルドッグ」 祭り①

2024-09-29 | Beatles Tribute

 この前の3連休にレコード棚を整理していたら突然頭の中で「Hey Bulldog」のへヴィーなイントロが鳴りだした。ある時は「Roll Over Beethoven」だったり、ある時は「Money」だったりと、アグレッシヴなロックンロール曲が脳内リフレインして止まらなくなるのは特に珍しいことでもないので、“今日はブルドッグが来たか…” くらいに軽く考えていたのだが、このブルドッグ熱は連休が終わっても収まるどころかますます高まっていって一向に止む気配がない。ということで、このブログでも手持ちのレコードやCDの中から色んなカヴァーを集めて “ブルドッグ祭り” をやることにした。

①Gods
 ミック・テイラーやグレッグ・レイクが在籍していたことでも知られるイギリスのロック・バンド、ゴッズはユーライア・ヒープのプロトタイプともいえるグループで、そのサイケでポップなサウンドが売りなのだが、そんな彼らが1969年に3rdシングルとして出したのがこの曲。本家と同じ1969年のリリースということで、私の知る限りでは最も古いブルドッグ・カヴァーだ。基本的には原曲に忠実なアレンジになっているが、要所要所でブラスが絡んでくるところがユニークな珍品ブルドッグ。因みにこのふざけたジャケットの国内盤シングルは激レアらしく、その筋では5万円以上で取り引きされているようだ。
The Gods - Hey Bulldog.wmv


②Fanny
 70's USガールズ・ロック・バンドのパイオニア、ファニーが1972年にりプリーズ・レコードからリリースした3rdアルバム「Fanny Hill」でカヴァーしていたのがコレ。ロンドンのアップル・スタジオでの録音というところにも彼女らの拘りとビートルズ愛が感じられるが、何よりも奇をてらわずにひたすらストレートアヘッドな演奏を展開しているのが◎。
Fanny - Hey Bulldog


③Diamond Club
このダイアモンド・クラブの「Hey Bulldog」は YouTube で見つけて一発で気に入ったもの。ノリノリの演奏がプリミティヴなロックンロールの初期衝動を強烈に感じさせてくれるのがたまらんたまらん(≧▽≦)  ゴツゴツした岩のようなリズムに乗ってやんちゃなギターがカッコ良いフレーズをキメまくるところに揺るぎないロック魂を感じるし、本家へのリスペクトを感じさせるビデオ・クリップも大好きだ。この勢いでビートルズのロックンロール・ナンバーをカヴァーしたフル・アルバムを出してくれへんかなぁ...
Diamond Club - Hey Bulldog


④Beat Bugs
 「ビート・バグズ」はビートルズの名曲を口ずさみながら裏庭で暮らす虫たちの世界を描いたNetflixの子供向け番組で、そのサントラCDに入っていたのがこのブルドッグだ。対象年齢が低いので原曲の持つ重金属のようなヘヴィネスを期待するのは野暮というもの。ここは童心に帰って楽しいミュージック・ビデオを楽しむのが正解だろう。それにしても幼いうちからこんな形でビートルズ・ミュージックに親しんで成長していく子供達は幸せやなぁと思った。
Beat Bugs - Hey Bulldog Full Music Video

901さんとの夏会 '24 ③ ~エヴァンスの「枯葉」祭り~

2024-09-23 | Jazz

私:いよいよエヴァンスいきましょか?
901さん:じゃあまず最初にフォンタナ盤からお願いします。
私:前に「Explorations」聴かせてもろうた初期国内盤2枚組のヤツですね。
901さん:そうそう、音を褒めてもろうて嬉しかったなぁ。
私:国内盤やからどうせ大したことないやろうと思ってたので、めっちゃ音が良くてびっくりしたんです。エヴァンスってどうしてもオリジナル盤に人気が集中してしまうでしょ。せやからこんなん持ってる人、中々いてへんのとちゃいますか?
901さん:いやいや、それが最近結構人気が出てきてて、1万円以上するらしいですよ。僕は難波のビッグピンクで800円で買いましたけど。
私:え~、800円ですか! でも大坂さんやったら国内盤ちゅーことでそんな値付けしやはるかもしれませんね。ビッグピンク、懐かしいなぁ... 【♪~】やっぱりエエ音してますね。
901さん:エエよね。じゃあ次はオリジナルのステレオ盤を聴かしてもらえる?【♪~】これはかなり違うなぁ。
私:ビックリするほど違いますね。何か別テイク聴いてるみたいな感じで、こっちはエヴァンスが主役、っていう感じの音作りになってる。ラファロもモチアンも大人しいっていうか、遠慮してるようなトリオのバランスになってますね。
901さん:ベースの音なんか明らかにフォンタナ盤の方が大きいねぇ。
私:もう1回フォンタナ盤聴きましょう。【♪~】うわぁ、やっぱり全然違う! モチアンのドラムの音が大きいし、ベースも強い。三位一体のエバンス・トリオのエッセンスを満喫できるダイナミックな音作りですよ。国内盤でこの音が聴けるって凄いです!
901さん:確かに違うなぁ。
私:今気ぃ付いたんですが、ランアウト(無音部分)の幅がオリジナル盤の方が広いでしょ。っていうことはつまり音溝のエリアが狭いってことで、オリジナル盤がエネルギー感で国内盤に完全に負けてるのも説明が付きますよ。
901さん: なるほどなぁ。それにしても何かすごいことになってきたなぁ...
私:それにマトリクスが手書きと機械打ちというのも違いますね。
901さん:よぉ気ぃ付いたねぇ。
私:ランアウトとかマトリクスとかはビートルズで徹底的に鍛えられましたから。おかげでレコードを手に取ったらすぐに目が行くようになっちゃいました...(笑)
901さん:じゃあ次は “ビル・グラウアー消し” の怪しいやついきましょう。【♪~】音が鮮明やね。
私:どこをどう聴いてもオリジナル盤の音が一番ショボイですやん。これはショックですわ。
901さん:この “ビル・グラウアー消し”盤もエエ音やね。せっかくやからCDも聞かしてくれる?
私:もちろん。
901さん:おぉ、僕の持ってるのと同じ20ビットのヤツや。【♪~】CDもエエ音しとるね。もう何やわからんようになってきたなぁ。これやったらCDで十分な気がしてきたわ...(爆笑)
私:ハハハ... ホンマにそうですね。もう1回オリジナル盤いいですか?
901さん:どうぞどうぞ。
私:モチアンが明らかに遠いし、ラファロも迫力不足ですね。
901さん:モチアン遠いなぁ。そういえばプロデューサーのオリン・キープニューズが書いたエヴァンスの18枚組(!)LPのブックレットの解説に、“「Portrait In Jazz」の録音当時は 9:1 の割合でモノラルが主流で、ステレオ録音の技術はまだ稚拙だった...”って書いてあったのを思い出しましたわ。だからやっぱりこれがオリジナル盤の音なんですよ。これが当時のステレオ録音の音で、その後技術が発達してビル・グラウアー消し盤やフォンタナ盤のバランスになったんとちがいますかね。
私:なるほど、それなら辻褄が合いますね。エエ勉強になりましたわ。オリジナル盤至上主義者の人らは納得いかんかもですけど、スピーカーから出てくる音はウソをつきませんからね。音圧も、音のバランスも、すべての面でオリジナル盤の完敗ですよ。せっかくやからついでにオリジナル・モノラル盤も聴きます?
901さん:もちろん!【♪~】うわぁ、迫力が全然違うわ。これがキープニューズが目指した音なんやね。
私:モノラル盤の圧倒的なパワーがステレオ盤の音の違い云々を一掃しちゃった... まさにそんな感じですね。
901さん:いやぁ、今日は内容が濃いなぁ... (≧▽≦) じゃあ最後にペッパーの「ベサメ」をお願いします。
私:どうぞ。【♪~】
901さん:うわぁ、やっぱり凄い音しとるなぁ。あの値段でこの音を手に入れはったのは価値あるね。
私:はい、このえげつない音の圧力、もう最高ですわ。
901さん: 実は僕もペッパーのオリジナル盤手に入れましてん。前々から「イントロのペッパー」を手に入れたかったんやけど、Shiotchさんの持ってはる盤よりも状態の良いのって多分出てけぇへんやろうし、出たとしてもそんなん物凄い値段になるやろうし。それやったらここで聴かせてもらおうと思って...(笑) で、「イントロのペッパー」を諦めたんで、その資金を回してこれ買いましてん。聴かはる?
私:おぉ、ディスカバリーの10インチ「Art Pepper Quintet」やないですか! この意味不明なジャケット、雰囲気あってエエですよね。実は僕も半年ほど前にイーベイで見つけて、買おうかどうか迷ってる間に売れちゃったんです。確か35,000円ぐらいやったかな。ディスカバリーの10インチは盤の材質のせいかノイズがあるって聞いてたので腰が引けちゃったんですよ。
901さん:確かにノイズありますね。
私:でもこの程度のノイズなら十分許容範囲内ですよ。僕も買おうかな。
901さん:いやぁ、今日も凄い音のレコードがいっぱい聞けてよかったですわ。次は11月にやりましょうか。
私:いいですね。“秋会” を楽しみにしています。

901さんとの夏会 '24 ② ~コテコテのブルース大会~

2024-09-19 | Jazz
901さん:実は今日はブルースのレコードも何枚か持って来たんやけど、聴きます?
私:聴きます聴きます!
901さん:これです。「Berlin Festival/Guitar Workshop」。学生時代にジャズ喫茶で聴いて衝撃を受けたんですわ。もう50年ぐらい前かなぁ。このバディ・ガイがめちゃくちゃエエんですよ。バーニー・ケッセルもジム・ホールも霞んでしまうくらい凄いギター。僕が今日持ってきたのはSABAのオリジナル盤なんやけど、ヤフオクで500円ぐらいでしてん。
私:うわ~、SABAのオリジナル盤でその値段って信じられへん安さですやん!
901さん:でしょ? とにかくこのレコードを聴きまくって、それからバディ・ガイの他のレコードも買うたんやけど、そっちの方は管が一杯入っててにぎやかすぎて、自分にはちょっと違うなぁっていう感じでね。その点このレコードはバックがジャズの人やから、そのあたりのサジ加減がちょうどエエ按配なんでしょうな。
私:なるほど。確かにここではギターが際立ってますもんね。めっちゃカッコ良い演奏ですやん。
901さん:B面のバーデン・パウエルも凄いんよ。バックがついていけてへんもん。
私:うわぁ、コレは凄まじい。
901さん:このレコードはバディ・ガイとバーデン・パウエルを聴くためのレコードやね。拍手もめっちゃキレイな音で入ってる。拍手の音では№1のレコードかも...(笑)
私:臨場感がヤバいですね。
901さん:この前持って来た「花嫁」覚えてはる? 歌のない歌謡曲みたいなやつ。
私:もちろん、覚えてますよ。
901さん:とても同じ人とは思えへんよね。そういうことに無頓着で、頼まれたら何でもやる人らしいけど。とにかくこれは知る人ぞ知るレコードやね。じゃあ次もブルースいきましょうか。
私:どーぞどーぞ。
901さん:ライトニン・ホプキンスの「Texas Blues Man」です。最初に買った東芝盤と後になって手に入れたオリジナル盤をここの装置で聴き比べてみとうてね。東芝盤も悪くはないけど音が違うんですよ。
私:じゃあまず東芝盤からいきますね。【♪~】これ、結構エエ音してますやん。
901さん:東芝盤、ココで聴くとエエ音しとるなぁ...
私:次はオリジナル盤いきます。【♪~】
901さん:やっぱり違うなぁ... (スピーカーの前中央を指差して)ここにホプキンスおるわ。凄い音や... (と大コーフン)
私:リアリティっていうか、とにかく生々しさがハンパないですね。
901さん:せやね。じゃあ次はこの人の最高傑作って言われてる「Mojo Hand」を。こっちはリズム・セクションが付いてて何ていうかドロっとした感じ。僕が持ってきたのは再発盤やけど、オリジナルはイントロのペッパー並みの値段するらしいんですわ。
私:へぇ~、ブルースの世界にもそういう超高額盤ってあるんですね。
901さん:どのジャンルでも自分との相性ってあると思うんやけど、ブルースでは僕にはこの人が一番合いますねん。南部のホームレスの人が道端で歌ってるようなブルースってよぉありますやろ? あーゆーのは僕には濃すぎてちょっと無理ですわ。
私:なるほどね。一口にブルースっちゅーても幅広いですからね。
901さん:じゃあ次はホプキンスで一番良く聴いてるやついきましょうか。プレスティッジ系のブルースヴィル・レーベルから出てるオムニバス盤「The Best Of Lightnin' Hopkins」。A面1曲目の「Happy Blues For John Glenn」お願いします。
私:これ、良いですね。ブルース素人の私にも聴きやすいです。
901さん:ちょっと前にブルースのガイド本を探してて、小出斉っていう人の書いた本を買ったんやけどね、たった一人でレコード1,000枚ぐらい書いたはるの、凄いと思うわ。ちゃんと聴いてないと書けへんような内容の本で、めっちゃ役に立ってますねん。
私:その本、今調べてみたらアマゾンやメルカリで4,000円もしてますやん。CDのガイド本でこの値段は凄いですね。
901さん:これ聴いてたら改めてホプキンスええなぁって思いましたわ。「Mojo Hand」のオリジナル盤買っちゃおうかな(笑)  (つづく)

901さんとの夏会'24 ① ~「Careless Love」特集~

2024-09-15 | Jazz Vocal
 3連休初日の昨日、うだるような暑さの中を901さんがレコードをたくさん抱えて我が家へ遊びに来て下さった。今年のゴールデン・ウイークに再開したオフ会の第2回目、“夏会 '24”である。今回のテーマは①スタンダード曲「Careless Love」聴き比べ、②ビル・エヴァンスの「Portrait In Jazz」聴き比べ、③「タンパのペッパー」を大音量で聴く... の3つだが、あとはその場の気分次第で何でもアリなのがこの会の良いところだ。

901さん:Shiotchさん、「Jazz Vintage Vinyl Want List」て知ってはる?
私:いいえ、知らないです。
901さん:ディスクユニオンが出してる廃盤買い取りリストなんやけど、ネットでも見れるから「Vol. 13」で検索してみて。ちょうどペッパーが特集されてるんよ。例の「タンパのペッパー」の買い取り価格が22万円やて!
私:ひょえ~、買い取りがそれやったら売り値は一体いくらぐらいになるんでしょうね? 普通は買い取り価格の3倍っていうのが目安でしょ?
901さん:そらもう数十万円はいくんとちゃう? “美品で楽譜2枚付き” やからそれだけの値段なんやろけどね。このレコードに元々楽譜が付いてたなんて、知ってはった?
私:楽譜の存在は知ってはいましたが、もちろんネットオークションでも見たことないです。まぁ自分は “生々しい音さえ聴ければ付属物なんて要らない派” なので楽譜には全然興味ないですけど。
901さん:でもShiotchさんお持ちの「イントロのペッパー」も買い取り22万円やし、そんな凄い盤をここの装置で聴かしてもらえるのホンマにありがたいですわ。
私:こちらこそ、901さんとアレやコレや喋りながらレコード聴くの、ホンマに楽しいんで。いつでも来て下さいや。
901さん:それと、「Vol. 12」の冊子がウチに2つあったので1つ差し上げようと思って持ってきましてん。モンクの特集ですわ。
私:うわぁ、ありがとうございます。貧乏なんで高いのはホイホイ買われへんけど(笑)こういうのは見てるだけで楽しいんでじっくり読ませてもらいます。それじゃあ早速「Careless Love」の特集から始めましょうか。
901さん:僕はちょっと変化球から行きますわ... レイ・チャールズの「Modern Sounds In Country And Western Music」です。
私:変化球どころか、いきなりド真ん中の直球ですやん。
901さん:この曲の次に入ってる「愛さずにいられない」はマーティ・ペイチが編曲やってますねん。
私:あの人、ピアニストというよりもアレンジャーの色が強いですからね。じゃあ私はナット・キング・コールで。「St. Louis Blues」っていうレコードです。
901さん:おお、これは珍しい。W.C.ハンディの曲をやってるんやね。
私:コールはハンディ役で彼の伝記映画に出てるんで、それでこのレコードを吹き込んだんでしょうね。あまり有名なレコードじゃありませんが、結構良いですよ、これ。
901さん:僕が次に出そうと思ってたレコードは「Louis Armstrong Plays W.C. Handy」なんやけど、このキング・コール盤と同じ曲が一杯入っる。「ハンディ集」が続くってすごい偶然!
私:ホンマですね。それにしてもレイ・チャールズに続いてサッチモって王道中の王道ですね。
901さん:まさに大御所やね。サッチモはあんまり聴かへんのやけど、こうやって聴くとやっぱりエエねぇ。音の張りが違うわ。モダン・ジャズにはない何かがあるねぇ。キング・コールとサッチモ続けて聴けるとこなんて、中々ないで。
私:ハハハ、確かに。じゃあ私も古いところでリー・ワイリーでいきましょうか。彼女のSP音源を集めた「Unforgettable」っていう国内盤コンピレーションなんですけど、温かみのある良い音がするので大好きなレコードです。
901さん:これは参りましたやなぁ。Shiotchさん、オリジナル盤だけやのうてこういうレコードもちゃんと聴いてるの、ホンマにエライと思うわ。昔、僕の友達がジャズの集まりに行ったんやけど、帰ってきて“二度と行くか!”って怒ってたんで何故か聞くと“オリジナル盤の自慢話ばっかり聞かされて気分悪かった” んやて。
私:わかります。そういう人、いっぱいいてますよね。まぁ自分はオリジナルかどうかよりも良い音で鳴ってくれるかどうかが大事なんで。生々しい音が聴けるんやったら2ndでも国内盤でも何でもエエんですわ。
901さん:なるほど。じゃあ次はインストでいきましょか。チェコのナイポンク・トリオ。これ十何年か前にイーベイで買ったんやけど、売り手がこのCDのプロデューサーで、“日本にいるあなたがよくぞこのCDを見つけてくれました...” っていうお礼のメモがCDと一緒に入っててビックリしましてん。どう、これ?
私:ヨーロッパとは思えないブルージーなピアノですね。こういうピアノ、大好きですわ。
901さん:正直言うて澤野のピアノトリオはもうウンザリ。どれを聴いてもみんな同じに聞こえるんで。こういうピアノトリオ出さんかい、って思うわ。
私:僕もあの金太郎飴みたいなピアノトリオには魅力を感じませんね。ジャズ・ピアノは黒人のグルーヴィーなノリが一番ですよ。ジョン・ライトとかジュニア・マンス系のヤツね。このピアノはまさにボビー・ティモンズ・リスペクトですね。
901さん:ホンマにこれよぉ聴いたわぁ。ジャズ・ピアノはこう弾けよ、っていう感じ。
私:何がきっかけでこれ見つけはったんですか。
901さん:実はこのジャケットなんですよ。
私:へぇ~、ヨーロッパのピアノトリオCDをジャケ買いってすごいですね。それじゃあ私は雰囲気をガラッと変えてコニー・フランシスの「Sings Folk Song Favorites」。
901さん:へぇ~、こんなとこに入ってんの? フォークソング集か。歌上手いねぇ。胸がすかっとするねぇ。コニー・フランシス一杯持ってはるの?
私:いえ、コニーはアルバムよりもシングル盤中心で持ってます。見ます?
901さん:わぁ、ジャケット自前で作ってるの凄いなぁ。
私:シングル盤ってジャケットが無いとレコード棚から取り出す時に区別つきにくくてめっちゃ不便じゃないですか。それで同タイトルの国内盤シングルのジャケット写真をネットで拾ってきて自分で作ったんです。以前の職場にたまたま珍しい高性能レーザープリンターがあったのがめっちゃラッキーでした。残念ながら今はもう無理ですけど。
901さん:なるほど。じゃあ次はディジー・ガレスピーの「New Wave」。ボサノバ集の中に何故かこの曲が入ってるという... これもあんまり聴くレコードやないんやけどね。ボサノバのボラ・セチっていうギタリストがここではエレキ弾かされてるのが聴き所です。ボラセチのエレキってここでしか聴けへんのでめっちゃ貴重ですよ。私の「Careless Love」はこれで終わりです。
私:じゃあ僕はローズマリー・クルーニーの「Thanks For Nothing」を。ビッグバンドをバックにアップテンポで歌ってて、このノリの良さがめっちゃ好きなんですよ。
901さん:この人、ハリー・ジェイムスともやってましたよね。ええレコードやわ。ジャケットもええね。
私:ゴージャスでしょ。リプリーズ・モノラルのサンプル盤って珍しいんです。
901さん:リプリーズのインナースリーヴも貴重やね。
私:ハハハ、確かに。次はテディ・キングです。
901さん:よぉこんなんオリジナルで持ってはるねぇ。これもインナースリーヴ付きや(笑) それにしても何でこの曲をやったんやろねぇ?
私:テディ・キングはリー・ワイリー直系の上品で優雅な歌唱スタイルなのでレコード会社がワイリーの曲を選んだ、ってどこかで読んだ記憶があります。
901さん: なるほどなぁ、勉強なるわ。
私:次は思いっ切り変化球でディック・ミネ。
901さん:へぇ~、これ何年の?
私:1935年やったと思います。リー・ワイリー版のSPが出た次の年ですね。
901さん:エエ曲一杯やってるやん... よかったらついでにこの「君微笑めば」も聞かしてくれる? 【♪~】おぉ、ハワイアンやん! 録音状態エエねぇ。スチールギターにやられてしまうわ。この曲、次の時に特集やりませんか?
私:いいですね。めっちゃ好きな曲なんで。あと、リナ・ホーンも用意してたんですけど、リー・ワイリーやテディ・キングとキャラが被るんでスキップします。「Careless Love」のラストはジャニス・ジョプリンで。
901さん:へぇ~、こんなんあるんや。
私:まだメジャー・デビュー前の1963年にサンフランシスコのクラブでレコーディングされた音源なんですけど、ラッキーなことにサウンドボード録音なのでめっちゃ凄い音してます。
901さん:演ってる曲、全部ブルースやん。この人のルーツはこういうとこにあったんやね。この人がどうやって「サマータイム」に至ったか、よぉわかりましたわ。 (つづく)

The Hit Parade Ⅱ/ 松本孝弘

2024-09-09 | 昭和歌謡
 ウチのブルーレイ・レコーダーにはキーワードを登録しておくと関連番組をすべて自動で録画してくれるという便利な機能があって、情報収集が苦手な私は結構重宝している。少し前にNHKの「SONGS」という番組にB'zの松本さんが出演された回がハードディスクに録画されているのに気が付いて、“松ちゃんが単独でテレビに出てるやん!” と興味津々で見てみたところ、ソロの新作「The Hit Parade Ⅱ」のプロモーションということで様々な裏話に加えて新作から3曲も聞けて大喜びした。
【SONGS】「俺たちの勲章テーマ」~「傷だらけのローラ w/新浜レオン」 / 松本孝弘 フルVer.│NHK


 「The Hit Parade」と言えば彼が愛してやまない昭和歌謡の名曲の数々を独自のセンスでアレンジしたカヴァー・アルバムを2003年に17曲入りという大ヴォリュームの内容でリリースしているが、あれから約20年経った今、遂に「第2集」が出るというのだ。B'zと昭和歌謡の両方をこよなく愛する私にとって、コレはえらいこっちゃである。番組で披露されたのは「傷だらけのローラ」「六本木心中」「俺たちの勲章テーマ」の3曲で、そのどれもが心にビンビン響く素晴らしい演奏だったこともあって新作への期待が大いに高まった。ネットで調べてみると曲数は10曲と前作に比べて大きく減ってはいるものの、レコード世代の私としてはこれくらいがちょうど良い。しかもその10曲中6曲がオリジナル・シングル盤を持っている超愛聴曲という、私にとってまさにドストライクな内容なのだ。私は迷うことなくアマゾンで予約した。
Tak Matsumoto “THE HIT PARADE II” Introduction Video


 私がこのアルバムで一番気に入っているのはB'z稲葉さんが歌う世良公則の④「銃爪」だ。アルバムを通して聴けばわかるが、参加しているヴォーカリストの中では一人だけ格が違うというか、とにかく異次元の素晴らしさ(≧▽≦)  稲葉さんの “Yeah!” という掛け声からロックな空気が濃厚に立ち込め、一気呵成に聞かせてしまう超絶カッコ良いカヴァーで、ちょうど初期ビートルズの「Twist And Shout」や「Money」、「Rock And Roll Music」のように、カヴァーが原曲を超える稀有な瞬間を味わえる痛快無比なヴァージョンになっている。
 アルバムのオープニングを飾る邦楽史上屈指の大名曲①「六本木心中」も結構気に入っているトラックだ。LiSAという未知のシンガーが歌っていて、オリジナルのアン・ルイスの野太いシャウト・ヴォイスに比べると少し線が細く感じられるヴォーカルなのだが、それを補って余りあるハード・ドライヴィングなグルーヴが聴く者のロック魂に火をつける。特にバック・コーラスが “Don't you know...” とたたみかけてくる後半部の盛り上がりは圧巻で、さすがに1曲目に持ってくるだけあってグイグイ引き込まれてしまう凄まじい吸引力を持っている。
 盛り上がりという点では⑨「傷だらけのローラ」も負けてはいない。歌っているのは新浜レオンというこれまた初めて耳にするシンガーで、オリジナルの西城秀樹ヴァージョンへのリスペクトがダイレクトに伝わってくる熱唱が好感度大だし、何よりもバックの演奏が原曲の持っていた凄まじいまでのノリを見事に再現しており、21世紀に甦った昭和歌謡クラシックスとして聴きごたえ十分なトラックになっている。上記の「六本木心中」とこの「傷だらけのローラ」をテレビで披露したのも十分頷ける素晴らしいカヴァーだ。
 ⑩「俺たちの勲章テーマ」は松田優作と中村雅俊が主演の刑事ドラマの主題歌で、トランザムというバンドが吉田拓郎の「ああ青春」という曲から歌を抜いたインスト・ヴァージョンとしてリリースしたものがオリジナル。ここでは原曲にかなり忠実な演奏になっていて、松本さんの原曲に対する愛情・リスペクトがビンビン伝わってくるところがとても良い感じ。松田優作の大ファンでTVにかじりついてこの番組を見ていた私にとっては思い入れ一発で聴くトラックだ。
 GLAYのTERUが歌う③「洛陽」(吉田拓郎)と倉木麻衣が歌う⑥「ブルーライト・ヨコハマ」(いしだあゆみ)はまぁ及第点という感じ。どちらも決して悪くはないのだが、2曲共にオリジナル・ヴァージョンにおける歌い手と楽曲のマッチングが完璧すぎて、他の誰が歌っても私には上手なカラオケ・レベルにしか聞こえないのだ。オリジナルが超絶名演であるが故にカヴァーが難しいというのも皮肉な話で TERUと倉木麻衣には気の毒という他ないが、オリジナルとの比較云々を言わなければそれなりに楽しめると思う。
 オリジナル・ヴァージョンは好みではなかったのにこの「The Hit Parade Ⅱ」収録のカヴァーを聴いて好きになった “カヴァー冥利に尽きる” 掘り出し物トラックが⑤「Yes-No」だ。オリジナルはもちろんオフコースだが、実を言うと私は彼らの歌声が生理的に無理でこれまで良いと思った曲は1つも無いし、当然レコードも持っていない。だから聴く前は “オフコースかぁ...” と腰が引けていたのだが、いざ聴いてみるとこれがもうめっちゃ良くてビックリ。ヴォーカルを担当している山本ピカソ(←芸名がピカソって...www)という 女性シンガーの声質がコワイぐらいに原曲の旋律と合っていて、聴いてて思わず引き込まれてしまう。嫌いだったものを好きにさせてしまうという、カヴァーの鑑のような1曲だ。
 それとは真逆に、素晴らしいオリジナル・ヴァージョンが台無しの期待ハズレトラックが⑧「時の過ぎゆくままに」だ。この曲は私が敬愛するジュリーの楽曲の中でも断トツに好きなスーパーウルトラ愛聴曲なのだが、起用されている上原大史というシンガーの歌い方が暑苦しすぎて曲の良さが全く伝わってこないのが×。気合いが空回りしているというか、自己満足の素人カラオケを聞かされているような感じなのだ。ジュリーは絶妙なヴォーカルによって原曲の持つ哀愁を見事に表現していたが、この上原某にはそれだけの技量がなかった、ということだろう。この曲に関しては失礼ながら松本さんの人選ミスだと思う。
 残る2曲の②「木蘭の涙」と⑦「白い冬」はどちらも私の好みではないので何も言うことはないが、それでも全10曲の中から②⑦⑧を除いた7曲も傾聴に値するカヴァーが入っているというのは凄いことで、私はこの「第2集」と前作の「第1集」(→ZARDの「異邦人」とかもう最高すぎる...)から選りすぐった “The Very Best of The Hit Parade” をCD-Rに焼いて通勤時に車の中で聴きまくっている。やっぱり昭和歌謡はエエなぁ...
[TAK MATSUMOTO featuring ZARD] ♬異邦人

もう1つの「タンパのペッパー」、遂にゲット!②

2024-09-01 | Jazz
 盤質イマイチな「タンパのペッパー」を手に入れてからというもの、私はほぼ毎日のように盤に針を落として何とかノイズまみれのペッパーに自分の耳を慣らそうと努力したのだが、聴けば聴くほどノイズが耳についてしまい、却って逆効果に...(*_*)  Filler盤と割り切ってはいても、演奏内容が素晴らしいだけに余計にストレスが溜まってしまう。
 何とかならんもんかなぁ... と悶々としながら毎日過ごしていたのだが、値段が値段だけにそう簡単に買い替えれるレコードではない。どっかに “盤質良好でジャケットぼろぼろ” の「タンパのペッパー」が安く出てたらエエのになぁ... などと虫の良いことを考えながらダメ元で eBay に再び網を張ってみたところ、それから2週間ほどして “ジャケット無しで盤質VG+” という、まさに今の私にうってつけの盤が出品された。何というグッド・タイミング! 長いことレコード・コレクターをやっていると、数年に一度くらいの割合でこのような幸運に恵まれることがあるのだ。
 レコードの盤質は VG+ で superficial scuffs only(表面的な擦れキズだけ)と書いてあり、写真で見る限り問題はなさそうだ。BUY IT NOW で $120というお手頃価格だったが、オファーが可能だったので思い切って $100を付けたところ、数分後にOKの返事が返ってきてギャンブル大成功ヽ(^o^)丿  いくら超稀少な垂涎盤と言えど、やはりジャケ無しではコレクター諸氏から見向きもされなかったということだろう。そんな時に私という手負い(笑)のバイヤーが現れたので、双方ともにハッピーな Win-Win 取り引きとなった次第。あとは盤質がセラーの説明通りであることを祈るのみだ。
 それから約3週間して届いたレコードは、見た目はそれほどキレイではないものの大きな欠陥は無さそうだ。いつも以上に丁寧に超音波クリーニングしてやると盤面がかなりキレイになったので早速針を落としてみたところ、チリパチ音も十分許容範囲内で説明通りのVG+サウンドで、AB面共にストレスなく一気通聴できてホッと一安心。それにしても煩わしいノイズに邪魔されずに聴くオリジナル盤の爆音は何て気持ちが良いのだろう! 税関で引っ掛かって1,400円の関税を取られたこと(←今年に入ってこれで3回目なんやけど、最近取り締まりが厳しくなったような気が... 税金で持って行かれるのはホンマにムカつくわ!)を除けば文句ナシの良い買い物が出来た。
 結局先に手に入れたガチャ盤のジャケットにこのレコードを組み合わせて何とか満足のいく「タンパのペッパー」が完成した。2回の取り引きでかかった額は送料込みで$340+1,400円。円安が少しおさまったおかげで(←為替レートの変動は一体何がどーなってるのかサッパリわからん...)日本円にして約5万円でこの超稀少盤が手に入ったのだが、さっき調べてみたらDiscogs で VG盤が1枚だけ出ていて 20万円、eBayでも18万円で出ていたのを考えれば、手間はかかったけれど苦労した甲斐はあったと言うものだ。
Art Pepper Quartet - Bésame Mucho