shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「スター・トレック: ストレンジ・ニュー・ワールド」

2024-08-04 | TV, 映画, サントラ etc

 私はネット配信がどうも肌に合わず、今でもレンタルDVD屋を利用している古いタイプの人間である。この前たまたまゲオに寄って “何かエエのんないかなぁ...” とレンタルDVDを物色していた時のこと、お目当てのアクション物に目ぼしいのがなくて “今日は空振りか...” と諦めて帰ろうとした時に偶然目に留まったのが「スター・トレック: ストレンジ・ニュー・ワールド」の日本版DVDだった。
 スター・トレックのテレビ・シリーズとして8作目にあたるこの作品は2022年5月に本国アメリカで配信が開始された最新作で、今現在も第3シーズンが製作中。去年の3月にシーズン1のUS版ブルーレイが発売された時にすぐ買おうと思ったが、日本語吹き替えが収録されていないのを知って(←他のシリーズはUS版にも日本語音声入ってたのに...)購入を思いとどまった。「スター・トレック」は声優さんの個性も重要な要素のひとつなので、日本語吹き替えが無いとその魅力が半減してしまうからだ。それ以来、私は定期的にパラマウントのリリース情報をチェックしていたのだが中々出ないので、ひょっとすると最近増えてきた “配信オンリー” パターンなのかと誤解して、この数ヶ月ほどはチェックをサボっていた。
 それがいきなりレンタル屋で見かけたものだからビックリ。全く予期していなかった私は大コーフンし、その場でシーズン1の5枚全部を借りることにした。セット割とやらのおかげで安く借りれてラッキーだったが、私はその5枚全10話を2日間で一気見し、あまりにも面白かったのでネットで調べてみたところ既に日本版ブルーレイが発売されていたので即購入。ということで今日はスター・トレックの最新テレビ・シリーズ「ストレンジ・ニュー・ワールド」シーズン1のブルーレイ・セットを取り上げる。
『スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド』2024年6月21日(金)Blu-ray&DVDリリース!


 私がこの作品で気に入った点はまず、スタトレの原点に立ち返って “一話完結” スタイルで作られていること。確かに連続したストーリー仕立ての「ディスカバリー」も「ピカード」も “この続きは一体どうなるんや?” というハラハラドキドキ感はハンパなかったが、スタートレックと言えばやはりわずか50分の中で見事に起承転結を描き最後はキッチリとオトシマエをつける “わかりやすさ” が一番の魅力だろう。ファンの間で絶大な人気を誇る「オリジナル・スター・トレック」(TOS)も「新スター・トレック」も基本的には “一話完結” スタイルだし、賛否両論あった「エンタープライズ」だって “時間冷戦” などという糞みたいなコンセプトから解放されて原点回帰した第4シーズンが傑作揃いなのはそのせいだろう。
 この「ストレンジ・ニュー・ワールド」は「ディスカバリー」のスピンオフ作品として作られており、シーズン2のラストでディスカバリー号が未来へと飛び去った後に残されたパイク船長やスポックがエンタープライズ号で繰り広げる冒険を描いているので、時系列的に言えば「ディスカバリー」と「オリジナル・スター・トレック」の間に位置するわけだが、既出の作品との整合性がしっかりと取れているのはさすがの一言。これって簡単そうで実はかなり難しいことで、細部に至るまできっちりと設定を決めてかからないと辻褄が合わなくなりワケが分からなくなってしまう。その悪しき例がディズニーが作った新しい「スター・ウォーズ」で、珍奇な後付け設定を連発した結果、ルーカスが作ったオリジナルの「スター・ウォーズ」とは全く別物になってしまい(←フォースがただの魔法になっとる...)、旧来のファンからそっぽを向かれたのは周知の事実だが、SF界におけるもう一方の雄である「スター・トレック」シリーズはそれとは対照的に実に巧くストーリーが練られている。
 そしてその脚本がまた粒揃いの秀作ばかりときているのにも恐れ入る。各エピソードにはオリジナル・シリーズへのオマージュと思しき要素が随所に散りばめられていて、過去の作品を知っていればいるほど面白味が増すという好循環なのだ。例を挙げると、シーズン1最終第10話の「情けの価値」は「TOS」シーズン1第9話「宇宙基地SOS」への見事なオマージュ作品としてトレッキーには必見の神回だし、第5話「スポックの混乱」ではスポックと婚約者トゥプリングの魂が入れ替わってしまうというスタトレお約束のネタがクッソ面白くて腹を抱えて笑ってしまった。更にダメ押しとばかりにウーナとラアンの “エンタープライズ・ビンゴ” の小ネタをブッ込んでくるユーモアのセンスもスタトレならではだ。
Best Scene - Pike Meets Captain Kirk + Romulan Attack • Star Trek Strange New Worlds S01E10

Balance of Terror (part 2 of 7) Star Trek TOS 1966 1967 1968) #startrek #sciencefiction #spock


 各登場人物のキャラが立っていて感情移入しやすいのも重要なポイントだ。「エンタープライズ」や「ディスカバリー」はその点がイマイチだったが、この「ストレンジ・ニュー・ワールド」ではパイク船長とスポック以外のニュー・キャラもそれぞれが魅力的な存在として活き活きと描かれている。有能を絵に描いたような副長ウーナや数奇な過去を持つ保安主任のラアン、職人肌のイーナー人機関主任へマー、良きパパでもある医療主任ドクター・ムベンガ、竹を割ったような性格の操舵手オルテガスと、実にわかりやすいキャラ設定なのだが、古くからのファンとしては「TOS」に出ていた通信担当のウフーラや看護師のクリスティン・チャペル、そしてカーク船長の若かりし頃の姿がしっかりと描かれているのが何よりも嬉しかった。
 60年前にジーン・ロッデンベリーが製作した「TOS」路線への原点回帰というコンセプトの下、ユニークなキャラクター達が繰り広げる人間ドラマを実に魅力的に描いたこの「ストレンジ・ニュー・ワールド」、シーズン2ブルーレイの発売が今から待ちきれなくなってきた。
Star Trek: Strange New Worlds Season 2 Trailer
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