転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



今朝は、雪になった。
市街地でもこれだけ白くなったのだから、
山間部やそれに近い場所では、もっと積もったかもしれない。
寒い大晦日になった。
これから帰省なさる方々も多いと思うので、どうかお気を付けて。

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U女史がお元気だった頃は、いつも12月になると、
「今年のベスト5、書いて下さい」
とメールやお電話が来たものだった。
そうやって、常連の書き手から集めた原稿と、U女史ご自身のベスト5とを、
彼女が編集発行していた同人誌の年末号に載せるのが、恒例だった
(念のため、ここで言う『同人誌』とは、ごく古典的な意味での同人誌だ。
この季節、某所で大々的に販売されている『薄い本』のことではない)。

今年は、もう『ベスト5』とタイトルだけのメールが来ることもなく(笑)、
いきなり「もしもし?書いて下さい」と話の始まる電話もなかった。
そのために、私は随分と久しぶりに、……少なくとも15年ぶりくらいで、
自分の『ベスト5』をまとめないまま、年末を迎えてしまった。
仕方がないから、一年の最後の日のきょう、ここで地味にやることにしよう。

ちなみに、私の『ベスト5』はいつも、「感銘を受けた順」であって、
書こうと思ったとき、手帳もメモも何も見返さなくても、
自然に頭に浮かんで来る順番に5つ挙げれば、それで終了だった。
必ずしも、芸術的な価値があると思った順では無いし、
ましてや世間の反響がどうだったかには、全く関係がなかった。

それで行くと、今年のベスト5は、
1.ラドゥ・ルプー ピアノ・リサイタル(11月6日大阪いずみホール)
2.菊五郎×團十郎『身替座禅』(5月8日大阪松竹座)
3.エリザベート・ガラコンサート(11月28日梅田芸術劇場)
4.イェルク・デムス ピアノ・リサイタル(11月16日アステールプラザ)
5.田村響 ピアノ・リサイタル(2月25日高槻現代劇場)

この五つの公演は、叶うことならもう一度初めから観たい・聴きたい、
と今、心から思うものだ。
一度では観きれない・聴ききれないほどの舞台・演奏だった、
と思うものもあれば、あまりに長年の夢が叶った公演だったために、
一度味わったくらいではまだ足りない、と思うものもあった。
10月のエル=バシャも、ここに入るべき演奏会だったと思うのだが、
あの日は隣人に恵まれなくて(殴)、私の気持ちが逸れてしまい、
リサイタルまるまるひとつを無駄にしたとしか言えなかったので、
今回は選外にした。

そんなことより、なんでアレが入っとらんのか!?
と言われるものがあるのだが(^_^;、
イーヴォ・ポゴレリチはもう、私にとって、90年代から選外だ。
私は彼を、ほかのいかなる芸術とも同列には聴けない。
それほど彼が素晴らしい、と言いたいのではなくて、
聴き手としての私が、ポゴレリチに関してだけは、
付き合いの長さも思い入れの深さも、予備知識の量も、
全く他とは比較にならないところまで来てしまったので、
言ってみれば、どんな小さな音も針小棒大に私には響くのだ。
私は彼を、まっとうな状態で聴いていないと自分でも思っている。
だから彼は、もはやベスト5の枠外に居るのだ。

今年の彼の来日公演は私にとって信じられないほどのものだった。
ポゴレリチ・ファンとしては、私は、91年以来初めての、
良い意味で、呆然自失となるほどの演奏会を聴かせて貰うことが出来た。
去年のこの時期、5月の名古屋公演の告知があり、それの会員予約のため、
しらかわメイトの申し込みをして、会員証と公演チラシを受け取り、
嬉しく興奮したことを、今、懐かしいような気持ちで思い出している。
あのときはまだ、ポゴレリチが本当に来日するかどうかも、実は危ぶんでおり、
「すげー高いチラシ代だったよな、…てなことになりませんように」
と祈ったものだった(^_^;。
とんでもなかった。聴けて良かった。
予想を遥かに上回る、完璧に満足した公演だった。
あれほどのものが聴けるとは、去年のきょう、全く夢にも思っていなかった。
このように幸福な「予想外」もあったのだ。
生きて、道楽していると、こんな素晴らしいこともあるのだな……。

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こうして毎年、演奏会の思い出が次々と自分の中に残って行くのは
とても幸せで、恵まれた一年をまた過ごせたということだと思っている。
今年出会えた、すべての舞台・公演に感謝を捧げたい。
そしてこちらに来て下さって、私の戯れ言にお付き合い下さった皆様に、
心から、篤く御礼を申し上げます。
今年も、ありがとうございました。

皆様、良いお年をお迎え下さいませ。

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