12月14日のポゴレリチ東京公演を満喫するため、最近の私は予習に余念が無い。
リストのダンテソナタは田村響のCD(2009年11月録音)、
シューマン幻想曲はエリソ・ヴィルサラーゼのCD(1994年6月トゥレーヌ音楽祭ライブ)、
ペトルーシュカはアブデル・ラーマン・エル=バシャの
CD『Russian Virtuoso Piano Works』(2006年5月録音)、
という私にとってベストの面々によるディスクを連日聴いている。
よくもまあこれだけ、私の中でトップランクにいる弾き手が並んだものだ、
と改めてラインナップの自分的充実(笑)に感激した。
……裏を返せば、ポゴレリチの今回のプログラムはやはり凄いな(^_^;、と。
ブラームスのパガニーニ変奏曲だけは、私にとっての決定版という演奏が見当たらず、
思案の末、園田高弘『ブラームス・アルバム』を聴くことにした。
ベートーヴェンもそうだが、私にはいつも、迷ったときの園田先生(^_^;。
一般的な意味では、予習などしないでいきなり演奏会を聴くのでも良いのだが、
ポゴレリチに関しては、何らかの前提となる演奏を知ったうえで聴くほうが面白い、
と私は思っている(もちろん、人それぞれで良い。飽くまで私は、だ)。
ポゴレリチは多くの場合、私の先入観を良い意味で根こそぎにしてくれるので、
「うっ、そうか!!こんな曲だったのか……!!」
と息をのむ瞬間が幾度もあり、それが私には堪えられない快感(爆)となるのだ。
やはり、ポゴレリチを聴くなら、驚いてなんぼ、ではないだろうか。
最初から最後まで思った通りで、良かった良かったと納得して家路につく、
などという演奏会は、ポゴレリチがすっかり枯れるか私が尼僧のように悟るか、
何かよくよくのことが起こらないと、あり得ないだろうと思う。
ところで、前述のヴィルサラーゼのCDはライブのシューマンアルバムで、
『幻想曲』作品17に続き、アンコールとして演奏されたのであろう『献呈』が
最後に収録されている。
1970年に12歳のポゴレリチがモスクワから休暇で一時帰国したときに
ベオグラードで彼を特集するテレビ番組が制作されたことがあり、
そこで少年時代のイーヴォが演奏していた曲の中のひとつが、
このシューマン・リストによる『献呈』だった。
私の知る限り、1980年に演奏家としてデビューしてからのポゴレリチは、
公の場でこの曲を取り上げたことはない。
一方『幻想曲』は、これまでの三十年を超える演奏活動の中では一度も弾いたことがなく、
今シーズンのプログラムで初めて俎上に載せた曲だ。
『幻想曲』のすぐあとに『献呈』が続いているという曲順は、偶然なのだがまるで、
私の知る、最も新しいポゴレリチと、最も昔のポゴレリチが、並んでいるみたいに聞こえる。
作曲家の人生も演奏家の人生も、ヴィルサラーゼの懐の深い演奏に抱かれているようで、
こうして聴くと、実に感動的な幕切れだなと改めて思った。
……ということで、引き続き、予習を頑張ります。
ちなみに、この学習に関しては、試験が済んだら反芻はしても、復習はしない(爆)。
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