昨日13時の、花組大劇場公演千秋楽を観てきた。
行こうか行くまいかと相当迷ったのだが、
やはり『麗しのサブリナ』だから観てみたいと思ったし、
前日の通訳案内士試験で玉砕したのでキレた面もあり、決行(笑)。
『麗しのサブリナ』は、主演クラスに関してはとても良い出来だと思った。
映画の『麗しのサブリナ』やリメイクの『サブリナ』のどちらと較べても、
まとぶん(真飛聖)のライナスは若々しくて、設定に無理がなく、
しかも彼女らしい温かみがよく出ていて、魅力があった。
ただ私がひとつだけ疑問に思ったのは、このライナスは、
少なくとも私の目には、最初から少女のサブリナを優しく見守り、
意識はせずとも心のどこかで深い愛情を抱いていたように見えたのだが、
それは、まとぶんの計算なのか誤算なのか?という点だった。
台詞や歌詞の中では、脚本としてのライナスは、
『初めはなんとも思っていなかった。途中から恋に変わった』
という意味のことを言っていたのだが、まとぶんライナスは、
周囲が言うような仕事一筋の固い男には全然見えず、
最初からサブリナに心惹かれていたように見えた。
パリから戻って美しい女性に変身したサブリナを見たときも、
デイヴィッド(壮一帆)が、彼女の現在の美貌のみに惹かれたのとは違い、
まとぶんライナスは、以前のサブリナを思い、その成長も含めて胸を打たれた、
つまり、もう愛していた、……というふうに見えた。
ただ、彼は仕事のできる、理性的な男だったから、
こんな恋などあってはならないと思い、自分で自分を相手にしなかった。
だから、弟の代理と称してパーティーの夜、サブリナに近づき、
弟のかわりにと、彼女と乾杯し、ふたりで踊り、キスを交わす場面も、
ライナスが自分を制御しつつ、言葉にできない思いを遂げている、
と私には思われてならなかった。
そうなってしまうのは、まとぶんの持ち味のせいもあったかもしれない。
彼女は何を演じても、「華やかな、イイ人」が出てしまうからだ。
ある意味、正しい「宝塚の二枚目スター」だとは思うのだが、
それは『サブリナ』のライナスとして良いのか悪いのか?
というのが、私は見ながら終始、疑問だった。
映画のボギーも、このあたりは曖昧な演じ方だったように私は思うのだが、
オリジナルな意味でのライナスは、大人になったサブリナを目にして、
果たして、恋心が最初からあったのか、なかったのか。
あったとしたら、その恋の始まりは、
サブリナが少女だった頃まで遡れるものだったか、どうか。
映画より、まとぶんライナスのほうが、物語としての筋は通っていたと思う。
まとぶんが脚本を自分の演技の範囲で改定して、確信犯的にやったことなら、
もう、畏れ入りました、と言うしかないのだけど(笑)。
デイヴィッド(壮)は、格好良くて頭が軽くて楽しく、好演だった。
サブリナが子供っぽい恋心を抱いた気持ちにも、観ていてすんなり共感できた。
もしデイヴィッドがあまりに「顔だけ」の、調子の良い男に見えたら、
夢中になったサブリナも、幼すぎて愚かだったということになってしまうが、
このデイヴィッドには、ちゃんと性格的な裏付けがあった。
兄ライナスのように優秀ではないが、デイヴィッドはそのぶん素直で奔放、
かつ、性根のところでは大事なものを見失わない感性も持っていることが
いっぽ(壮)くんの演じ方からはよく伝わってきた。
「抜糸したー!新品同様だー!」
といきなり舞台下手から出て来る場面が私はとてもツボにハマって、
かなり笑わせて貰った。
この時点のデイヴィッドは、もうサブリナとの別れを予感しているのだ。
にも関わらず、やっぱり表面はいつものカルさ、明るさ。
巧い(笑)!と思った。
サブリナは大抜擢の蘭(蘭乃はな)ちゃんだが、なかなか美しかった。
少女時代が既にスタイルが良く、洗練されているので、
こんなコに、どうしてデイヴィッドは目を留めないのか?
とツッコみたくなったほどだ。
パリから戻ったあとの、生まれ変わったサブリナも本当に綺麗だった。
声が落ち着いているのも良いと思ったし、破綻のないサブリナだった。
当初デイヴィッドに夢中で、それが急激にライナスに惹かれるようになる、
という過程も若い女の子ならではの動揺を無理なく表現していたし、
そんな自分が恥ずかしいと言って、ライナスの前で泣く場面も自然だった。
父親フェアチャイルド(夏美よう)がまたなんとも素敵なオジサマで、
見目麗しいサブリナとふたりで並んだ姿も雰囲気も、とても良かった。
この作品で残念なのは、スター候補生である若手男役達に、
さほど、しどころのある役が無いことだった。
華形ひかる・真野すがた・朝夏まなと、と言った綺麗な男役たちが
デイヴィッドの学友というか取り巻きの、上流階級の息子たち、
という程度の「その他大勢」的な役柄に甘んじているのが、
豪華といえば豪華なのだが、勿体ないという気はした。
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ショー『EXCITER!!』は、ノリも良く普通に楽しかったが、
すみません、正直に言うと、あまり細部は意味がわかりませんでした(爆)。
2009年に同じ花組でやった『EXCITER!!』の再演だそうで、
私は初演も観ていないので、再演の内容的な位置づけも不明だったのだが、
同じ作品をこんなにすぐ再演するというのは、最近では普通なのだろうか?
公演期間が以前より短くなってサイクルが早まったために、ネタ切れでは?
と要らないことを考えてしまった。申し訳ありません。
まとぶんの演じる「(冴えない時代の)Mr.YU」は可愛くて印象に残ったが、
しかしこういうキャラは、途中で何かがあって劇的なイケメンに変身する、
ということが、私のように前提のない客でも最初から予想できることなので、
そこに至るまでのギャグ場面が、ちょっと長すぎたようにも思った。
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宝塚の千秋楽公演は、毎回、組長とトップ(主演男役)による、
千秋楽挨拶がつくので、通常でも少し終演時間が遅いが、
昨日はそのうえに、10月に雪組へ組替えになる未涼亜希と、
この公演が大劇場での卒業になる絵莉千晶の、紹介と挨拶があった。
絵莉千晶への「同期生からの花束」贈呈に登場したのは、
月組のコシリュウ(越乃リュウ)で、これまた素晴らしく格好良かった。
コシリュウは花束を渡すと、拍手の中、控えめに一礼して下がったが、
私は「きょう来て良かった(T.T)」と本当に嬉しく思った。
ちあき(絵莉)さんの挨拶に、
『胸を張って宝塚が大好きですと言える自分の青春に、ひとつの悔いも無い』
という意味の箇所があって、私も胸が熱くなった。
劇団での日々は、つらいことも、理不尽なことも多かったと思うが、
それでも、シメ(紫苑ゆう)さんがいつも言っているように、
大好きで憧れて入った宝塚を、愛して愛して卒業できる、
というのはタカラジェンヌにとって本当に幸福なことだと思った。
そういう人の舞台生活こそが、私たち観客をも幸せにしてくれるのだ。
ちあきちゃん、ありがとう。貴女の新しい人生に幸多かれ。
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