13日(土)、いつもの3時の仕事がひとつキャンセルになったので、
私は急遽思い立って、大阪松竹座に行った。
もともと14日(日)15日(祝)の二日間は国立劇場に行く予定で、
東京旅行の算段は早くからしてあったのだが、
それの前に大阪遠征をくっつけることに成功したのだ(^_^;。
出発が遅く、夜の部の最初の『葛の葉』は間に合わなかった。
時蔵は美しかったことだろうと思い、残念だったが、
その次の『弥栄芝居賑』からは、通して観ることができた。
これは、「関西・歌舞伎を愛する会 結成四十周年記念」を祝う口上の一幕で、
幹部俳優が勢揃いし、大阪の歌舞伎をここまで守り立ててきた、
「関西・歌舞伎を愛する会(=発足時は「育てる会」)」への感謝を述べ、
上方歌舞伎が今後も更に発展しますようにと、観客の支援を乞い願う、
という内容だった。
私自身は、幼い頃から普通に中座にも南座にも行っていて、
東京の歌舞伎座ほどではないが、関西には関西の歌舞伎がある、
と当たり前のように思っていたのだが、
考えてみれば、一時期、西の歌舞伎の灯は消えそうにすらなっていたのだった。
今だって、実のところ、大阪松竹座は完売御礼とは行かなかったし、
先月の博多座もその前の御園座も、観客動員に苦戦している様子は明らかにあった。
これは西日本在住の歌舞伎ファンとして、今後も積極的に通わなくては、
と改めて思ったことだった。
その次の『上州土産百両首』、これは素晴らしかった。
主演の芝翫の正太郎が江戸前で格好良く、
幼なじみの牙次郎を思う気持ちがひたすらに熱く、まっすぐで、泣けた。
弥十郎の「できた」親分としての姿にも心打たれるものがあったし、
出番は少ないが猿弥のふくよかな(笑)「宿屋の主」ぶりも気に入った。
また、橋之助の悪役・三次もかたちがキマっていて色っぽさもあり、かなりの好演、
正太郎を慕う娘おそでの壱太郎も、短い場面ながら印象的で良かった、のだ、
が!何より!菊之助の牙次郎のハマり具合に
私は最も驚き、唸らされてしまったのだった。
藤山寛美がかつて務めた役であり、ドジで役立たずだが魂だけは綺麗、
というのが、この第二主役である牙次郎の役どころなのだが、
菊之助はおぼつかない感じの歩き方からして既に独特で、
のろまの「がじ」でも菊之助なのでやはり美形でもあり、
しかも正太郎に向かって「あにぃ」と呼びかける声音の、
なんとも言えぬ愛らしさ、まろやかさ。
彼の非凡さが観客には垣間見えるだけに、正太郎の真情が更に際立ち、
この「がじ」ならばこそ、正太郎が命を賭けるのも頷ける!
という並々ならぬ説得力が生み出されていた。
……というか菊之助、5月は道成寺、6月は土蜘、今月は「がじ」、
なんでアナタそんなに何でも出来るの?なんで何やってもそこまで巧いの??
道頓堀の松竹座の終演が8時半で、そこから地下鉄御堂筋線で新大阪に行くと、
あまり焦らずとも、東京行きの最終の「のぞみ」に間に合った。
日付が変わる頃に東京に着き、そのまま定宿のホテルに入って、寝た。
実は今回、連休ということで主人も私とは全く別のルートで東京に来ており、
ホテルも、彼のほうの事情と趣味とで赤羽に取っていたので、
我々はLINE以外では全く接触のないまま、別々に東京入りすることになった。
翌日も、私は国立劇場を昼夜観劇、夜は早くからホテルで爆睡したので、
またもや主人とはLINEで遣り取りしたのみだった。
夫婦で東京に行った、……と周囲は思っていたかもしれないが、
実情は、ここまで食事すら接点が無かった。
私は観劇後はファミレスやコンビニで十分な人間だが、
主人はそういうものは絶対に許さないのだ(^_^;。
良いのだ、お互いに重視するところが違うのだから、めいめいで遊べば(^_^;。
15日(祝)には、私は再度、国立劇場に行った。
「七月歌舞伎鑑賞教室」が松緑の主演であったことと、
玉太郎と左近が交互にダブルキャストで出演する企画であったこととで、
私には、複数回観る楽しみが大きかったのだ。
更に、15日は終演後にそのままアフタートークが行われると、
予め発表されていたので、それを観るという目的もあった。
この日は友人某氏と一緒に観劇した。
公演の最初は、坂東新悟と中村玉太郎による『歌舞伎の見方』、
素晴らしい口跡と、テンポの良い解説に気持ち良く聴き入り、
『車引』では松緑の松王丸を観て、その大きさに心から満足し、
息子・左近の演じる杉王丸の、輪郭の鮮やかさにも感じ入り、
最後は『棒しばり』で、松緑×亀蔵の、息の合った踊りを堪能させて貰った。
『棒しばり』は以前、松緑×菊之助が演じたときには、
菊之助の持ち味のためなのか「可愛いけど妖しい」隠し味があって
不思議な魅力のあった演目だったが、今回は亀蔵なので、
徹底的に楽しいエンターテインメントに仕上がっていた。
松緑×亀蔵は、研ぎ澄まされたような踊りの技術を持っているのだが、
それをオモテには出さずに、ひたすら楽しく見せてくれて、
ふたりの踊りの相性の良さと、それぞれの力量の高さをつくづく感じた。
また、曽根松兵衛の松江は大らか、かつ上品な可笑しさが絶品で、
『いてくるぞよ~』の愉快な声音は、今思い出しても頬が緩む(笑)。
尾上緑のスマートな後見ぶりも逃さずチェックした、ワタクシであった(^_^;。
アフタートークは、進行役が松緑で、松江・亀蔵・新悟の3人と登場、
今月のは短い演目ながら大変ハードな内容の公演であることや、
鑑賞教室なので学生さんや社会人の初心者の方々が多く、
客席の反応が普段とは違う面があるので、
そういう場に相応しい演じ方を意識しているということ、
外国人の方が最前列にいらした日には、最後には座席で踊り出されて、
一緒に楽しんで下さったのが嬉しかったこと、等々のお話があった。
また、この度の演目選定については、
当初は『夏祭り』を考えたが「学生さんたちに親殺しの話はNG」、
では『身替座禅』はというと「今時『不倫』はヨロシくない」、
となり、なかなか難航した、等々松緑より暴露(!)されていた。
そして最後は、各出演者の出題する三択クイズに正解すると押隈が貰える、
というイベントもあって、なかなか盛りだくさんだった。
おっとりとした松江さんが、松緑にイジられていたのが可笑しかった(^_^;。
ということで、満足した友人と私は、そのあとお茶をし、
松緑話ほかで盛り上がり、某ホテルのラウンジでケーキを楽しみ、
私は東京発・広島行きの最終の「のぞみ」で帰って来た。
今回は人並みに、週末三連休を満喫できた!と幸せに思った。
付き合ってくれた友人も感謝感謝<(_ _)>。
******************
ところで、15日の昼に某ホテルにて、主人、娘、友人某氏、私で
揃ってランチを楽しみ、これが期間中唯一の家族イベントとなったのだが、
その時点では大変元気そうだった娘が、
同日夕方から微熱が出て咽喉が痛くなり、
昨日は久しぶりに近医の内科にかかることになった。
梅雨入り以来、東京は長雨で、娘はなんとなく元気が出ず、
頭痛のする日も多かった、という話を今になって聞き、
それは低気圧のせいもあるかもしれないが、
やはり6月から大宮勤務に変わったことで、
ちょうど疲れが出る頃だったのだろう、と私は思った。
娘はもともと、体調不良にはほぼ必ず頭痛がついて来るヒトだったので、
この際だからと、家に近いところで頭痛外来のある「内科、神経内科」を
検索して探し、昨日は休息も兼ねて有休を取り、受診してきた。
扁桃のあたりに炎症が起きており、肩凝りが原因の筋緊張性頭痛もある、
との診断で、抗生剤と解熱鎮痛剤、他、漢方薬など処方されたとのことだった。
さきほどのLINEによると、きょうは娘は通常どおり出勤はしていたが、
まだ怠いのと、昨日より更に咽喉が痛い、と書いていた。
ウィルス感染の扁桃炎や咽頭炎なら、薬を飲んでも1日ではなおらんな(^_^;。
とりあえずこの際、ちゃんと安静にして、酒を断つことさね(爆)。
追記(7月19日):娘の扁桃炎は、一筋縄では行かなかった(汗)。
18日には一旦、気分がすっきりして頭痛もなくなり、
「ただ咽喉だけが痛い」とLINEで言っていたのだが、
19日の午後には咽喉痛が耐え難いほどになり、微熱が出て再び頭痛も感じ、
娘はたまらず耳鼻咽喉科に行ったそうだ。
両側の口蓋扁桃が真っ白に化膿しており、
それまで貰っていたフロモックスが、ジェニナックへと変更されたとのことだ。
細菌性なら抗菌剤が効くだろう。ウィルス性なら自然治癒を待つしか……。
追記2(7月22日):娘はどうやら「伝染性単核球症」に罹っていたようだ。
ジェニナックを3回服用しても改善がなく、きょう耳鼻科にかかったら、
そのように言われ、確定診断のために血液検査をされたそうだ。
娘は発熱38度と、両側口蓋扁桃の化膿、首のリンパ節の腫れ、等々が症状だ。
検査結果は一週間後に出るが、恐らくアタリだろう。
こうなると治療は要らないが、ウィルス感染なのでなおるまで付き合うしかなく、
少々、時間のかかる話になりそうだ。
日本では、大人になるまでにほぼ全員がこのウィルスの抗体を獲得するのだが、
小さい頃なら単なる扁桃炎と区別がつかないかたちで済むものが、
思春期以降に初感染すると、娘のように、結構ハデな症状になってしまう。
世の中の成人全員が持っているウィルスなので、そもそも予防は不可能、
罹ったタイミングがさほど悪くなかったことを感謝するしかなかろう(^_^;
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