物凄い拾いモノをしてしまった(殴)。
このところYAMAHAに行くと、いつも店の入り口で、
三浦友理枝『プレミアムコンサート』を宣伝する、
彼女の演奏の映像が流れており、CDも販売されていたので、
私のような者でも、なんとなく彼女の名前は知っていたのだが、
この演奏会に行くことにしたのは、それらに惹かれたからではなかった。
娘の塾の送迎絡みで、私の空き時間の活用にピッタリだったから、
という、実にテキトーな理由からだった。
娘の塾がたまたまこの日、六時前に始まって八時半に終わる、
という予定だったのと、この会場と娘の教室が近かったのとで、
娘を送り届けたあと演奏会を聴きに行って、終わったら迎えに行く、
という予定にすれば丁度良いと考え、私はチケットを買ったのだった。
会場は横川駅前の西区民文化センター。
上記のような経緯だったので、私は特別な期待もせず、ただ、
新進ピアニストを応援するという意味での好意的な気分で、
三浦友理枝嬢を拍手で迎えた。
さすが、YAMAHAが売り出しに力を入れているだけのことはあって、
ステージ上のピアノはYAMAHAのCFだった。
が、私のそのテキトーな気分は、演奏が始まった瞬間に吹き飛んだ。
一曲目、ショパンの『舟歌』の最初の音が響いたとき、
私はびっくりしたのだ。
なんてイイ音なんだ!
ほっそりした彼女の手から紡ぎ出される音のひとつひとつは、
実に見事で堂々とした存在感を持っていた。
しかも、その重厚で深みのある「イイ音」が、
速いパッセージになっても、弱音表現の部分になっても、
少しも乱れず、きらきらと充実した響きを持って続いたのには
本当に驚かされた。
そして、そのように硬く輪郭のはっきりした音質を持っているのに、
彼女の音楽はまた、全く押しつけがましくなく、
大変に躍動的で、わくわくするような「歌」があったのだった。
二曲目はショパンの『英雄ポロネーズ』。
聞き飽きたような曲なのに、彼女の手にかかると、
これまたあまりにも格好いいので私は嬉しくなってしまった。
70年代のアルゲリッチみたい、と言ったら誉めすぎですか(^_^;)。
要所要所をピタリと決めていく、冴え渡るような演奏で、
ハーモニーを決して壊さないペダリングも絶妙、
巧いじゃないか!気持ちイイじゃないか!と私は惚れてしまった。
このあとは、ラヴェルの『亡き王女のためのパヴァーヌ』と
『ラ・ヴァルス』(作曲者編・ピアノ独奏版)。
休憩15分を挟んでの後半は、
フォーレ『夜想曲第4番』、プロコフィエフ『ソナタ第6番』。
これらを平気で弾ききる彼女は、細い外見に似合わぬ、
大変なヴィルトゥオーゾ型のピアニストなのだった。
『ラ・ヴァルス』は実に立体的な音楽だった。
こういう奥行きのある響きを構成することが可能なのも、
彼女の音の輪郭がはっきりしているからこそだと思った。
プログラム・ノートを見ると、この曲については、
「渦巻く雲の切れ間からワルツを踊る数組が見える。
雲は次第に晴れていき、旋回する人々であふれた大広間が見えてくる」
というラヴェル自身の言葉が引用されていて、
「曲は、9つのワルツが効果的に次々と現れ、次第に盛りあがり、
ついにはカオス(大混乱)へと突入してしまう。(中略)
様々な技巧を用いてオーケストラの楽器が表現されており、
目にも楽しい」と、なんとも過不足ない良い解説が書いてあって、
まことにその通りの演奏なので、これまた感じ入って聴いたのだが、
あとでよく見たら、その解説は三浦嬢本人の筆によるものだった。
うぅむ、才色兼備とは彼女のためにある言葉だな。
この人は、エイベックス・クラシックスからCDを出しているのだが、
『インプレッション』などというコジャれた題がついていたので、
私は眺めただけで「なんかのムード音楽か(^_^;)?」と思い、
今まで、買おうと思ったこともなかった。
だが、この演奏会の前半が終わったところで、
私は休憩時にロビーで売っていたCDをいち早く買った。
中身は、本気で硬派な、純然たるフランス音楽だった。
私にとっては、エイベックスの売り出し方が仇になっていた訳だが、
実演に接することが出来て、本当に幸運だったと思った。
アンコールは、ショパンの『エチュード作品10-7』(余裕だった)、
チャイコフスキーの『四季』より『クリスマス』、
ドビュッシーの『ベルガマスク組曲』より『月の光』。
エイベックスのサイトやCDジャケットで見るより、
実際の彼女はきびきびとした少年みたいな印象の人で、
なかなかに美しい人だけれども鍛え抜かれた芯の強さを感じた。
CDを買ったことで終演後サインをして貰うことが出来た。
『Yurie Miura 2005.12.9』
とCD本体に書き入れ、
「ありがとうございました(*^_^*)」
と顔をあげて笑った彼女は、とてもとても愛らしかった。
おばちゃん、かなり惚れました。
Trackback ( 0 )
|
|