元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

オリジナルリスシオダイアリー完成

2011-10-16 | 仕事について

分度器ドットコム、大和出版印刷、当店の3社共同企画でスタートしましたオリジナルリスシオダイアリーが完成しました。

早いものでこの企画がスタートして、3年目になります。

このダイアリーは、今回から帯をつけるようになりましたが万年筆で書くということを考えたダイアリーです。

万年筆で書きやすい紙、万年筆で書きやすいレイアウト、書きやすくするための平に開く丈夫な製本など、全ての機能が万年筆で書くということに向いていて、万年筆で書くことをこれほど楽しめるダイアリーは少ないのではないかと思っています。

私たちはこのダイアリーを一人でも多くの方に使っていただきたいと思っていて、他のお店でも販売していたけるようにしたいと思っていました。

今まで、分度器ドッコムの谷本さんと私によるイラストを表紙にしていましたが、大和出版印刷さんのリスシオ紙ノートの表紙と同じガス灯の絵柄に変更していますし、万年筆で書くことを謳った帯びの存在も当店や分度器ドットコムさん、以外のお店で販売しやすくするための仕様変更でした。(リスシオダイアリーの販売をご希望されるお店の方はぜひpenandmessage@goo.jpにご一報ください)

カバーに入れてしまうと見えなくなる表紙ですが、なかなか良い佇まいを見せてくれていると思っています。

このダイアリーの機能向上、魅力強化にこれからも取り組んでいきたいと思っていて、継続的に内容の充実を図っていきます。

今後また完成のタイミングでお知らせいたしますが、10月下旬にキャバス地のカバーが、10月下旬から11月はじめにル・ボナーさんによる革製のカバーが完成いたします。

よろしくお願いいたします。


活版印刷の名刺始めました

2011-10-15 | 仕事について

個人的には大変興味があった活版印刷の名刺を当店で扱い始めました。

活版印刷の魅力は凸版が紙を押した凹みが出す文字の勢いとか力強さなどのデジタル製版の名刺には表現し得ない質感だと思っています。

そこまでは一般的な活版印刷の話。

大和出版印刷さんが始めた「あじ名刺」は活版印刷の良さが出る紙を厳選した3種類に絞り、文字色も3色、レイアウトもデザイン、機能的に練り上げられたものから変更できないという、以前仕事で扱っていたお客の希望通りに何でもできる名刺印刷とは全く違う感覚の名刺です。

しかし、あじ名刺には紙によって押し圧まで調整された活字の勢い、それによって凹んだ紙の質感、名刺全体の印象を変えるインクの色、スタンダードなものの中から厳選された書体など、この名刺が示す世界観があります。

受け取った相手がすぐに名刺入れに仕舞わず、何度も触ったり、いろんな角度から見たりしてくれる質感(味わい)のある名刺だと思います。


ペリカンM600 グリーン・オ・グリーン

2011-10-14 | 仕事について

ペリカンという会社は限定品を多く出すことで知られています。

不景気と言われ多くのメーカーの元気がなくなってしまっているような時でも、ペリカンは関係なく限定品を発売して、ペンを面白くしていくれています。

ペリカンの限定品の多くはなかなか玄人好みのものが多く、ペリカンの定番品をよく知る人が見ると魅力的に感じるものなのではないかと思います。

しっかりとした定番品のラインナップがあって、その上で色を違えたりする限定品を出してくるあたりはなかなか堅実なやり方だと感心します。

M600の限定品というと、10数年前の都市シリーズを思い出します。

ストックホルム、ベルリンから始まった都市シリーズは今回のグリーン・オ・グリーン同様、黒キャップの定番品と違えた、全体に色合いのある特別感が限定品らしさで、機能や品質は時間をかけて練り上げられてきた定番品をベースにしていることで、機能的にも安心して使える限定品がM600の限定品です。

書くことにおいてベストバランスと言われるM800はポケットに入れて持ち運んだり、女性の方には重いと言われることが多いので、それよりも軽く、細くて軽い携帯用のM400よりも太くて持ちやすい。

アウロラオプティマと同じくらいの大きさなので、コンプロット4ミニ(M800まで入るけれど)にもきれいに納まります。

デスク用、携帯用と使い分けないオールラウンドに使える万年筆であるM600がベースになっているグリーン・オ・グリーンが入荷しました。

 

(F,M,B 45,150円です)


Little by Little

2011-10-13 | 仕事について

阪急神戸線武庫之荘駅北東に徒歩3分のところに「Little by Little」http://little-by2.jugem.jp/というセレクトショップがあります。

昨年の12月にできたお店で、まだ1年経っていませんがメンズ、レディスのカジュアルウェア、雑貨などを揃えていてご夫婦でお楽しみいただけるお店だと思います。

ぜひ遊びに行ってみてください。

 

同じ職場にいたり、一緒に仕事したりと縁あって知り合うことができた人達も10年もすると、それぞれ別々の道を歩み出して同じところに居るわけではありません。

前の職場の時には取引先の担当者として一緒に仕事していたLittle by Littlenのオーナーの林さんは、ただ一緒に仕事をしていただけでなく、定期的に連絡を取り合ったりしていて、プライベートでも行き来がありました。

奥様は私と同じ店で働く同僚だったこともあって、お二人の結婚式にも出席させていただいたりしました。

若い(私よりは)お二人でされているお店は、さわやかで感じの良いお二人の人柄の出た、居心地の良いお店だろうと思っています。

 


店主のおすすめBOX

2011-10-11 | 仕事について

私は物を売る仕事をしているのでお客様が来て下さったら何か買っていただけるようにしないと仕事をしていないことになります。

今日はこれを買うという目的を持って来て下さる方はとても有り難いですが、そういった明確な目的がないお客様にも買いたいと思ってもらえるように何かをおすすめしないといけませんし、おすすめするのが礼儀だと最近思うようになりました。

しかし何かモノをおすすめするというのは本当に難しく、あまりしつこくするとお客様がうっとおしく感じてしまわれるのではないかと思ったりします。

本当に上手なお店の人は相手に不快感を与えず、買ってあげたいと思わせたり、薀蓄に惚れさせたり、自分に必要だと感じさせたりとそれぞれの持ち味でスマートに商品をすすめて買わせてくれる。

財布の中にお金があれば買うし、なくても後で何とかなるかと思いながらクレジットカードを差し出す。

上手な店員さんたちのように私はスマートにおすすめすることができず、商品をすすめると途端に胡散臭くなるとEさんに言われたことがあります。

多くのお客様から商売っ気がないと思われている理由はその辺りにあるわけです。

自分は商品をすすめるのが下手だということを前提に思いついたのが、店主のおすすめBOXです。

コンプロット4(クワトロ)ミニに、主に書き味において選りすぐりの万年筆を最も書きやすい状態に調整して入れておく。

その中に入っている4本はこの店の中で最も書き味の良い4本だということを視覚的に伝えるものです。

実はこういったことを以前からやってみたいと思っていましたが、具体的な形体が思いつきませんでした。

工房楔の永田さんのコンプロット4(クワトロ)ミニと出会って実現した今回の企画です。

今ボックスに入っている4本は、

パイロット変わり塗り M
ペン先の寄りを柔らかくしてインク出を多く、書き味を柔らかくしています。丸いイリジュウムに少し面を作っているの     で、紙への当たりもソフトな印象。

アウロラ88 B
丸く辺りの硬いアウロラのイリジュウムですが、中心に面を作って辺りを柔らかくしています。寄りを弱めてインク出を少し増やしています。
こうすることでアウロラはものすごく気持ちよく書けるようになります。

セーラープロフィットレアロ B
セーラーはツボにはまればすごく気持ちよい書き味を持っていますが、そこから外れると書き味が悪くなります。ツボの書き味はそのままに外れた時の引っ掛かりをマイルドになるように角を落としています。

ペリカンM800 B
ペリカンのBはイリジュウムが大きいためか書き味は大変良いですが、書き出しがほとんど出ません。書き出しが出ないことを解消しながら、書き味良くしました。

店に陳列している万年筆は標準調整を心掛けていて、入荷したときにメーカー調整を補助する程度の調整にとどめています。
ボックスの中の万年筆は書き味が良くなるまでとことん手を入れています。

店主のおすすめ、ぜひお試しください。


お子様の誕生に記念のペン

2011-10-10 | 仕事について

最近お嬢さんを授かったSさんが来店されて、お子様の誕生記念としてブラックトレドを購入されました。

その子が大きくなったら渡すとかではなく、お子さんがそのペンを見た時に父親をイメージするような、ご自分を象徴する万年筆が欲しいと思われて来店されたのだと思います。

ブラックトレドは1995年頃トレドシルバーという名前でプロパーの商品として短期間のみ作られていましたが、15年くらい作られていませんでした。

金張りのキラキラしたトレドとは違う、シルバーの胴軸のトレドは新しい時には少しシャープな印象で使い込むとシルバーが落ち着いてきて、お子さんがお父様の万年筆だと認識する頃には良い風合いになってくるでしょう。

私も子供が生まれた時に万年筆を知っていればと羨ましく思いました。

息子が生まれたのは25歳の時で、私は本当に若かった。

今でもないけれど、当時わが家には本当にお金がなかったからトレドは絶対に買えなかったけれど、プロフィット21やカスタム742のような長く使うことができる万年筆をお金を貯めて買っていたと思います。

子供が生まれた年号を刻印したりしてもいいかもしれません。

子供が生まれたという自分の人生における大きな出来事を思い出せるモノを形として持っておけるというのも素敵なことだと思いました。


使う人に愛情を注いでもらえるもの

2011-10-09 | 仕事について

例えば革製品でも、多少の縫製が弱くて縫い直しなどの修理に出さなければならないとずっと使い続けることができない物は作りとしては完璧ではないのかもしれません。

専門家から見るとこんな作りは許せないと思えるものでも、使っている人は修理に出してお金をかけてでも使い続けたいと思う。

それだけそのモノに対しての愛情があると、革の質とか、作りなどは素人である使う人からすると大した問題ではなく、そのモノにまつわる想いとか、そのモノがかもし出す雰囲気の方がずっと大事なのだという話を作り手の方から聞きました。

そのモノを供給する側としては、それぞれのこだわりを持ってそのモノを作っている。

それが素材であったり、作りであったり、デザインであったりする。

でも一番優れたモノというのは、使っている人に愛情を持って使ってもらえるもの。

何度でも直して、でも使いたいと思ってもらえるモノが一番優れたものなのではないかとという話を聞いて、とても良い話だったと心の中が暖かくなりました。

こういうモノをお客様に使ってもらうには、誰が作ったと同じくらいお店の役割が大切になってきます。

お店は作り手の想いをお客様に伝えて、そのモノを好きになってもらう。

その買い物の時の思い出を楽しい記憶として心にとどめてもらうようにする。

そういったモノにまつわる思い出を伝えるための心の演出(というとワザとらしい作為的なものに聞こえるけれど)をするのがお店の役割だと思っています。

当店の名前はペンはただのモノでしかないけれど、そこに作り手、売り手、使う人の想いをこめたいという願いを表していますので、そのお話に大変共感しました。

雑誌などでたまに見掛ける技術偏重は、当店に商品を作って下さっている人たちにはなく、皆そういったことを理解されていると改めて思いました。


ベストにミニペン

2011-10-08 | 仕事について

今はベストを着て出掛かるのにとても良い季節なので、他の服の比率に対して、ベストはたくさん持っている私としてはとても嬉しい。

今まで秋が楽しいと思ったことなどなかったですが、服装を少しでも楽しむと季節が変わるのが嬉しくなってきます。

冬に着る厚い上着には差さないですが、胸ポケットにはなるべくペンを差したいと思っていて、特にベストなどは胸ポケットにペンを差して最も合うものだと思っていますので、なるべくベストにはペンを差したい。

今まで普通のサイズのペンを浅いポケットに斜めに差していましたが、無理せずペリカンのM300を差す方がずっとかっこいいように思います。

今までM300を避けてきたのは、ここまで小さいペンを自分が使うと思えなかったからです。

でもベストのポケットは浅いものが多いので、M300のように極端に小さいペンしか合わないのです。

そのおかげで使い出したM300(私のはドイツ仕様のM350だけど)は浅いベストのポケットにとてもカッコよく納まっている。

その人の個性の演出として胸ポケットに万年筆はあって欲しいと思いますが、取り出しやすい胸ポケットにこうして万年筆が差さっていることは実用的にもとてもメリットのあることです。

まさに自分を演出する道具なのだと思います。

胸ポケットに万年筆。私は結構こだわっているかもしれません。


知名度

2011-10-06 | 仕事について

先日打ち合わせをしていて、ブライトリングという時計メーカーを知っているかという話になりました。

時計に興味がある人はもちろんよく知っているメーカーですし、モノが好きでこういったことにアンテナを張り巡らせている人ももちろん知っている有名時計ブランドですね。

ベントレーとコラボレーションしたりしている、もしかしたら有名時計ブランドの中でもかなり知名度の高い方なのかもしれません。

でも、ブライトリング、確かに微妙で、ロレックスやタグホイヤーなどのような一般的な知名度まではないかもしれません。

ロレックスはさすがに例えば街を歩く100人に聞いたらほとんどの人が知っていると思います。

そう思わせるのはさすがで、それはロレックスを今まで支えてきた人たちの努力であって、ロレックスが今まで築き上げてきた信用の末の知名度なのだと思います。

万年筆の業界でロレックスと同じくらい有名なのはモンブランです。

万年筆を使ったことのない人でもモンブランの名前だけは知っているという人はたくさんいます。

モンブランと聞いて「ケーキ」と思う人は日本ではもはや少ないかもしれません。

モンブランのこの知名度も今まで良質な筆記具を作ってきた今までのモンブランを支えてきた人たちの努力のたまものであって、多くの顧客がモンブランを支えてきたからなのだと思います。

それは使いやすく丈夫な筆記具を適正な価格で提供してきたから尊敬されてきたわけです。

こうやって考えると万年筆メーカーの知名度はどこも本当に低くて、モンブランしか一般的には認知されていないのではないかと思ったりします。

私たちが誰もが知っていると思っているペリカン(は一般的な知名度はまだある方かもしれませんが)もアウロラも、そこので働いている人たちはもちろんがんばっているけれど、まだまだ一般の人には知られていないのかもしれませんね。


店主のまかないメモ

2011-10-04 | 仕事について

買えないものを紹介しても、読んでくれている人はあまり楽しくないのではないかと思っていましたが、久し振りにご来店されたEさんが私のメモ帳を見てシビれて下さって、シェフのまかない料理みたいなものなのでこういうものはもっと紹介するべきだと言われました。

そう言えば駒村氏も森脇さんも、IさんもOさんもほめてくれたっけ。

もともとは使っていない紙製品をどうやって消費するかというところから始まった、葉書サイズのメモ帳で、ノートをばらしたものや、その辺にある裏紙の時もある。今は原稿用紙を裁断したものを使っています。

前表紙は柔らかいミネルバボックス革、後表紙は厚くコシのある革にそれぞれ穴を空けて、革のひもを通しています。

メモ書きの場合、ダイアリーに清書したらちぎり、ブログやホームページの下書きの時はパソコンにアップしたらちぎる。

あまりきれいにちぎれないし、気をつけないと小さな紙くずがたまに出るし、いちいち紙を同じ大きさに切って、穴を空けないといけませんが、慣れると意外と面倒でなくなる。

実は非常に使い勝手が良いのと、何よりもこのモノとしての佇まいがいい。

きっと皆さんもそこに惹かれたのだ。

メモ帳というのは私にとって最も大切な道具で、メモ帳と万年筆さえあれば私に日常の仕事の半分はできてしまいます。