元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

カンダミサコバイブルサイズシステム手帳

2016-10-30 | 実生活

カンダミサコさんのシステム手帳を使い始めて2か月ほどが経ちました。

カンダミサコさんが既存の厚くて重いシステム手帳を嫌い、今までなかったようなものを作りたいと私たちに宣言してから数週間でほどでサンプルを完成させてきましたが、それほどこの手帳の集中的に考えてくれたようでした。

普通の綴じ手帳代わりに使うことができるような薄型で、書くときには平らに開くことができる。
それは独特なリングの取り付け方によって可能になっています。

表紙はカンダさんらしい素材シュランケンカーフ。2か月の使用では全く変化はなくて、いつまでもきれいに使うことができる革であることを証明しています。

内側の革はブッテーロで、艶が出るほど手に触れる部分ではないけれど、ページなどでこすれて艶がでてきています。

私がこのシステム手帳で最も気に入っているのは、その姿の美しさ。

背表紙の丸み、縦横比、紙に対しての革の余白のサイズなど、この手帳は美しく見えるように考え抜かれています。

私の使い方は、ToDoとメモという実務用の正方形ダイアリーに対して、原稿を書いたり、考えを重ねるための思考の手帳にしています。

リフィルはオリジナルシステム手帳リフィル筆文葉で、原稿は横罫ですが、考えやアイデアを重ねるページは水玉罫を使用しています。予定だけを書くことができる年間ダイアリーを金治智子さんが作ってくれてこれを1枚はさんでいます。

薄いシステム手帳は中身を整理しないとすぐにいっぱいになってしまうけれど、何が書いてあるのか常に把握できて良いことなのかもしれません。

昨晩もお客様のF原さんとそういう話になったけれど、手帳に使いこなしについて話すのは本当に楽しい。

カンダミサコのシステム手帳、筆文葉のリフィルは、私たちからの遊びの誘いだと思っていただけたら嬉しく思います。

カンダミサコシステム手帳、初回入荷分はあっという間に売れてしまいましたが、12月までにはまた入荷する模様です。

ちなみにご予約も承っています。 https://www.p-n-m.net/contents/products/OG0153.html


手入れ

2016-10-23 | 実生活

和歌山のK様ご夫妻とお話ししていて、お習字の筆を毎回シャンプーとリンスしていると言って驚かれた。

K様も毎回きれいに水洗いはしているけれど、それで充分だと言われていました。

通っている積水書道会の窪田先生もシャンプーリンスまでしなさいとは言っていなかったかれど、水洗いだけで落ちない毛に点々と残った墨の粒のようなものは、シャンプーを2回ほどしないと落とすことができない。

もっと詳しく言うと、シャンプーを2回して、リンスをつけた状態で細かいを櫛を通して、リンスを濯いでいる。

筆にシャンプーとリンスをするかどうかということは、人それぞれで、諸説ありますが、シャンプーリンス賛成派の意見として榊莫山先生が著書で書かれていて私はそれを信じている。

こういった道具の手入れはきっと、その行為が好きでしている。そして道具を手入れすることによってお習字がさらに楽しくなると自分で分かっている。

新しくて、より良い道具を手に入れることもすぐに壁にぶち当たるお稽古を楽しくすることにつながるけれど、その気持ちを長持ちさせるのは、その道具をきちんと手入れすることなのだと思う。

最近、JMウエストンのゴルフを買って、本当はゴルフを毎日履いて行きたいけれど、2日は空けないといけないので週2回くらいしか履くことができない。

でも今まで履いていた靴もちゃんと手入れして、ピカッとひかるようにしたら、やはり愛着が湧いてきて、この靴もいいなということになります。

靴の場合、手を入れすぎて、何かを塗りすぎるとかえってダメにしてしまうので、革がカサついてきたと思ったらクリームを少し塗るくらいにしている。

普段の手入れはブラシ掛けで充分で、それだけで革の持つ力で艶が出てきます。


少し話が反れたけれど、万年筆もきれに洗浄したり、インクを違うものに入れ替えたりすると、その万年筆ばかりしばらく使いたくなるのは、手入れをすることでそのモノへの愛着が増すからなのだと思う。


SkyWind Exhibition vol.2 開催いたします 10/27(木)~11/10(木)

2016-10-18 | お店からのお知らせ

いよいよSkyWindさんのイベントが来週に迫りました。

イベントでは今販売していますポストカード、カレンダー、みつろう引きブックカバーの他に、ポストカード、カレンダーになっている写真作品の額装の販売もいたします。

そして何より、SkyWindさんがイベント期間中の木曜日(10/27,11/3,11/10)に在店されます。作家さん本人と会うことができるということが特別なことだと思っています。

10/27(木)のイベント初日には、みつろう引きブックカバーの文庫本サイズを作るというワークショップも2名様限定で開催いたします。

ワークショップに参加ご希望の方は、当店にご連絡下さい。(電話078-360-1933、メールpenandmessage@goo.jp)

 

SkyWindさんの写真作品を私は気に入っていて、少し懐かしく、胸の奥が痛くなるような世界観が自分の感性に近く、自分のもののように大切に思っています。

どうぞ、SkyWindさんのイベント「SkyWind Exhibition vol.2」にご来店下さい。

 


JMウエストンゴルフ

2016-10-16 | 実生活

久し振りに靴を買った。でもよく考えると夏用にビルケンシュトックのロンドンを買ったので久し振りではないのかもしれない。

でも年男の誕生月で節目だということを狂言師安東伸元先生の奥様眞美子さんからネクタイを贈られたことで思い出し、自分でも記念になるものを書いたいと思いました。

次靴を買うならJMウエストンのゴルフを買おうと思っていました。

ゴルフは本当に何の変哲もない靴で、何でこの靴がそんな値段なのか分からなかったけれど、実際お店で触ってみたりして革の良さなどを実感して想いを募らせていたのでした。

いつも、どんな人と対した時も自然体でいたいと思ってきました。

心に壁を作らず、飾らない態度で構えずにいると相手と心は通じ合い、コミュニケーションは成立する。
いつも上手くいくわけではないけれど、この気負ったところのないデザインの靴は自然体でいることを自分に思い出させてくれるような気がしました。

イイ大人になってしまった自分は、これから良い齢のとり方をしていきたい。

そのためには50代を迎えた時に、足元には履き込んで、いい感じに馴染んだゴルフがあって欲しいと思いました。

革靴が好きになり始めた時、メダリオン(飾り穴)がたくさん入った派手な感じの靴が好きでした。

その方がそれらしく、一目で良い靴だと分かるから。

そういった靴も今も履いていて好きだけど、自分に最も合った靴はゴルフのようにシンプルで、パリッとし過ぎていない、気負いのないものなのではないかと、今は思っています。

フランスの靴の代表格のようなJMウエストンに憧れや思い入れはなかったけれど、1950年代にゴルフ用に発売されて、今も全天候型靴の定番中の定番として存在し続けるゴルフは時代を超えた存在で、自分の仕事もこうありたいと思わせるものでした。


色々理由をつけたけれど、靴が好きで、まず定番と呼ばれるものを知りたいと思っていました。

スーツを着ない私のためのカジュアル靴で古くから作り続けられているスタンダードなものはそれほど多くなく、それらを知ってから、現代風にアレンジしたものや限定品のようなものに手を出してもいいのではないかと思っています。

 

 


銘木の楽しみ

2016-10-11 | モノについて

 

イベント後で様々な種類の木のものが入荷していますので、少しご紹介します。

高級素材ローズウッドこぶ杢です。模様の美しさ、色艶、手触りの良さ全てと持っている素材だと思います。

ローズウッドこぶ杢の中でもさらに希少な白バラです。多少の色変化も期待できそうです。

花梨は楔の素材でも定番中の定番で、玉杢の美しいものがよく使われます。

ハワイアンコアの根杢です。見る方向、傾け方によって3Dのように見える杢が大変美しい。

左が楢の杢、右がチークです。こういった単純に美しいという言葉では言い切れない、味わい深さを持った素材が私は好きです。
チークは油分を多く含み、独特の手触りがあります。

 

手前はエージングが楽しめるキューバマホガニー、奥が手触りを楽しむブラックウッド。

銘木は本当にたくさんの種類があります。当店では「樹種事典」なる本を販売していて、それと工房楔の銘木作品と合わせて見るととても楽しいのでお勧めします。




セーラー創業105周年記念万年筆 瑞青

2016-10-09 | お店からのお知らせ

今年セーラー万年筆が創業105周年を迎えていて、記念万年筆瑞青を発売しています。

ホームページには載せることができていないけれど、当店にも入荷しています。(現在在庫Mのみ)

瑞青は明け方の空の色のような美しい青色を含んだエボナイトをボディに使って、独特の五角形の形状に仕上げた万年筆です。

パチンと閉める勘合式キャップは尻軸に差さらず、そのボディが長くなっています。

100周年記念万年筆島桑もそうでしたが、セーラーはたとえ創業記念万年筆であろうと常に書くことをまず意識した万年筆を発売してくるところに好感を持っています。

創業記念だからこそ、セーラーの哲学における書くことにおいて最高のペンを発売してくるのかもしれない。

ボディが長いのはキャップを尻軸に差さなくても、長さ、重さを稼ぐことができるからで、尻軸にキャップが差してバランスを取るよりも、差さずにバランスを取ったほうが安定していて、快適に筆記できます。

重量は全体で42.3g、コンバーターを含めたボディだけで31.8gで、ボディだけで理想の重さ30gを目指したことがうかがえます。
ちなみにコンバーターを外して、カートリッジインクにしたらちょうど30gになり、カートリッジインクをイメージして開発したのではないかと思い、大変面白いと思いました。

ちなみに100周年島桑も瑞青もキャップをした全長が全く同じ162mmで、これに何か意味があるのか読み解けていないけれど、きっと理由があるのだと思います。

勘合式のキャップは、キャップとボディのエボナイトの柄を合わせられるようにという配慮と、ネジ山が手に当たって書くことの意識を阻害しないようにという意図があるのだと思っています。

五角形のボディ形状は、105周年の5にひっかけたのかもしれないけれど、五角形の底辺が手に乗ることでペンが安定するということか。

創業記念の限定品というと派手なものをイメージしてしまいますが、セーラーは5がつく周年モデルは書くことや機能を意識した意欲作を発表してきた。

今回の瑞青は書くことのバランスを追究した万年筆になっています。


SkyWind exhibition vol.2 10/27(木)~11/10(木)

2016-10-02 | お店からのお知らせ

なかなか上手くいかないけれど、いつも雰囲気や世界観を伝えたいと思っています。

このブログやホームページを読んだり、店に来て下さったりした時に感じ取って、心を動かすものが世界観だと思っています。

同じ、モノを売るなら当店だけの世界観を示しながら、独特の雰囲気を感じ取ってもらってそのモノを手に入れていただきたい。

当店はそんな店でありたいといつも思っています。

メーカーが作って、市販されているものはどこででも手に入れることができるけれど、雰囲気を感じながら手に入れるとそれも思い出になるのではないか。

Pen and message.という店の名前にはそんな想いを込めています。

雰囲気とか世界観とか、つかみどころがなく切り取って売れるものではないけれど、商売人が口にする言葉ではないのかもしれないけれど、そんなものを大切にして、表現していきたいと思っている。


SkyWindさんのイベントを10月27日(木)~11月10日(木)に開催いたします。

SkyWindさんに出会って10数年が経つけれど、はじめからご自分の型を持っているすごい人だと思って、まぶしく見ていました。

写真作品をポストカードにして製作し始めた時も、自然の成り行きのように思えて、SkyWindさんらしいと思いました。

SkyWindさんの作品は当店でしか扱っていなくて、それをとても自慢に思っている。

いつも買って下さるお客様がおられて、ファンがついているけれど、もっとこの世界観を広めるのは当店の役割で、それができていないことに申し訳なく思っている。

売っているものはポストカードとミツロウ引きのブックカバーで、モノで言うとそれまでだけど、それらの作品にはSkyWindさんが心動かされた風景やモノが写されていて、世界観が表現されている。
そして、それを観て私達もまた心動かされる。

期間中の木曜日10月27日、11月3日、10日にSkyWindさんが在店して下さいますので、どうぞご来店下さい。SkyWindさんの世界観を示して、それに浸ってもらえるイベントにしたいと思っています。