元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

文集作品の募集

2014-06-30 | お店からのお知らせ

一昨年の,皆様の「はじめての万年筆」の原稿を綴った文集「雑記から」は創業当初からやってみたかった企画で、やっていて楽しかったし、第2弾、第3弾と続けていきたいと思いました。

第1弾が完売したら、2弾目に行こうと思っているうちに丸1年が過ぎてしまい、まだまだ完売しそうにありませんが、第2弾を作ることにしましたので、掲載させていただく作文を募集いたします。
 

今回のテーマは「一番愛用している万年筆」です。

今使われている万年筆の中から1本だけをお選びいただいて、その万年筆について語っていただきたいと思います。

その万年筆の好きなところ、エピソード、用途、入れているインクなど1000文字以内にまとめていただいて、お寄せ下さい。

締め切りは9月30日(火)です。
 

今回のテーマも万年筆の販売を生業にしている者として、皆様のお手元に行った万年筆がどのように使われているかとても興味があります。

万年筆を1本しか持っていない人も、万年筆について詳しくないと思われている方も気になさらずにご投稿下さい。

多数ご参加お待ちしております。


優しい気持

2014-06-29 | 実生活

販売職の人は皆そうですが、来られたお客様に対していつも優しい気持を持っています。

そうでないとこの仕事は上手くいかないと思いますし、本人もしんどくてやってられない。

いつも優しい気持を持っているけれど、それがスマートに表現できたら何となくその後の会話ややり取りがスムーズにいくけれど、その表現に失敗したら誤解されないだろうかと、心配になったります。

お店などを訪ねたときに、いつも何かの説明をしてきたり、話しかけてくるような人もおられるけれど、私はそういう人に当たると、居心地が悪くなってしまって、すぐにでもお店から出たくなります。

商品をブラブラと見ている間は泳がせてくれて、用事があるときにお店の人を探そうとしたら、すぐに察して伺ってくれるというのが理想なのかもしれない。

話しかけたり、後ろをついてまわったりするわけではないし、見ているわけでもなく、他のことをしながらでも心を留めていて、何かを察したら応えることができるようにしているということが、上質な接客なのだと思っています。

茶道でも直接言葉をかけるわけでもないし、じっと見ているわけでもないけれど、お客様のことを亭主はいつも気にかけて、そんな心配りがいい。

でも何でもそうですが、どんな優しさを求めるかは、お客様によって違いますので一概には言えなくて、そこはお店の優しさを貫くか、お客様の求める優しさに合わせるのかは、お店のセンスなのかもしれません。

 

優しさの表現は日常生活でも問題となるところです。

私はずっと、ごく最近まで、優しい気持を持っていても、それを言葉にすることに抵抗がありました。

その気持ちを言葉にすることによって、表面的な、白々しいものになってしまうように思えたからです。

以前誰かに言われたことがありますが、私が言葉というものを信じていないからだということかもしれません。

でも優しい気持を持っていても、それを言葉にしなければ相手に伝わらない。

最近になって、いろんなところでそれを伝えられるように努力していて、少しは自然に伝えられるようになってきたように思っています。


WRITING LAB.

2014-06-24 | お店からのお知らせ

よくライティングラボって何?と聞かれます。

私たちがライティングラボオリジナル商品などをよく紹介したりするけれど、その説明がちゃんとできていなかったということで、申し訳なく思っています。

ライティングラボは一言で言うと、当店と山科のインディアンジュエリーショップ“リバーメール”との共同企画ブランドです。
 

ライティングラボの起こりは、4年前に駒村氏が当店に来られたことに遡ります。

駒村氏は以前から当店の前を通っていて、そのうち入ってみようと思っていたそうですが、その日はたまたま時間に余裕があったそうです。

他のお客様がおられない平日の夕方で、駒村氏が入ってきた時、何となくどこかで会ったことがあるという既視感のようなものがありました。

後で聞くと駒村氏は会ったことはなかったと言うし、私にも記憶はありませんので初対面だったと思うけれど、何となく特別な縁のようなものを感じる、自分と似たものを感じた出会いでした。

その後であまり自分のことを語りたがらない駒村氏から聞いているうちに、私とどこが似ているのか全く分らなくなってしまったけれど。

そういえばライティングラボに参加してくれているS藤氏もプライベートのことは饒舌に話すけれど、自分の経歴や仕事のことになると急に口が重くなる。

駒村氏とは、しばらくして閉店後などに会ってお互いの仕事のロマンなどを話すようになり、それが少しずつ具体的な形になりオリジナル商品を作るようになりました。

何の打算もなく、ただ気が合う者同士が始めたプロジェクトですが、少しずつ形を変えて3年以上続いている。

リーバーメールと当店、そして今東京に単身赴任中のH兄、いつも当店で家の用事をしているS等氏などメンバーそれぞれの役割のようなものが決まってきて、それぞれが良い味を出し始めたと思っています。ライティングラボのブログもたまにとても面白いし。ライティングラボのブログ→ http://writinglab.jp/

ターゲットとかコンセプトとか考えることは駒村氏もそうだと思うけれど以前からよくやっていて、とても楽しい作業だけど、ライティングラボではそういうお守りを持たず、ただ自分たちが作りたいものをオリジナル商品として作っていくというやり方をしています。

それは油断するとバラバラになる危険性をはらんでいるけれど、何とかバランスをとりながらやって行きたい。

毎週土曜日に仲間と集まる楽しさとか、個人事業の先輩たちから教えられることもあって、売上などと関係ない部分でも私にはなくてはならないものになっています。

 


ヒントを探して

2014-06-22 | 仕事について

最近、手帳作りの目的のためにフランクリン・コヴィーの「7つの習慣」を読みました。

読んだといっても、いくつかあるものの中から迷わず漫画版を選びましたので、読んだという感覚とは少し違うけれど。

分厚いフランクリン・コヴィーの言葉で書かれたハードカバーを読む方が味わい深く「7つの習慣」の世界を感じることができるのかもしれませんが、そんな時間的な余裕がなく、すぐに理解して、吸収したいと思いました。

でもこういう時にカッコつけずに漫画を選ぶことができるようになった自分は、もしかしたら成長したのかも?と何となく思ったりします。
やはり漫画で描かれたものの方が私には理解しやすいことが多いようで、この辺りのこだわりがなくなってきました。

「7つの習慣」はずっと以前から、おそらく10年以上前からその存在は知っていて、これまでも読んでみようかと思ったことが何度かありましたが、変な思い込みの先入観があって避けてきました。

読み始めるとなかなか面白く、ノートに書きとめておきたい言葉、考えばかりでノートが充実しました。

以前ある人から読んでおくように言われて、継続的に読んでいる論語と共通する考え方も多く、大変共感できました。

こういった古くから読み継がれてきた考えをベースに、ご本人の経験を踏まえて繰り返し考えられて、よく練られた考えを習慣にして、身につけるにはやはり手帳のフォーマットにして、繰り返し書かせることが一番伝わりやすく、習慣になりやすいのかもしれません。

でも、やっていて一番楽しいのは、自分が共感した考え方に基づいて、手帳のオリジナルの使い方ができて、それが仕事や生活に反映できた時かもしれません。

 

 


そういうものかも

2014-06-17 | 仕事について

ウチの車はフォルクスワーゲンのポロで、とても気に入って乗っている。

妻と二人で乗ることがほとんどで、遠乗りも兵庫県からほぼ出ることがないほどしないこともあって、小さな車を、しかも自分たちが買うことができる値段の高くない、でもしっかりとしたものという要求に応えてくれた車で、これ以上ない選択だったと思っています。

デザインの、小さいのにかわいい車の振りをしていないシャープさを持っていて、女性受けを狙うようなコビを感じさせないところもいいし、選んだ濃いブルーの色、それもメタリックではない、ベタッと塗ったような色もとても気に入っている。

パワーも充分で、アクセルを踏み込めば加速で不満を感じることは全くないし、7速DSGのマニュアルモードを使えば、ミッション車のように乗ることもできます。

私の好みで選んだ車だけど、私は電車通勤で、1週間のほとんどは妻がこの車を乗っている。

私よりもポロに乗ることの多い妻が最近その愛車に呆れ始めている。

ボロが我家に来て3年になり、最初の車検を今夏受けるのだけど、すでにリコールによる修理を3回受けている。

車を修理に出すということが、妻は不安で気に入らないらしいですが、私は自分たちの負担ではないし、何か外車らしくていいやん、と笑っています。

確かに今まで乗ったトヨタもスズキも三菱にもリコールなんてなかったし、車検以外で修理工場に車が入ることなどなかったので、一人でいる時に突然車が走らなくなったらどうしようと、不安に思う気持も分らなくもないけれど。

でも壊れない、メンテナンスフリーな車と、長く愛着を持って乗ることができる車というのは絶対に違うと思っていて、何回リコールがかかっても、修理に預けることがあっても、気に入って乗っているのには変わりがない。

妻の評判は悪くなってきているけれど、週1回の休日をより楽しいものにしてくれている役に立っている、愛車の話でした。

 


口コミ

2014-06-15 | 仕事について

店を始めて6年9ヶ月が経ちますが、店の告知として口コミが一番強いことを実感し続けた年月でした。

それまで予備知識として口コミがお店にとって一番宣伝効果の高いものだということを本で読んだりして知っていましたが、それは知識としてあるだけで実感することは少なかった。

でも店を始めてから来られるお客様の多くが、知り合いから教えてもらったという理由で、やはり信頼できる人から聞いた情報が一番人を動かすのだということがはっきりと分りました。

インターネットで検索したとか、雑誌で見たという人もいなくはないけれど、人の紹介にはとても及びません。

始まって間もなくの、お客様が全く来なかったこの店を救ったのも口コミでした。

今もはっきりと覚えているけれど、ある女性のお客様が当店で万年筆と出会って、たくさんのお友達に万年筆と当店を紹介してくれました。

それからはっきりと分るほど、流れが変わっていきました。

9月に開店した年の年末頃の出来事で、それがなければ当店はいまこうして続いていられるかどうか分らない。

それを経験しているから、よく店に電話がかかってくるSEO対策とか広告を出す話に全く興味が持てない。

店の告知としてやるべきことはひとつで、人に紹介したくなる店、安心して紹介できる店であるということだということでした。

インターネットの検索でトップに表示されるように様々な努力をしても、お金をかけて広告を出したとして、もちろんそれらにも効果はあるかもしれないけれど、口コミの効果には及びません。

それは自分の店ではどうしようもない、消極的で他力本願な告知方法だと思えるかもしれませんが、地味の思えることの積み重ねなのかもしれません。

こうやって考えると、お店が続いていくかどうかというのは本当に実力を超えた運次第で、そういった人に会えるかどうかが命運を握っていて、立地とか、設備、品揃えなども大切だけど、その次の要素になるのではないかと思っています。

情報には必ず意図があって、それがどれが本当か分らないほどたくさん溢れている現代だから、余計に口コミの信頼性が貴重に思えます。


良い言葉

2014-06-08 | お店からのお知らせ

私が言ったり、書いたりすることの全てのものは、本で読んだり、誰かから聞いたりしたことです。

別にそれを恥じるつもりはなく、伝えるということはそういうものなのだと思います。

ただ、誰かが言ったことを自分の理解も曖昧なままそのまま言うと、それは受け売りだということになります。

自分で理解して、自分の言葉に変換して、自分の体験や考えと合わせて実感できれば、その言葉が自分のものになったと思い、その言葉の出所なども忘れてしまい、自分の頭の中から自然に生まれた考えだと勘違いしていることもあります。

何度も本棚から引っ張り出して読む大切な言葉が書かれた本があります。

とても大切なことが書かれているのに、しばらく読まないと忘れてしまうのでまた読み返す。

その言葉や心を忘れてしまうあたり、良い考えや言葉が身についていないと思いますが、そういうものこそなかなか身につかないのかもしれません。

例えば尊敬する経営者が書いた論語を引用した心構えを解いた本などは、それを読んだばかりの時は自分も素晴らしい人間になろうと強く決意しますが、しばらくすると緩んできてしまう。

すぐ利くけれど、飲み続けないと効果が切れる薬のような感じ。単純なので簡単に影響されるけれど、忘れるのも早い。

きっとこういうことを私は繰り返しているのだと思いますが、でも以前の自分よりも今の自分の方が良い人間でいたい。過去の自分を誇らしく思いたくなく、過去の自分はいつも反省するべき対象でい続けたい。

良い言葉を読む、良い考えを身に付けるということは、それが楽しいからですが、教養のようなものを身に付けることは、道に迷わないようにするためであり、身の回りにある脅威を恐れずに立ち向かえるようにするためなのかな、と思っています。

 

すこし違うかもしれませんが、若い頃、販売の仕事を始めたばかりの頃、商品知識が自分の身を守るのだとある上司に言われたことがあって、それは仕事の経験を積むごとに実感していきました。

知識のない人はやはり無防備で、何かのトラブルに巻き込まれやすい。知識を身に付けることは、逃げない心の強さと立ち向かう勇気を持つことにつながることは販売員にとって、何よりの言葉だと思います。


ある日突然変わるペン先

2014-06-03 | 万年筆

よく使う万年筆は使い続けて2年くらいしたら、ある日突然書き味が劇的に良くなります。

私が使ってきたものはだいたいそうでしたので、わりと一般的なことだと思いますし、私の書く量でそういう感じなので、もっと書く人はもっと早いのかもしれません。

ペン先の初期状態で、食い違いなどの修正事項があれば修正しないといけませんが、私はほとんどの場合最小限の調整しかしないで使い始め、書くことで慣らしていくことを好みます。

最小限の調整なので、書き出しが出ないことや、インクかすれを気にせずそのうち出るようになるさと使い続ける。

普通に書けるようになるまでには、2年もかからずに書けるようになります。

きっと最小限の調整をして書き込んでいっても、完璧な調整をして使い続けても、ある日突然劇的に書きやすくなる時は等しく訪れるのだと思います。

使い始めたばかりの頃、ペン先が硬くて何てつかいにくい万年筆なんだと思っていたペリカン1931ホワイトゴールドは2年ほど使ったある日突然、インクが気持ちよく出るようになって、急に書きやすくなりました。

同じペリカンのM450も、書く時にいつも少し力を入れる必要があって、手紙などには使いたくないと思っていましたが、メモで使い倒すうちに、紙に置くだけでフワッとインクが出るようになって、とても気持ちいい書き味になりました。

アウロラ88はかなり使っているので、劇的に書きやすくなったのはだいぶ以前のことですが、最近では相性が悪かったペリカンのインクでも何の問題もなく、ヌルヌルとインクが出て書きやすい。

こういうことを経験すると、万年筆以外で文字を書きたくなくなるし、これを多くに人に知ってもらいたいと思いました。

お客様のペンを調整して、始めから書きやすい万年筆を使っていただけるようにしている私が、書き続けることで慣らしていくことを伝えることは矛盾しているように思うけれど、何も手を入れずに書き慣らすスタートラインに立っているペンもあれば、スタートラインに立てるレベルまで持っていく必要のあるペンもあって、これを見極めることができるのも、ペン先調整の技術のひとつだと思っています。

そして、始めから完璧に書けるものを求めるのならペン先調整で書き方に合わせるというやり方もあるということになります。

店でお客様とよく言い合っているのは、ある程度集中的に使った方が万年筆は書きやすくなりやすいということで、使い始めたばかりの万年筆があった場合、何本も使い分けるのではなく、それだけを持ち出して使った方が上手くいくのかもしれないということです。

万年筆を使い込む上でこれが正解というものはないけれど、万年筆を仕事道具として使っている人の話で、そう思っている人も多いのではないかと思います。