元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

書く生き方

2015-10-27 | 実生活

私物のオリジナルペンレスト兼用万年筆ケースコンチネンタル 味が出てきました

 

手書きの魅力は?と聞かれて困ってしまうことがよくあります。

それだけ万年筆を使わない人との距離が知らないうちにできてしまったのだと実感してしまいますが、自分のとって万年筆で書くことが当たり前になっているし、手で書かなければノートや手帳は何で書くのかというふうに思ってしまいます。

その場合の魅力とはきっと手紙などのパソコン文字に対して肉筆の魅力ということなのかもしれないので、その時は少し大袈裟に思われるかもしれないけれど、生き方が表れるのではないかと答えます。

必要に迫られていないのに、仕事でも何でもないのに文字をノートや手帳に書いたりすることを、そういう習慣のない人から見ると信じられないことだと思います。

書く習慣のある人とそうでない人の違いは、万年筆を持っているという理由ではなく、もっと根源的な部分、書くという生き方をする素養があるかどうかではないかと思っています。

自分はたまたま書く生き方をする素養があって、書くことを一番楽しくできるものは万年筆だと直感的に感じて使うようになった。

万年筆の存在には、書く生き方をする人ならすぐに気付くと思います。

私の役割はその素養がある人と万年筆を引き合わせることなのではないかと考えるようになりました。
その役割を請け負うようになったのは、きっと今まで自分が経験してきたこと、環境などと関係があるのではないか。

勉強は全くしなかったし、やりたいことも、将来自分が何をしているかもイメージできない情けない高校生活を28年前に送っていたけれど、その時から自分は書くことが好きだということには気付いていました

書くことが好きだったので万年筆には憧れていたけれど、まだ自分の使うものではないことも分かっていました。

卒業した高校は神戸市西区の町外れ(当時)にあって、勉強が得意な子が来る学校ではなかったと言うと同級生たちに申し訳ないけれど。

自分では学校教育の落伍者だと思っていて、高校時代のことはあまり振り返りたくないと思っていたけれど、それも今の自分の役割に関係あるのではないかと思い始めています。

同級生たちは難しい大学や大きな会社には行かなかったけれど、それぞれオリジナルの生き方を見つけて、目をキラキラさせてそれを実践している。

そんな彼らの活躍を見聞きすると、とても励みになりますし、誇りに思います。
自分も自分なりの道、役割を堂々と全うしたいと思います。

あれから28年も経って、今自分の店に来てくれる同級生たちからエネルギーをもらえることに、不思議な縁のようなものを感じて有り難く思っています。


近江八幡を訪ねる

2015-10-25 | 実生活

毎週水曜日に行っている書道教室が休みだったので、遠出したいと思い夫婦で近江八幡に行ってきました。

主に新しくできたラ・コリーナ近江八幡に、焼き立てのバームクーヘンを食べに行くという目的でしたが、観光もしてきました。

ラ・コリーナは近江八幡の町外れに新しくできた、たねや/クラブハリエのテーマパークとも言える施設で、小山のような屋根に芝生をひいた建物が中に何があるのかを期待させてくれます

ユニークな建物の内装は素朴で、明るく、とても気持ちの良い場所でした。焼き立ての柔らかく温かいバームクーヘンもとても美味しく、1本丸ごと買って帰りたいと思いました。

八幡山ロープウェイで山頂に上がって、町を見渡しました。
山に囲まれた町で靄も濃く、大好きな遠景は見られなかったけれど、近江八幡のコンパクトにまとまった市街地いつまでも見ていたいと思いました。

何本かの通りがあり、碁盤の目に区画された旧市街はあまり大きくなく、町自体もそれほど大きくありません。

観光地区はさすがに多くの人が行き来して賑やかでしたが、観光地区から一歩外に出ると地元の人の生活が感じられる、人通りの少ない住宅地でした。

どこの観光地に行っても同じような想いを抱きますが、賑やかで高揚感さえ味わうことができる観光地区と、その違いがあまりにもあって、その寂しいとも言える風景がかえって心に残っています。

日牟禮神社やお堀の周りを歩いたりして過ごしてから、またお茶にしました。

全国的に知名度のあるクラブハリエが近江八幡を盛り上げているように見受けられ、観光地区の中心にも立派なお店がありました。

たねやの日牟禮ビレッジで、予約しておいた洋館の部屋でお茶を飲みました。

他にそんなことをしている人はいなかったけれど、そういうことができる奥行きを持っていることがお店として大事だし、一度訪れたお客様が次はあそこでお茶を飲もうと思うかもしれません。

1時間半もいることができ、かなりゆっくりとした時間を過ごしました。

 

自分たちの利益と同じくらい相手の利益や地域のことを想う。
そしてそれは巡り巡って自分の利益になればいいという近江商人の共存共栄の考え方、「三方よし」の商売哲学は今も通用すると思います。
それはむしろこれからの時代において最も大切にしないといけない考えだと思っています。
やっと自分の商売の考え方の原点になっている町を訪れることができました。

神戸まで片道2時間、帰りは大きなコスモス畑で遊んでいたので、2時間45分かかり、同じ近畿なのに近くはないけれど、遊べて、考えることができた良い休日になりました。

 


目に見えない力

2015-10-20 | 仕事について

当店で商品を買って下さるお客様がおられるのは、私が知らないところで大きな力が働いているからだと本気で思っています。

もちろん自分の意志でPen and message.に来ているよと言って下さるお客様もおられると思います。

当店に初めて来られたお客様に聞いてみると、一度当店に来られたことのある人から話を聞いて来られたという方がほとんどです。

人伝え、口コミというものがお店にとって、とても大きな力になっていると考えると、はじめに書かせていただいたことも現実からそう離れたものではないと思えてきます。

店は、掃除をしたり、商品をお揃えたり、そこで買いたいと思う理由付けをしたり、最低限の努力はしないといけないけれど、自分が売っているとか、お客様が集まってくるというふうに考えない方がいいと思います。

大きな力が働いているからこそ、お客様は当店で買って下さっている。お客様が来て下さっている。

お店は謙虚にいないと、慢心や傲慢な態度はきっといろんなところに表れてツキも離れていく。

商売では理論だけでは説明がつかない向きとかツキのようなものが、どうしてもあります。

それは賭け事においてのツキとも、神様に頼んでツキを呼ぶというものとも違っていて、ツキが向く朗らかな人間でいるということしかできないけれど。

賭け事も神頼みも、自分で努力しないでただ向いてくれるのを待つというと怒られるかもしれないけれど。

大きな力を信じて、大きな力が向いてくれる店であるように努力する。

これを心掛けたいと思っています。

 


神戸の夜

2015-10-18 | 実生活

先週の日曜日、東京の大学に通っているMT木さんが2か月半振りに神戸に来られました。

S等さんと待ち合わせて、ル・ボナーさんに寄ってから夕方に二人揃って来られました。

夕食に行くと約束していたのに、二人は4時にインドカレーを食べてお腹いっぱいだと言うので、お腹を減らすために閉店後ハーバーランドまで歩いて行くことにしました。

いつも元町周辺で食事をしていましたでハーバーランドまで行くというのは、初の試みでした。

25分も歩くとハーバーランドにつきます。

ハーバーランドは、私たちが大学生の頃に街開きして、その後廃れたり、テコ入れして盛り返しそうになったり、再び廃れたりを繰り返しているのずっと見てきた街でした。

ここ数年は、リニューアルが成功して、かなりお客様が来られている様子です。
外国の方々も多くおられます。

夜になると真っ暗になって、人通りもまばらになる元町と違い、イルミネーションが煌々と灯り、観光に来てくれた人たちでごった返していました。

どこのお店も長い行列ができていて、夕食をとるにはかなり待たなければいけなかったけれど、待っている間に近くのお店を見たり、MT木さんは写真を撮ったりして、二人にとって良い腹ごなしになったと思います。

食事後、また歩いて元町まで帰りました。

神戸の港の夜景を見ながら、MT木さんは夏頃買った扱いの難しいシグマの一眼レフと格闘しながら夜景を撮り、S等さんはさっきまで話していた以前仕事のために住んでいたシドニーを思い出しながら、物思いに耽っていました。

私はカメラを持ってくるのを忘れたことを恨めしく思いながら、道行く人たち皆がとても幸せそうに見える観光地独特の雰囲気を楽しんでいました。

気持ち良い夜の風の吹く中での散歩。普段なかなか行かないけれど、MT木さんが私たちに会いに来てくれたから楽しむことができた、神戸の夜でした。

MT木さんの作品


手帳に惹かれて

2015-10-11 | モノについて

手帳について、私も1年中考えている。

それは仕事において必要な道具だからとか、生活においてなくてはならない羅針盤のようなものだからというキレイごとを言うつもりはなくて、ただ手帳が好きだからということにとっくに気付いている。

以前は手帳が仕事へのモチベーションを高めてくれる役に立つと思っていました。

たしかに私たち手帳好きにとってはそうかもしれないけれど、一般的な話ではない。

私たちは手帳を使わない人、例えばスマートフォンでスケジュール管理などを行っている人について、あまり楽しそうでないと思ってしまうけれど、楽しいかどうかで手帳に書き込んでいる人はあまり一般的ではないのかもしれない。


一般的ではない手帳愛好家同士は、人が使っている手帳に影響を受けるという悪い癖を持っています。

自分で今の手帳のシステムは完璧だと思っていても、人が使っているのを見るとそれも使ってみたくなってしまう。

私は手帳好きの人のその悪い癖を突いて、皆さんも一緒に当店のオリジナルダイアリーを使いましょうと影響を与える方だということを時々忘れてしまうことがありますが、ぜひ当店のオリジナルダイアリーを使っていただきたいと思っています。

正方形ダイアリーには、日付入りのウィークリー、マンスリーの他に日付なしの1日1ページ、横罫や方眼罫があって様々な使い分けができて、クリエイティブな心をくすぐっていると思っています。

手帳を使っていない人を見て、よく仕事しているなあと思うことがありますが、その人も立派に仕事していて、あまり手帳は関係がないかもしれない。

ちなみに本についても、私は好きだから四六時中何か読もうとしていて、荷物の中に活字がないと不安になってしまうけれど、本を全く読まない人もいて、その人も私以上に立派に仕事していることを知っているので、読書の量と仕事もあまり関係がないのではないかと思っている。

話しが反れたような気がしますが、仕事に生きるかどうかは使われる人次第だけど、書くこと、手帳について考えることが楽しくなる手帳なら当店にあります。

現在、オリジナルダイアリーの革カバーもル・ボナーさんが製作して下さっていて、10月末には出来上がる見込みです。

当店のオリジナルダイアリーを使っていただいた結果、皆様の仕事も楽しくなればいいなと思っています。


47歳の心境

2015-10-04 | 実生活

47歳になった。

さすがに誕生日が来て嬉しいという気持ちはありません。それよりも齢をとったことで、自分にかかっている責任の重さや残り時間が少なくなっていくような焦りを感じます。

でも今までほとんど病気らしい病気もしたこともなく、元気に生きてくることができたことには有り難いことだと、とても感謝しています。丈夫に作られたことはとても恵まれたことで、何よりの自分の長所だと思っている。

せっかく元気でいるので人生の時間が確実に少なくなっていくのをただやり過ごしていくような、人生を長いヒマつぶしにはしたくないと思っている。

もがいても、さ迷っても、カッコ悪くてもいいから、自分で決めた方向に自分の意志で歩きたいと思っています。

最近よく思うのは、自分らしく、自分らしいやり方でやればいいということ。
一瞬、ネットを検索したり、本を読んだりしようとするけれど、まず自分の頭で考えることが大切だということをよく考えます。
自分の正解は必ず自分が持っていると気付きました。

仕事は、学校の勉強と違って、共通の正解はなく、自分のやり方が通用するので、教科書通りすることが苦手な私は自分のやり方をすればいいんだと思うと、気が楽になります。

それらもこの齢になったから言えることなのかもしれないけれど、自分らしいやり方が許されるのだということを、もっと若い時に知っておきたかったと思っています。

自分らしいやり方で、できれば周りにいる家族、友人、知人、日本、世界の人たちを自分の生によって、少しでも幸せにできたらと思っています。
もちろん自分のできることなど知れているけれど、自分が生きて、何かすることで関わる人が少し幸せを感じてくれるようにしたい。

誰でもそうだけど、去年よりも今年。今年よりも来年を良くしたいと思っていて、それは仕事でも日常生活でもそうで、良くしたいという気持ちは生涯持ち続けたい。

47歳になったから特別に何か、ということはなく、節目節目に背筋を伸ばさないとダラけて、楽に流されてしまう自分はずっと変わっていないけれど。