元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

年代

2011-08-31 | 仕事について

休日、用事があって垂水の町に出ることもありますが、そういう時に必ず立ち寄るのが垂水駅東口すぐにあるアインショップです。

アインショップは海外で買い付けてきたり、仕入れた国内のものを扱っている独特のセンス(なんというジャンルか知りませんが)が感じられる雑貨店です。

加古川の1号店から始まって、元町海岸通、東京、京都などに次々とお店を出して、一昨年垂水にも出店されました。

このアインショップを経営されているのはOさんご兄弟で、弟さんが当店に来て下さったりしたこともありました。

そういったこともあり、アインショップのことはいつも気になっていましたし、私よりも年下の若い二人の活躍は励みになり、勇気をもらえます。

私よりも5歳若い駒村氏も自分の仕事を軌道に乗せて新たな仕事をしようと私たちとの仕事に取り組もうとしている。

大学生の時に会社を立ち上げて大きな成果を上げて、いろんなことを私に教えてくれたSさんも駒村氏と同じくらいの年だった。

仕事のキャリア、成果や内容に年の差は全く関係がないけれど、余分な時間長く生きてきた人間として、若い人たちの活躍を見るのは何となく心にさざなみが起こるのです。

人と比べたりとか、同じようにしたいとかではなく、もっと精一杯できるだろうと思うのです。

会社で仕事をしている私と同じ年代の人たち皆が同じように思うのだろうか。

40代半ばに近く、体力もスピードも若い人にはかなわなくなって、私たちの年代の持ち味というと経験ということになるけれど、世の中の構造も何もかも変わってしまったので経験はあまり役に立たない。

それでもリーダーとして生きていかなければいけない私たちの年代。

フレッシュな気持ちと楽しんでやろうという遊び心を持ち続けて生きていかなければいけない。


なりたい仕事

2011-08-30 | 仕事について

小学生低学年の時、先生の日本で一番偉い人は誰だと思いますか?という質問を生徒にして、多くの子が総理大臣だと答えたのをなぜかよく覚えています。

なぜいまだにそんなことを覚えているかというと、果たして本当に偉いのは総理大臣なのか、そもそも偉いとはどういうことなのかと、子供心にいろいろ考えたからです。

その答えがどうなのかという議論はとりあえず置いておいて、昭和の子供達にとって日本の総理大臣はそのように映る雲の上の人という存在で、別世界のテレビの中だけの人でした。

その人たちはとても高潔そうには見えなかったけれど、でも何かやってやろうというような野心ギラギラしているような気がしました。

それがいいのか悪いのかわからないけれど。

でも最近の総理大臣は、それになるのに精一杯でなってからどうしてやろうというような想いがあまり強く感じられない。

それも悪いと断言することはできないけれど。

 

なるのに大変な努力がいる仕事を目指している人の中には、その仕事に就いてからどうしたいかというプランのない人がいるという。

確かに子供の頃、先生から何になりたいですか?と聞かれた時に、その仕事についてどうしたいということまで考えなかったし、皆もそうだったような気がします。

でも私たちのような仕事はよかった。

ほとんどの仕事はおそらくそうだと思うけれど、なるのはとても簡単で、今日から私が万年筆屋ですと名乗ればそれから私の万年筆屋としてのキャリアがスタートするし、大切なのはなってからどうするかだから。


店主のポーカーフェイス

2011-08-29 | 仕事について

万年筆の委託販売を始めて3年半が経ちました。

最初感覚がつかめず、特に値付けにおいて難しいと思いましたが、さすがに最近は理解してきました。

持ち込んで下さるお客様は少しでも高い値段で売りたいと思うのは当然であるし、私は少しでも安い値段で売りたいと思う。

値段を少しでも安くした方が、その万年筆が売れる可能性は高くなります。

売ろうとした決心したペンが結局売れずに元の出し主さんのところに戻るというのは何となく寂しいものだと思いますので、なるべくそれは避けたい。

預かった時に憎まれても、後で笑っていただけるように、私は1円でも安い値段を付けようとしています。

持ち込まれる万年筆の中には、私が心から欲しいと思っているものもあります。

そういう時には心が激しく揺さぶられて顔に出そうになりますが、なるべく表情に出さないようにしています。

表情を変えずに、何食わぬ顔でお預かりの業務をこなします。

私が良い反応をしてしまっては、出された方が過度に期待してしまうという心配からですが、これがまさしくポーカーフェイスなのだと思います。

委託販売は、新しい万年筆はほしいけれど家に使っていないもがたくさんあるから、新しいものを買うのに気が引けるという多くのお客様の声に応えた取り組みで、私たちのような万年筆店にはあるべきだと思っています。

次に何が来るのか分からない。私にはコントロール不可能なコーナーですが、日々何らかの動きがある。

当店で最もめが放せない場所になっています。

 


工房楔

2011-08-28 | 仕事について

恒例の当店開店記念の 工房楔 のイベントを今年も9月23日(金)から25日(日)まで開催いたします。

工房楔の永田さんが納品のために昨日当店を訪れてくれました。

1ヶ月に1度の訪問時、新作のお披露目なども居合わせたお客様方にしていますので、その訪問はちょっとしたイベントのような感じで楽しめるものになっています。

激しい夕立で外に出ることができないような状況の中での小さな楔イベントでした。

それはそれぞれの作品についての説明、材料の解説を作られた本人から聞くことができる機会で、イベントはお客様方にとってはその訪問の延長にあるものだと思っています。

最近は銀座伊東屋さんに請われて商品を置くようになって、工房楔の知名度は全国的に少しずつ高くなっていると思っています。

少しでも多くの人に工房楔のモノを見てもらえる要素として、銀座にその場所があるということはとても素晴らしいことだと思っています。

雨上がりとともにお客様方が帰られましたので、駒村氏と工房楔の永田さんと打ち合わせを始めました。

情熱というか、気持ちというか、そういったものが先走る私たちと対照的に永田さんは意外と(?)理論的で整然とした考えを持っている。

それはきっと木工において今まで様々な試行錯誤をした上で、要らないものを捨ててきたことが理由なのかもしれないと思いました。

でも私たちの気持ちを汲み取ってくれて、自分の楽しみにも換えようとしてくれていました。

雨が降っていたこともあって、近くの焼肉やまなかで食事をしながら、話の続き、まだ話し足りずに当店で缶コーヒーを飲みながらさらに話の続き、12回の鐘の音を聞くのと同時に解散しました。

 


宿題

2011-08-27 | 仕事について

毎年今の時期(もう少し遅かったかもしれない)になると家族総出(といっても4人)で妹の宿題をするというのが恒例になっていたことを思い出します。

けっして我家の恒例行事だと胸を張って言えることではないけれど、娘に甘い親が手伝い始めて、気が付いたら夏休みの終わりを優雅に過ごすはずだった私も巻き込まれていた。

本当は自分の宿題は自分でやらなければ片付かない。誰かがやってくれるという考え方を持つべきではなく、やらないならやらないなりに自分でその代償を負うべきなのだけど。

そういう私も小学校の頃は、宿題が手につかず夏休み後半に長野の家で半泣きになりながら百字帳をした記憶があって、その苦い思い出が今も生きている。

でも昨日は久し振りに、宿題に追われた子供の頃の記憶が蘇えりました。

朝からずっとノートに向かって、図面らしきものをシャープペンシルと消しゴムで書いたり、消したり。

そういえば万年筆をいつも使っているので消しゴムのカスの存在を忘れていました。

息子は勉強が終わったら、ミドリというメーカーの走らせると消しゴムのカスを拾ってくれる車をテーブルの上を走らせているけれど、自分が小学生の時どうしていたのか全く思い出せない。

母に嫌な想いをさせていなかったらいいけれど。

話を戻すと、締め切りに追われていたけれど、描きたい絵はたくさんあって、あとは作業だけという状態だった。

それは本当にありがたいことで、今日までたくさんの時間をかけて皆で話してきたからだと思いました。

決して要領の良いやり方ではないけれど、私たちはこうやってたくさんの時間をかけて話ながら、何かを作ろうとしていくのだと思いました。


お好み焼きの流儀

2011-08-26 | 仕事について

お好み焼きというのは作り方もそうですが、その食べ方において様々な流儀があります。

まずマヨネーズをかけるかどうかの問題。

マヨネーズはお好み焼きをよりまろやかな味わいにしてくれますが、こってりした感じになります。

昨晩はかけませんでしたが、夫婦でいつも行くお好み焼き屋さんは20年以上行っていますが、いまだにマヨネーズがいるかどうか聞かれます。

「要ります」と答えますが、もしかしてその店ではマヨネーズをかけないのが正統派なのかと、最近疑い出しています。

女性は青海苔はあまり好みません。

私も歯についたりするデメリットあるわりにあまりメリットは感じませんが、気分を盛り上げてくれるものなのでかけることが多い。削り節はかけるでしょう。

お好み焼きや焼そばを食べながらご飯を食べるのは関西流と聞いたことがあります。

私はもちろん食べますが、焼そばの麺とご飯は一緒には食べません。ご飯と一緒に食べるのは焼きそばの場合は具です。

お好み焼きは充分おかずになります。

お好み焼きをコテで食べるのか、小皿にとって箸で食べるのかは粋っぷりが試されているようで、少し距離をおきたくなります。

コテで切りながら食べるのがおそらく正統で、これがかっこいいお好み焼きの食べ方だと思うけれど、私は子供の頃からどうもこれが苦手で、全部適当な大きさに切って小皿に取って食べる。

ご飯を食べながらだからこの食べ方の方が食べやすいけれど、私はこの食べ方はお坊ちゃんぽくて負い目を感じていました。

若い頃、友達をお好み焼きを食べるような時はかっこつけて(?)コテで食べていたけれど、それは自分の流儀ではなかった。

やはり全部切って小皿にとってから箸で食べるお坊ちゃん風(?)の食べ方が私らしく、この齢になったからそれも堂々と言ってしまえるわけです。


旅と机と

2011-08-25 | 仕事について

旅と書斎は万年筆の2大テーマではないかと最近思うことがあります。

 

どちらも象徴的な言葉として捉えていただけたらよくて、旅というのは外出、書斎というのは机上と言い換えることもできるかもしれません。

 

万年筆にはこの2つのテーマ、旅用と書斎用というふうに分けることができるのではないか、私たちは意識、無意識のうちの自分の持っている万年筆をこの2つに分類しているのではないかと思ったりします。

 

外に持ち出す旅用だから持ち歩いて失くしてもいいのではなく、書斎用だから愛情が薄いために机に置き去りにしていくのではない。

 

大切なペンだから旅に伴うし、同じく大切なペンだから机に残していく。

 

それは大型で長時間の筆記に適したM800だから机にあるとか、軽くてコンパクトなオプティマだから持って出る、というような単純なものではない。

 

もっと複雑な、使い手である私たちのそれぞれの万年筆への想いが、それぞれの万年筆に家を守る正妻と旅に伴う恋人の役割を与えている(私の私生活ではありません)のだと考えるとなかなか面白いと思いました。

 

ちなみに私にとって、最もきれいな文字が書けると思うほどそのバランスが合っていて、字幅も理想的で、ボディが金張りで好きなペリカン60は落としたり、失くしたりしたら大変困るのに旅に連れ出す。

 

小さめのボディでポケットに差しやすく携帯にも向いていると思われペリカンM450は書き味や力強いインク出など実用的にもデザイン上でも気に入っているけれど、机の上の万年筆です。

 

大きなボディだけど、なぜか旅をイメージさせるプラチナブライヤーは旅用。

 

同様に大きなボディで、インク出も多く、書き味も柔らかいので手紙用にも使えるオマスミロードも旅用です。

 

旅に伴う万年筆といつも机上にあってそこでだけ使う万年筆の違いは私自身にさえ説明できない、でもどちらの存在も私には必要で愛すべき万年筆なのです。


大和座狂言事務所葉月公演

2011-08-23 | 仕事について

明日(8月24日)千里中央A&Hホールで開催される大和座狂言事務所の公演を観に行きます。

大和座狂言事務所は、狂言を一般の人にもっと観てもらいたい。伝統芸能を観ることで忘れさられようとしている日本人としての誇りを持ち続けてもらいたいという想いで、中央の能楽団体とは距離を置いた独自の活動をされています。

狂言師安東伸元先生を中心にした、どちらかというとあまり大きくはない個人経営の団体ですが、活発に狂言の世界の活性化に努めておられます。

そういった活動を垣間見ていると何か万年筆を使う人を増やしたいと思って営業しているこの店の姿に近いものを感じたりしています。

私が大和座狂言事務所の活動を応援する(というのはおこがましいけれど)には、当店のような小さな店と同じで、その催しに参加することだと思っています。

年3回ほど開催される大和座狂言事務所の千里での公演にはなるべくお邪魔するようにしています。


教え

2011-08-23 | 仕事について

誰かと一緒に仕事をする時、この仕事は売れそうだとか、お金になるからするという尺度で始めてはいけない。

お金よりも、心から一緒に仕事がしたいと思える相手を選ぶことが大切だということを店を始めたばかりの時に、いろいろ大切なことを教えてくれた個人事業主の先輩から学びました。

それまで仕事というのはお金を稼ぐことで、お客様が喜んで下さって利益を生み出すことを最優先に考えて、自分の心というのは排除するべきものだと思っていました。

会社組織の一員としてはそういったことは考えにくいかもしれませんが、それが自らが会社運営の頭脳であり、手足である個人事業主の考え方でした。

その仕事からもたらされる結果優先で仕事をすることはもちろん間違いではなく、それもひとつのやり方ですがそれが長く続けることができた例は私の周りでは少なく、やはり自分の気持ちに正直になるということは大切なことだと思いました。

そして、仕事を始める時にまず自分がその利益を受け取ろうとしない。相手が良くなれば、自分も良くなることができる。

自分だけの繁栄など長くは続かないし楽しくない。周りの皆が一緒に良くなっていけるようにする。

小さなシェアの奪い合いではなく、皆で市場を盛り上げて大きくすることを考える。

目先の利益を追うと忘れてしまいそうになる、長く続いていくための大切な教えだと思っています。

 


シャープペンシル

2011-08-22 | 仕事について

もっと高級そうなものと出会ってそれを長く使いたかったですが、なぜかこのシャープペンシルを15年くらい使い続けています。

ロットリング300というシャープペンシルで、ロットリングの製図用シャープペンシルの中でも最廉価版だと思いますがなぜか使いやすい。

このシャープペンシルの使う易さについて考えてみたことがありました。

製図用のシャープペンシルはほとんどのものが先端に重心がくるようになっています。

おそらく定規に当てて、垂直に立てて線を引くときにそのバランスの方が使いやすいからなのだと思います。

そのバランスはどんな製図用シャープペンシルにも共通して言えることで、ある程度ペンを寝かして書く一般筆記では先端バランスは書きにくいと言われています。

このシャープペンシルも重量は大変軽いですが、先端の口金がバランスのアクセントになっていて、先端バランスになっています。

重心というのは絶対的な重量ではなく、全体重量の中のバランスだと、全体の重量の中でアクセントになれば重心となると、当たり前のことですが認識させてくれたシャープペンシルでもありました。

万年筆をなるべく使いたいと思いますが、鉛筆でないといけないこともあって、そういう時私はこれで普通に文字も書くし、絵のようなものも描きます。

使いやすい理由も分かりませんが、このシャープペンシルを使って今まで何かを考え出すような仕事をしてきてやってこれたので、これを使えばまた良いことが起きると思っているところもあります。

それにシンプルなデザインなのに赤のラインを入れて少しデザインしている。

そいうところも気に入っている理由なのかもしれません。

ロットリング300、最近お気に入りのペンテルAinクリック消しゴムとともに