元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

防疫と暮らしのバランス

2020-03-22 | 実生活


これは昨年の画像ですが、角の桜がチラホラ咲き始めました。

 

今の状態になって2か月が経ちます。
ウイルスの拡大防止に協力しないといけないけれど、今の何かに頭を押さえつけられているような状況に嫌気がさしてきて、そろそろ気分を変えたいと皆思い始めているのを感じます。

私たちのような店は、売上という成果が自分たちの給料になっているので、外の世界がどうなっていても店をまず開けないといけない。
世間は今も非常事態に近いものであることは分かっているけれど、もう一方の頭では自分の生活や店の運営という現実があって、バランスを取らないといけない。

専門家という人は自分の専門分野であるウイルスの拡大防止だけのことを考えていたらいいけれど、私たちの生活はそれだけでは成り立たない。防疫も大事だけれど、それだけを言っていられない。

本当は様々な専門家の意見を総括して政治がバランスをとるのかもしれないし、メディアもその責任を負っていると思っているけれど、どちらも様々な専門家の意見をそのまま伝えているだけに見える。
だから私たちは自分でバランスを取らなくてはいけないけれど、きっと先人たちは皆そうやって生きてきたのだと思います。

私たちに正しい情報が届いているのか分からないけれど、いろんな噂や報道で聞くわりには自分の身近な人で感染したという話を聞かない。

ウイルスを恐れないわけではないけれど、私はそれよりも自分たちの日常が立ち行かなくなることが怖い。そしてウイルスの拡大防止ということを振りかざして人を糾弾したり、今の混乱を利用しようとする人の心の変化が怖いと思う。

当店は今までコーヒーの提供を中止していましたが、本日から再開いたします。


すり替わる脅威

2020-03-20 | 実生活

今回のウイルスの件で、店として一番怖いのは風評被害だと思っていました。
もしあの店からウイルスが広まったという噂が(報道が)されることがあったら、きっと店の営業はできなくなるだろう。

噂(報道)の怖さを身近に感じたのは10数年前の新型インフルエンザの時で、最初に確認された患者さんが神戸の高校生だったので、神戸に降りた途端にインフルエンザの危険にさらされるような報道がされて、神戸から人が消えたことは私としてはリーマンショックよりも恐ろしい経験として心に残っています。

別に悪口を言うつもりはないけれど、私とよく似た名前の大阪府知事は今回の兵庫と大阪の往来の自粛を要請するという初の試みをやって、兵庫県という身近な共通の脅威の対象を大阪府民に示して、防疫に対して府民を団結させることに成功して株を上げるだろう。

でも兵庫県にはさらに人が来なくなるだろう。
コロナウイルスに感染している人が実際の数値が公表よりも100倍多かったとしても、それは兵庫県で考えると500人以上に一人という確立になるのではないか。それは大流行と言えるのだろうか。


私は実際のウイルスによる病気よりも噂(報道)や人の心が怖い。
実際の脅威は目に見えないウイルスなのに、人はどうしても人や場所など具体的な対象を見出そうとする。そして、そういうことだけは一人歩きしてどんどん広まっていく。今の時代は冷静に考えさせる情報よりも、感情に直接働きかける情報の方が伝わる。だから具体的な目に見える脅威を示す。


目的は情報を広めることではなく、ウイルスを克服することだけど、それがすり替わる、すり替える人がいることが怖いと思っています。
 


ふみぶみvol.2

2020-03-10 | お店からのお知らせ

冊子「ふみぶみ」のvol.2が入っております。ご希望の方はお持ち帰りいただけるようにしておりますのでご来店の際お申し付け下さい。

「ふみぶみ」は、手紙を書くことが好きで手紙を書く人を増やしたいという想いから、うちだまきさんが発行している冊子です。構想をお聞きして、原稿のご依頼をいただいた時に、この店を始めた時の自分の想いと重なり、協力することができたらと思いました。

うちだまきさんは、これをお仕事でしているわけではなく、その情熱で発行している。でもその情熱にほだされて多くの人が動いて、この冊子が出来上がっています。

濃い内容なのに、vol.1の後3か月後にvol.2が出来上がり、ペースの速さにうちださんの気持ちの強さをさらに感じて、気を引き締めてついていかないと置いて行かれると思い始めています。

仕事でしているか、そうでないか関係なく、こういう気持ちの強い人たちの活動に当店は支えられていると思っています。
店主がボンヤリしていても、まわりでしっかりした人たちが盛り上げて、動きを出してくれている。

カンダミサコさん、SkyWindさん、かなじともこさん、イル・クアドリフォリオの久内さん、工房楔の永田さん、ル・ボナーの松本さん、aunの江田さんをはじめとする多くの人たちに。

今も何も変っていないけれど、何も能力を持ち合わせていない自分がその情熱だけを持って店を始めた時、お客様も取引先の方も、多くの人が協力してくれた。能力やお金がなくても情熱を持っていれば協力してくれる人が現れるということを自分自身が経験しました。

逆にお金や知識、能力があっても、情熱がなければ仕事は続いていかないのではないか。
青臭いことを書いているのかもしれないけれど、きっとそういうことは時代が移ろっても変らないことなのだと思います。

 


ペンポイントを愛でる1 ペリカンM400細字研ぎ出し加工

2020-03-02 | ペンポイントを愛でる

ペン先調整をする時、ルーペでペンポイントを見ながら調整します。
たくさんのペンポイントを見てきましたが、人の顔と同じで2つと同じものがありません。必ずどこか違っています。
人の手で調整するものなので、そういう違いが工業製品であっても出てくるのは当然なのかもしれません。

一部のメーカーは機械で研ぐようにしているのか、同じような形のペンポイントになっているけれど、やはり寄りの加減などは違っている。

千差万別あるペンポイントをその人のお好みや用途に合わせるのもペン先調整の役割で、機械研ぎで均一なペンポイントが多くなってきても、ペン先調整の需要はなくならないと思っています。

万年筆の書き味をより良く、使われる方のお好みにすることが私の仕事だけど、ペンポイントを美しく仕上げたいという想いをいつも持っています。

ペンポイントの美しさも万年筆の見所のひとつになればいいと思っていますし、軸の美しさを楽しむのなら、ペンポイントも美しくあってほしいと思って、刀の波紋を鑑賞するようにペンポイントを鑑賞するようになればいいなと思っています。

私がいつもルーペで見ている美しいペンポイントを皆様にも見ていただけるように、デジタル顕微鏡なるものを手に入れて、人知れずセッティングを試行錯誤していました。何とか使えるようになりましたのでお披露目いたします。

これは私が手帳用に使っています細字研ぎ出し加工を施したペリカンM400のペンポイントです。
インクが入っているので、少し汚れなどが見えますがお許し下さい。

細字研ぎ出し加工では、通常では国産中細くらいになるM400のペン先を国産の極細や細字くらいの線が書けるように研ぎ出します。私は小さなミニ5穴システム手帳に書きたかったので、国産極細程度まで研ぎ出しました。少し面ができて滑らかに書けるようになっているのを見ていただけると思います。

毎日ペン先を調整しているので、ペンポイントを愛でるシリーズは、理解されなくても楽しいでこれからもしていきます。