元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

若き経営者

2010-04-23 | 仕事について

元町の海岸通(乙仲通という人もいます)には、たくさんの雑貨屋さんがあって、土日曜日にはたくさんの人で賑わっています。
お店はそれぞれ小さく、でもそれぞれの個性を出してがんばっていますが、入れ替わりも激しく、店を継続させることの難しさを感じさせます。
コンセプトのしっかりしたお店は残っているし、それがブレてしまったお店は無くなってしまいます。
売上げが下がった時にどうしても模索して、売り易いものにすがりついてしまい、結局お客様が離れていってしまいます。
店の業績が悪くなって、潰れてしまう過程は理解していますが、売上げが下がった時に泰然としていられる人は少ないと思います。
なぜなら売上げはお客様方が自分の店を支持しているかどうかのバロメーターで、その売上げでしかお客様がその店を良いと思って下さっているかどうか測る術はないのです。
そうやって考えると、店を継続するのは自分の弱い心との戦いであり、いかに自分の心をコントロールできるかが、最も大切なスキルなのかもしれません。
海岸通の東の入り口近くにアインショップhttp://www.einshop.jp/という海岸通に雑貨屋さんが集まり出した頃からあるお店があります。ユニークですが、とてもしっかりしたお店で、地に足の着いた感じは他のお店と一線を画しています。
アインショップを創業されたOさんがお客様として当店に来て下さっていて、お話を伺っているととても刺激になり、元気をもらっています。
アインショップは先日、私が住む垂水に6軒目のお店を出されました。
垂水の中では一等地とも言える立地です。
他にも新しいことをいろいろ始めておられて、ひたすら前に進む、Oさんの経営の勢いに感心しています。
業種ややり方こそ違いますが、私はまだ1軒目の店で必死なのにという気持ちも感じましたが、ひたすらどんどん進んでいくOさんにとても清々しいものを感じました。
規模を拡大するつもりではないですが、私も強い力で前に進んで行きたいと思いました。


オリジナル万年筆“セレネ”

2010-04-20 | 仕事について

お正月に製作することを発表させていただき、4月完成予定でした、当店初のオリジナル万年筆 セレネhttps://www.p-n-m.net/contents/products/FP0222.htmlですが、完成が遅れており、5月上旬~中旬頃の完成になりそうです。
ご予約いただいておりますお客様、完成を待ち望んでいただいているお客様方には、ご連絡が遅くなりましたこと、お詫び申し上げます。
完成次第、ご報告させていただきます。
美と月の女神セレネをテーマにしたこの万年筆は、マーレンの代表的な万年筆オデュッセイアをベースにし、そのテーマに合わせて明るくもまばゆく輝く月のイメージを表現しました。
きっと皆様の机上の女神として、ご愛用いただけるものになると思っています。

セレネ発売に合わせて、カンダミサコさん作のセレネイメージのペンシースも発売する予定としています。
どうか、もうしばらくお待ちいただきますよう、お願い申し上げます。


基調講演

2010-04-16 | 仕事について
今回、大和座狂言事務所の公演にお邪魔したのは、安東先生の活動や狂言に興味を持ったからですが、10月の公演の時に基調講演をしてほしいと安東先生からお話をいただいたからでした。
基調講演は2つの狂言の舞台の間にあり、講演される方の専門分野と狂言を絡めたテーマでされます。
私がお邪魔した時は、舞台演出家の板坂晋治先生の講演でした。
雑談風のくだけた口調でしたが、専門的な内容をとても分かりやすくお話されていて、とても内容のあるものでした。 1時間という時間がとても短く感じられ、まさに達人の講演だと思いました。
安東先生からお話をいただいた時、私は2週間悩みました。
以前、このブログで話すことへのコンプレックスについて書きましたが、あまりにひどい出来に先生にご迷惑お掛けしてしまうのではないかという心配と、せっかく先生が声を掛けて下さったのだから最大限の努力をしてお応えしたいという気持ちの両方がありました。
私たち自営業は自分で仕事を選ぶことができるので、今の自分に出来ることしかしなくなってしまいがちです。
会社に勤めておられる方は、上司の方からの無茶振りなどもあって、能力外の仕事を引き受けることがあって、結果的にそれが成長につながったりすると思うと、私も自分に試練のようなものを課した方が良いと思うようになりました。
話すことに対して、コンプレックスを持ちながら、大勢の人を前にして話すということを自分の課題として持ち続けていたこともありましたので、引き受けさせていただくことにしました。
基調講演を引き受けてから、お客様方の話し方など、とても気になるようになりました。
話の組み立て方など、話の上手な人のものはとても考えられていることが分かります。
おそらくそうやって話すたびに考えていて、それが習慣になり、反射的にそう考えられように頭の中が訓練されているのかもしれません。
そんな人の話は、面白くて、分かりやすく、とても洗練されています。
私などはオチも決めずに話したいという気持ちのまま話し出し、尻切れトンボに話が終わることがよくありますので、上手に話す人がたくさんいることを認識して、とても焦っています。
でも準備をしっかりして、何回もリハーサルをしたら最悪の事態である、緊張して頭が真っ白になるという事態は避けられると思っています。
心配した古書販売業のまると堂さん(http://huruhon.marutodo.com/hp/)からは「人前で3分、あがらずに話せる本」という本をいただきました。
私の出番があるのは10月公演ですが、大和座狂言事務所は6月30日(水)にも千里中央A&Hホールで公演する予定になっています。
興味を持たれた方は、大和座狂言事務(http://homepage3.nifty.com/yamatoza/)かA&Hホール(06-6873-2607) にお問い合わせください。

大和座狂言事務所 卯月公演 

2010-04-15 | 仕事について
お客様である、狂言師の安東伸元先生が主催される大和座の公演を観に千里中央のA&Hホールまで行ってきました。
安東先生との出会いは、奥様が暮しの手帖の中の当店の記事を読まれてご来店いただいたのが最初でした。
今まで知り合う機会のなかった伝統芸能の世界の人たちの活動には興味があって、安東先生や奥様、お弟子さんのお話から、その世界を垣間見ていました。
全く知識のなかった私にとって、能・狂言などの伝統芸能は敷居が高く、とても格式のある難しいものだというイメージを勝手に持っていました。
日本古来の文化であるにも関わらず、知ろうとしなければ一生向き合うことのない世界なのかもしれません。
大和座はA&Hホールで2ヶ月に一度公演されていて、今回で64回目になるそうです。
小学生まで北摂地域に住んでいたということもありますし、千里にいとこもいましたので、千里中央は馴染みのある土地で、30年経っても場所の雰囲気は変わらず、懐かしい感じがしました。
A&Hホールは千里中央駅のすぐ北側にあり、すぐに分かりました。
受付には奥様もおられて、伝統芸能でありながら格式ばったところがなく、親しみやすい、和やかな雰囲気の中で公演が行われようとしていました。
2つの狂言の間に、関連する基調講演や歌唱演習などもあり、観客と一緒に楽しむ工夫がされていました。
ホールの大きさもとても良く、昔よく行っていたライブハウスくらいの大きさでした。
これなら観客一人一人の顔がよく見えるのではないかと思いました。
能舞台というものはなく、舞台装置はとてもシンプルですが、狂言が始まると風景がそこに見えるようですし、演者がその役柄そのものの人物に見えてきて、その人に親しみが持ててきます。
それは落語と一緒で、全てを目で見せるのではなく、観る人のイマジネーションを引き出すことができれば、立派で派手な舞台装置や化粧などいらないということが分かりました。
大和座狂言事務所は、堅苦しい縦社会の家元制度に反発して、安東先生が中心となって1981年に発足しました。
様々な束縛がある代わりに、保護されている家元制度から飛び出したわけですから、思い通りに活動できないこともあったかもしれませんが、安東先生はのびのびと自由に、地元に根ざした活動をされていて、今回お邪魔したA&Hホールでの公演もそのひとつです。
そこには日本の伝統芸能である狂言を一人でも多くの人に観てもらって、日本人としての誇りを持って欲しいという願いがこもっていますし、安東先生の行き方そのものがとても誇り高いものだと思います。
今回私が大和座狂言事務所の公演にお邪魔することになった理由はまた後日お話させていただきます。

Friday Workshop 2 「万年筆で描いて、色付けしよう」開催決定

2010-04-14 | 仕事について
先日から当ブログ内で、講師をしてくださる神谷利男さんとコメント欄でやり取りさせていただいていて、ご覧になられた方も多いと思いますが、昨年開催させていただきました、毎月第3金曜日の延長営業時間のFridayWorkshopを今年も開催させていただきます。
第1回目は6月18日夜7時から9時まで開催いたします。

ワークショップで使用する画材に関しては、4月末までに当店でもある程度揃えたいと思っていますので、ぜひ見に来てください。
参加費は無料ですが、必要なものがあります。
大まかにご説明すると、万年筆とそれで使う顔料インク。(セーラー極黒、青墨、プラチナカーボンブラック、顔料ブルー)
スケッチブックは、B5,A4くらいの大きさのもの。
色を付ける道具は、水彩絵の具(神谷さんはウインザーニュートンをお勧めされています)、色鉛筆、水彩色鉛筆、マジック、クレヨンなど。
筆 (水彩画用の面相筆よりも細めの丸筆)などです。

たくさんのご参加お待ちしております。


神谷さんのブログ2と延長営業日

2010-04-08 | 仕事について

今月の延長営業日は4月16日(金)です。夜21時まで営業しておりますので、ぜひご来店ください。

グラフィックデザイナーの神谷利男さんが、またまたブログを立ち上げました。今回はご自身のお仕事に関連する内容になっています。
私などはブログと1週間に1度のホームページのペン語りでいっぱいになっていますが、神谷さんの表現することへのバイタリティーには本当に感心します。皆さまぜひご覧下さい。 http://blogs.yahoo.co.jp/packagekiss/1654226.html


旅の計画

2010-04-08 | 仕事について
ル・ボナーの松本さんと分度器ドットコムの谷本さんがとうとう計画を実行することができたヨーロッパ旅行に便乗させていただくことになりました。
松本さんは昨年、イタリアへ行こうと私たちを誘って下さっていましたが、長期間店を閉めるということが怖いと思っていて、売上げの損失などを考えて現実的ではないと思っていましたので、申し訳なかったですが、現実的に考えることができませんでした。
店を始めて17年くらい経ち、経営的にも軌道に乗っているル・ボナーさんと私たちとでは立場が違っているからだと思っていました。
しかし、昨年秋頃から、自分が空っぽになっているような枯渇感を感じ始めていて、何かを吸収したいという渇望感が激しくなってきました。
年末年始の休みに家族で京都へ行きましたが、それは気分のリフレッシュにはなりましたが、何か今までにないものをインプットして、それをアウトプットできるような状態にはなりませんでした。
いつかまたスランプを抜け出して、アウトプットしたくて仕方ない時が来ると思うようにしましたが、自分の引き出しの数が少なすぎることには気付いていました。
このまま今まで通り営業を続けて、日常生活を守る方が精神的には一番楽でいいですが、このままでは先細りしていくだけだと思っていました。
より長く続けていくためにもここで一旦動きを止めて、インプットすることを考えた方が良いだろうと思いました。
私の能力や才能は、店をオープンさせた時点で枯れ果てていたのかもしれません。
本当に幸せなことでお客様方に支えてもらって2年半も続いてこれました。
しかし、これから30年以上営業を続けていくために、自分の引き出しを作っておかなければいけませんし、店や自分の仕事について考えなくてはいけないと思います。
ヨーロッパ旅行の話が出た、中華料理店香港ガーデンでの夕食後、松本さんが冗談半分で言った「一緒にヨーロッパに行かないと、今後の友情もわからないよ」という言葉は、私のことを真剣に思ってくれて、旅行に連れ出そうとしてくれた親心として、耳に残っていたのでした。

この旅行に伴い、6月4日(金)~6月16日(水)はスタッフだけの営業となり、ペン先調整は承ることができません。
また営業時間、休業日も変則的になります。
期間中定休日を水曜日、日曜日(6日、9日、13日、16日)とし、営業時間を11時から16時とさせていただきます。
勝手なことで、本当に申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

意思決定

2010-04-01 | 仕事について
自分の思った通りに決断を下し、その通りに行動するということは、とてもストレートで単純なことですが、私にはものすごく難しいことに感じられます。
自分の思った通りに行動しているつもりでも、実はそれは周りの人に配慮した正しいと思える決断だったりします。
自分の思った通りの決断と、正しいと思える判断とは当然違っていて、前者は自分の生き方に忠実な判断であって、後者は多くの人が納得する正解に則った回答というように私は解釈しています。
実は私も自分の意思決定において、何が正解かということばかり気にしていました。
それが本当の意思決定だと本気で思っていました。
意思決定においての正解とは、いくつかある選択肢の中から一番多くの人から賛同を得られるものだという当たり前のことに、その時は気付いていなかったのです。
自分自身では、決断や行動をせずに、評論家になって他人のそれらを批評するひとがどこにでもいますが、自分はそうなりたくないと思いました。
自分で意思決定をして、その通り行動する人でありたいと思って店を始めました。
独立開業した人は、自分の思い通り仕事を進めている、自我を押し通せる意思の強い人だというイメージを多くの人はお持ちかもしれませんが、私は先ほど申し上げた通り、正解や理屈ばかりを気にして、自分の思った通りに行動するということを恐れていたように思います。
自分の思った通りに行動しようとすると、周りの人たちと衝突してしまうことがあります。
今まではその衝突が怖くて、自分の思い通りに行動することをせず、誰か他の人の意向に沿った決断や行動をとってしまうことがありました。
しかし、自分の人生に起こっていることの大半は、自分の意思と行動の結果ですが、自分の思い通りに行動せず、その結果も人のせいにしてしまう人間にはなりたくないと思いました。
子供っぽいと思われるかもしれませんが、これからは他の人と衝突してもいい、自分の意思に忠実な決断、行動をしていきたいと思っています。
自分の思い通りに行動して、良い結果も悪い結果も自分のものとして受け入れる。
これが当たり前と言えば当たり前ですが、実は私には努力と勇気の要ることなのです。