元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

山陰日本海紀行1

2009-07-31 | 仕事について
八ヶ岳高原を心の故郷として育ったせいか、大きな山に見下ろされている町の風景がとても好きで、そんな風景はいつまでも見続けていたいと思います。
数年前境港からみた冠雪の大山の雄大な姿が忘れられなくて、鳥取地方を今回の行き先にしました。
あいにく天気が悪く大山の裾野しかみえませんでしたが、厳しい日本海に面した山陰の風土が想像力をかきたて、この土地の暮しをイメージすることができました。
途中の激しい雨もあって自宅から中国自動車道佐用ICまで1時間半もかかりましたが、山越えの国道を走るそこから鳥取までは、その半分の距離にも関わらず、2時間もかかり、高速道路が通っていない鳥取は近くて遠い場所だと感じました。

鳥取の町には10年ほど前に来て以来でした。
息子が砂丘を見たことがないので、まず鳥取砂丘に行きました。
砂丘の周辺の施設などは、全く変わっておらず、大きな土産物屋さんの裏に駐車場がある日本全国の観光地どこにでもある昭和的な風景で反射的に旅情を感じてしまいます。
3万年もの歳月をかけて自然が作った鳥取砂丘に地球創世のロマンを感じましたし、その砂の丘と海の景色は見飽きないものでした。
暑さを避けて、馬の背(砂丘の中心となる小高い所)に向かって歩き出した息子を呼び戻して、馬車に乗って砂丘の縁をゆっくり揺られました。
若い頃は夢中で砂の山を駆け上がったことを思うと情けないですが、旅は始まったばかり、ここで砂と汗まみれになりたくありませんでした。
それでも馬車はなかなか面白い経験でした。

砂丘を出て、市街地に向かいました。
鳥取駅から市役所まで結ぶ直線の商店街が鳥取の中心地になり、そこをブラブラと歩くことにしました。
鳥取で最も賑やかな商店街は、他の地方都市のようにシャッター街にはなってなく、どのお店も普通に営業していましたが、昼間なのに人通りはまばらでした。
どのお店も10年以上は明らかに改装はされてなく、その商売が楽ではないことが感じられます。
有名な万年筆店も訪ねてみました。
周りの他のお店とは違い、とてもきれいで新しい店構え、内装も間接照明を多用してムードがありました。
職人さんの作業もガラス越しに見ることができ、とても良い店だと思いました。
何かを買うつもりではなかったので、手を煩わせては悪いと思い、お店の方に話しかけませんでしたが、息子が買ったシャープペンシル1本でとても丁寧に応対していただき感激しました。
鳥取に来る前は、同業者という遠慮があって訪ねるつもりはありませんでしたが、とても良い店で、勉強になり、刺激を受けました。
訪れて本当に良かったと思いました。
あらかじめ調べておいたマニアックな蕎麦の店もそんな商店街の中で、地元の人たちが多く出入りしている店で、何らかの競争力のあるお店はどこにあっても強いのだと感じました。

コラボメモカバー新作完成

2009-07-19 | 仕事について

当初、私がイメージしたメモカバーはこのクリスペルカーフのような端正な緊張感のある革質のものでした。
外国製の、特に歴史のあるメーカーの良い革の手帳をイメージして、毎日の仕事に使える上質な革のメモ手帳を作りたいと思ったのがメモカバーを企画した最初でした。
ル・ボナーテイストのブッテーロ革のメモカバーは、私たちのようにスーツ、ネクタイをせずにカジュアルな服装で仕事をする者にとってはピッタリで、艶が出やすく、使い込むのにこれほど適した素材はないと思いました。
今回松本さんが作ってくれたコラボメモカバーの新作、クリスペルカーフはクロコは、スーツでお仕事をされる方に相応しいものだと思っています。
クロコはポケットの出し入れがしやすいように、ペンホルダーを省いています。
ブッテーロとは違った、背筋が伸びるような高級素材で作ったメモカバー、待望されていた方もおられると思います。

クリスペルカーフ https://www.p-n-m.net/contents/products/LG0025.html
クロコ茶https://www.p-n-m.net/contents/products/LG0024.html
クロコ黒https://www.p-n-m.net/contents/products/LG0023.html


バー バランザック東京でも営業中

2009-07-13 | 仕事について
6月17日にオープンしていて、ご報告が1ヶ月も遅れてしまいましたが、下戸の私が唯一安心して行くことができるバーバランザックが東京にできました。
一昨年、松本さんから入りやすい陽気なバーとマスターに愛想はないけれどとても良い雰囲気のバーとどちらがいいかと聞かれて、迷うことなく無愛想な方と答えて連れて行っていただいたのがバランザックでした。
それからバランザックには何度かお邪魔させていただいていて、ここでいろんな人といろんな話をしました。
無愛想だと思っていたマスターの太田さんは無駄に笑わない人で、そのもの静かさがこのバーの雰囲気を作り、居心地の良さとなっていました。
白い竹を天井前面にあしらわれて、素朴な風合いの焼き物が所々に飾られている簡素な内装もとても好きで、こんな店を作る太田さんのセンスに私たちお客は惹かれるのだと思っています。

バーバランザックⅡ 東京都新宿区若宮町14-7kifビル1F(黒い外観の建物)
TEL03-3268-0766
営業時間17:00~24:00

神戸の夜 古山画伯来店

2009-07-12 | 仕事について
ル・ボナーの松本さんから万年筆画伯の古山浩一さんが数日後に当店を訪れるということを電話でお知らせいただき、その後美味しいおでんの阿く津へ行くことまで決まりました。
阿く津は前回行った時にはオーダーで失敗していましたので、今回は雪辱に燃えていました。
古山さんとは4,5年前、私が勤務していた店に来られてお話したのが最初でした。バタバタと走り回っている時に気付くと本などでしか見たことのなかった古山さんがショーウインドーを覗き込んでいたので、思い切って声を掛けたのでした。
その後、松本さんに私の所に行って万年筆を選ぶようにアドバイスして、二人を引き合わせたのも古山さんでした。
考えてみればとても不思議な縁というか、古山さんとの出会いから今まで全てが繋がっているということを考えずにはいられませんでした。
閉店直前に古山さんが店に入って来られました。
一昨年の12月、タクヤさんと一緒に来られて以来のご来店になりますので、本当に久し振りでしたが、とてもそんなふうに感じられない楽しい、ハイテンションな時間が始まりました。
古山さんの日本の万年筆界への貢献ははかり知れないと思います。
多くの著書や万年筆クラブでの活動、メーカーへの働きかけ、そして放っておけばそのライバル心から反目し合いそうになる職人さんやお店さん同士の繋がりを結ぶ役目を果たしたりしています。
古山さんがいるから、日本の万年筆の状況が面白く感じられ、お客様が興味を持ってくださるようになっているのだと思います。
古山さんが一通り当店を見られた後、にしむらコーヒー本店裏の阿く津へ向かいました。
前に松本さん、谷本さん、永田さんと来た時に、メニューの端から端までと下品な注文のしかたをしてしまったため、その魅力があまり分からず、ここの常連の方からはお叱りを受けていました。そこで今回は、おまかせでコースをお願いしました。
コースはゆっくりと延々と続くように感じるほど出てきて、とても満足しました。
適当な間隔をおかれて出される上質な素材のとても美味しい料理を味わいながら、とても楽しく、賑やかにおしゃべりをしました。
聞く人を楽しませるとても話上手な人で、豪快な印象がありますが、繊細でとてもデリカシーのある人だと思いましたし、当店のことを気に掛けたアドバイスなども話していただけて、とても感謝しています。
ル・ボナーさんを大々的にフューチャーしている本を執筆されているそうで、古山さんの今後の活動にも興味を持ちました。
阿く津でゆっくりしたため、かなり遅くなってしまいましたが、古山さんと松本さんはバランザックへと消えて行きました。

東京国際ブックフェアでリスシオ1紙製品販売

2009-07-09 | 仕事について
私たちは昨日東京ビックサイトで行われている文具業界の見本市、国際文具紙製品展(ISOT)を見に行ってきましたが、本日から7月12日(一般公開は11日、12日)まで同じビックサイトで東京国際ブックフェアが開催され、大和出版印刷がブースを設け、リスシオ1紙製品を販売します。
試し書きの用紙もあり、実際にリスシオ1の書きやすさを体験できるようになっております。
昨日設営中の大和出版印刷のブースに、一緒にISOTを回った武部社長が案内してくれましたが、とても美しくイメージ良く仕上がっていました。
本を即売する出版社などもあり、とても魅力のある展示会で、1日早く帰ってきてしまうのをとても恨めしく思いました。
ぜに皆様ブックフェアに出展している大和出版印刷のブースを覗いてみてください。

リスシオ1紙製品第2弾発売

2009-07-07 | 仕事について

大和出版印刷が独自に開発した紙、リスシオ1の製品が先日のバラ紙のシリーズに続いて発売されました。
紙製品の定番、ノートと便箋でこれらを待ち望んでおられた方も多いと思います。
全てA5サイズで、ノートは8mm横罫と5mm方眼、便箋は7mm横罫と10mm横罫の4種類です。
それぞれ違う色の表紙が使われていますが、今までのノートにはなかった、明るい色目でありながら大人の人が使いやすいものが選ばれています。
ノートは64ページという薄型ですが、保管や携帯に場所をとらないというメリットもあります。
柔らかく滑らかな書き味のリスシオ紙と頑丈さと見開きのしやすさを併せ持った糸綴じの製本でこのタイプのノートとしてはかなり上質な仕上がりになっていて、量産文具メーカーとは一味違う大和出版印刷の職人気質な実直さが表れています。
便箋はこのリスシオ紙の最も本領が発揮できるものなのかもしれません。
柔らかな書き味だけでなく、程よいわずかなにじみはインクらしい温かみのある筆跡を伝えてくれ、どんなにインク出の多い万年筆でも裏抜けしないところはスマートな印象を与えてくれると思います。
大和出版印刷はこれから様々な冒険的な製品の開発にもチャレンジしていくはずですが、まずは手堅いこれらの定番的な製品を試していただきたいと思います。
リスシオ1ノートhttps://www.p-n-m.net/contents/products/PG0082.html
リスシオ1便箋https://www.p-n-m.net/contents/products/PG0081.html


横浜元町オザワ洋装店物語

2009-07-06 | 仕事について

昨年、暮しの手帖に当店のことを書いて下さった素敵な島岡圭子さんが本を出されました。
暮しの手帖の記事は、全国から女性のお客様が当店に来て下さることのきっかけを作ってくださって、開店したばかりの店にとって非常に有り難いことでした。
店はそういった様々なお客様からのお気持ちで成り立っていて、店はそんなお客様に対して、自分たちのできることで誠実に応対することが、その気持ちにお応えすることなのかもしれません。
ご自身がお客様として、このオザワ洋装店と関わり、真心のある接客に心が動かされ、この本ができたのだと思いました。
横浜には行ったことがありませんが、そういったことに関係なく、一人の職人が天職に出会って、それを全うしていった姿に感動しました。
日本中の商店街から老舗と言われる店が次々と姿を消していく中、オザワ洋装店が生き残ってこれたのは、自分たちの領分をわきまえ、正しい努力をして、時代に流されずにオザワ洋装店のスタイルを貫いてきたからなのだと感じました。
時代は流れ、街は動いているので、商店街という動かし難い集団の中に店を構えて長く続けることがどれだけ、大変ことかは想像がつきますし、自分の店だけでなく、元町商店街も盛り立てながら、営業を続けてきたということにも、オザワ洋装店の尊さを感じます。
横浜元町を知らないと、この本を面白く読むことができないのかと思っていましたが、読み始めるとすぐにその世界に引き込まれていました。
仕事について、店について、お客様への心配りについてなど様々なことについて参考になり、考えることができる本でした。
https://www.p-n-m.net/contents/products/ZZ0079.html


7月の予定(夏休み、FridayWorkshop)

2009-07-02 | 仕事について
7月末、8月末には夏休みをいただきたいと思っています。
7月27日(月)28日(火)29日(水・定休日)と8月24日(月)25日(火)26日(水・定休日)をそれぞれ3連休で臨時休業いたしますので、ご来店を予定されている方はご注意ください。

毎月第3金曜日は延長営業とし夜9時まで営業しております。
今月は7月17日が延長営業日で、19時から21時までグラフィックデザイナー神谷利男さんを招いて、FridayWorkshop第2回「万年筆でその日美味しかった食べ物を描こう」を開催いたします。
第1回目は大好評でした。参加費は無料です。
万年筆のインクを満タンにして、ご自分が愛用されているノートをお持ちください。