元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

旅行の打ち合わせ

2010-05-30 | 仕事について
準備ができていないことに焦り始めました。
まだまだ時間があると思っているうちに、日常の雑務に追われてどんどん日が経って行き、気がつくと出発まで1週間を切っていました。
出発までに一緒に食事でもと言い合っていた言葉通り、ル・ボナーの松本さん、分度器ドットコムの谷本さんと夕食行きました。
こういった約束はどんなに日が迫っても、必ず実行されるものです。
閉店と同時に、アルファ兄弟が到着しました。
最近、谷本さん運転のアルファで松本さんと登場するということが多くなりました。
そのまま、芦屋のベトナム料理店サイゴンパリガーデンまでのドライブとなりました。
サイゴンパリガーデンは、元料理人の谷本さんがこの辺りで一番美味しいと言う店で、松本さんも私も始めて来ました。
屋台のような簡素な建物の店で、冬はきっと寒いと思えるようなお店でしたが、谷本さんのお勧めだけあり、あっさりと健康的で、とても美味しい料理でした。
持って行くお小遣いの額、それぞれの係(松本さんが会計、食事担当、私が地図係、谷本さんがリーダーということになりました。
気が付くと中年男3人のテーブルが店の中で一番賑やかでした。
旅の打ち合わせは、旅というテーマでエスニックな食事をしながら雑談するということでした。
6月4日(金)関空の航空会社のカウンターの前で再会して、10日間のツアーに出ます。

聞香会の開催のお知らせ 5月29日(土)15時~17時

2010-05-29 | 仕事について
5月29日(土)15時~17時、聞香会を開催いたします。
香道師森脇直樹さんは、まだ大学生なのにご自分のやりたいこと、やるべきことをちゃんと分かっていて、将来のプランもしっかりと持っておられます。
私が大学生だった時は、自分がしたいことも、やるべきことも分かっていませんでした。
5年後の自分がどうしているのか全く予測できずに、自分の将来にとても不安を覚えていました。
私はそういう若者でしたので、森脇さんが若くから強い信念を持って、それを実行しているのを見るととても嬉しくなります。
香道を一生に仕事にし、一人でも多くの人にお香を聞いてもらいたいという、信念に根差した森脇さんの聞香会を当店ではなるべく続けていきたいと思っています。
5月の聞香会以降、毎月最後の土曜日15時~17時まで聞香会を開催することになりました。
ぜひ、ご参加ください。前回は組香で大いに盛り上がりました。

ゴールデンウィークは通常通り営業しております。
5月5日(水)は通常通り定休日とさせていただきます。

旅慣れた風のスーツケース

2010-05-27 | 仕事について
旅行まで1週間になりました。
そろそろ荷物を詰めないといけないと思いますし、多くの方々から準備の進捗状況について聞かれますが、まだそんな有様です。
荷物を詰めるには、スーツケースを決めなくていけません。
長期の海外旅行に耐えるスーツケースを持っていない私は、隣に住む旅慣れた父の家に行き、スーツケースを借りてきました。
10日間もの期間ですし、向こうでたくさん買物をしても大きさに余裕があれば、詰め込むことができるからと、勧められたものでした。
あまりにも大きいので、その大きさが気になっていましたが、私はこんなものかな?と思って家に持って帰りました。
持って帰って部屋の中に放置されたスーツケースを見て妻が「これはこれで正解なの?」と笑いをこらえています。
妻が言うにはあまりにもボロボロではないかとのこと。
松本さんもきれいなジュラルミンのケースだったし、谷本さんはポリカーボネートのリモワを持ってきそうな感じです。
言われてみるとそれらと見比べると、私のものはみすぼらしく、視察旅行へ行く華やかさに水を差す感じもしなくもありません。
でも私自身は、あまり気になりませんので、旅慣れた風のスーツケースに荷物を詰めるつもりです。
先日家に帰ったら、旅慣れた風のスーツケースがいくらかきれいになっていました。
妻が見るに見かねて剥がれかけたステッカーなどをはがしてきれいにしてくれたようでした。
これはこれで正解なのです。

本種子島鋏

2010-05-27 | 仕事について
本で読んだり、人から聞いたりして、その鋏のことは知っていました。
でも売っている所が近くになく、手にしてみる機会がありませんでした。
先週の水曜日、午後から元町、三宮辺りへ出かけていました。
息子にお土産の芋栗ロールケーキを買うために大丸8Fで行われている鹿児島県物産展へ行き、ロールケーキを買ったついでにブラブラ他の屋台を見ていると、ずっと気になっていた本種子島鋏がありました。
実物を見るのは初めてでしたが、鋼を叩いて伸ばしてひねっただけの刃や握り部分とても良い感じでした。
手に取ってみると重く、動かしてみると左右の刃の密着がとてもよく、滑らかな、でも確実な手応えを持っていました。
職人さんが布切れを切るように渡してくれました。
柔らかい腰のない布がとても気持ちよく切ることができました。
普通に切ることができる鋏は持っていて、それに何の不満も抱いていませんでしたが、種子島鋏は迷わず買ってしまいました。
切れ味はものすごく良く、切れば切るほど切れ味が良くなるという伝説もあります。
でも、本当はもったいなくて使わずに箱に入れたままにしていますが、こういったシンプルで、余計な手がかかっていないものはとても好きです。

美しいもの (赤木明登著 新潮社)

2010-05-23 | 仕事について
以前はサラリーマンではない、変わった職業の人に出会ったら、どうやって食っているのだろうと密かに心配したりしていました。
それが大きなお世話だということに気付いたのは、自分も人から食っていけているのか心配される職業に就いてからでした。
自分の好きなことを仕事にすると、会社員の時以上にがんばって仕事しようとしますし、何とかしようと頭を必死で働かせたりするものです。
そして何よりも、好きなことを楽しんでしている店にはお客様が集まって下さって、何とか形にしてあげようとして下さることで、それにはとても感謝しています。
店を始める前、自分の仕事が食っていけるかどうか心配することはなかったと言えば、多くの人がその楽天家振りに呆れるかもしれませんが、食うか食えないかよりも、自分はそれで生きていくしかなく、他に選択肢はなかったと思っていました。
人から見た時に食うに困りそうな職業に就いている人の多くは、もしかしたらそんな感じなのではないでしょうか。
この本にはそんな心配をしてしまう人たちが出てきます。
文中や写真で見るその人たちはとても満足していて、幸せそうです。
変わった職業で食っている人を見ると、そのビジネスモデル(儲かる仕組み)を解き明かそうとしてしまいますが、そんな仕組みなどはなくて、好きなことだから食っていけるのだと言うことができます。

絵画教室

2010-05-18 | 仕事について
6月18日の絵画教室まで1ヶ月を切りました。
今回は、顔料インクを入れた万年筆で下絵を描いて、そこに水彩絵具で彩色するという、昨年の絵画教室からさらに踏み込んだ高度(?)な技法に挑戦します。
私は今まで絵を描くということに本当に無関心で、絵を描かずに今まで生きてきましたので、あまり上手く描くことができません。
しかし、実際に描かれたものを見ると憧れを抱きますし、自分も描けたらいいなと思います。
今回の絵画教室で、自分なりに描けるようになれたらと思っています。
物事を楽しむためには、まず道具からということで、イギリスの老舗ウインザーアンドニュートンの固形水彩絵具の携帯用セットを揃えてみました。
ウインザーアンドニュートンは、画材の世界では知らない人はいないほどのブランドです。
私もその名前と物だけは知っていましたので、水彩画と聞いて真っ先にイメージしました。
携帯用のセットでも非常にたくさんの種類があって、値段も2310円から様々ですが、形から入るという今回の私の趣旨から、ホーロー製で水入れが内蔵されたケースに入った12色セットを用意しました。
これは10290円とかなり高額で皆様にあまりお勧めしませんが、投資した金額も大きいためかかなり気分が盛り上がってきました。
ウインザーアンドニュートンのカタログを当店に常備しており、いつでもお取り寄せさせていただきますので、絵画教室に参加を予定されている方、興味をお持ちの方はぜひ見に来てください。
スケッチブックはF2サイズの中目のもの(写真はF0)でやっていきたいと思っています。
大き過ぎず、小さすぎず、書類のB5くらいの大きさです。
スケッチブックも当店でご用意することができますので、お申し付けください。
筆もあらかじめお申し付けいただきましたら、ご用意することができ、ホルベインのものをご用意しようと思います。
顔料インクは、水に流れなくなるスピードが速いプラチナカーボンインクがお勧めです。
プラチナの万年筆で描かれるのならカートリッジもあります。
絵画教室で使う道具は全て当店でご用意することもできますので、5月中くらいまでにお申し付けいただけましたら絵画教室の第1回目までにご用意することができますし、画材屋さんなどでお好みのものをご自分で揃えられても楽しいかもしれません。
道具に関していろいろ書きましたが、今お家にあるものをお持ちいただいても全く問題ありませんので、お気軽にご参加いただけたらとても嬉しく思います。
事前のご予約など必要ありませんし、途中の回からでもご参加いただだけますが、あらかじめどれくらいの人数の方が参加してくださるか知りたいと思っています。
ご参加を予定していただいておられる方は、ご連絡ください。
絵画教室は6月18日(金)から毎月第3金曜日の19時~21時まで開催いたします。

京都駅で

2010-05-14 | 仕事について
いつもの休日を過ごした後の定休日の夕方、神谷利男さんとある伝統工芸師の方を訪ねるために京都へ行きました。
京都駅は市内いたる所にある文化財を訪ねるために降り立つ出発点で、帰路に着く終着点です。
新幹線も在来線もたくさんの電車が到着して、そこからたくさんの人たちが降りてきます。
私が子供の頃はアメリカ人(白人を見るとアメリカ人と思っていました)のバックパッカーがたまにいるくらいでしたが、今では本当にたくさんの外国人の人がいて、特に中国系の人の多さが目立ちます。
ここには神戸とはまた違った賑やかさがあって、訪れる人の特別な日を演出しています。
それぞれの行き先となる文化財と、この巨大で近代的な京都駅の建物があまりにも違っていて、それぞれの場所の古さ、静けさを強調しているように感じます。
私がとても好きでよく行く竜安寺とこことは別世界ですし、1年に数回訪ねる北野天満宮が同じ市内にあることが不思議なくらい違っています。
この駅ビルの屋上から一望できる、それほど大きくない京都の街ですが、それぞれの地域で個性があって、長い年月かけて形作られた地域性はこの京都駅とは近い距離にありながら別世界にあるような感覚を覚えます。
何年か前に嵯峨野から京都駅を見たことがあります。
低い建物ばかりの京都の平らな街の中に、京都駅は異彩を放っていましたが、とても小さな存在で、それぞれの地域が持つ独特な雰囲気の中に埋もれた存在に感じました。
京都駅は、私の日常の中にあるいつも乗る電車をいつも降りる駅で降りずに乗り続けてたどり着き、改札を抜けることで開ける別世界への入り口のような気がしました。


笑い

2010-05-07 | 仕事について
今月の延長営業日5月21日(金)です。夜9時まで営業しておりますので、ぜひ遊びに来て下さい。
今月は聞香会も予定しております。
5月29日(土)15時から17時までとなっております。万年筆とメモ帳をご持参ください。
料金はかかりません。ご予約も必要ありません。
お気軽にご参加ください。

日常生活や仕事の中で私にとって笑うということは、その場の雰囲気を盛り上げ、お互いの気持ちを近付ける、非常に大切なものです。
そう書くと計算した笑いのように感じられるかもしれませんが、意識的にしているのではなく、心から楽しいと思っている気持ちを抑えずに表現しているだけなのです。
私は神経質そうとか、キッチリしてそうなどと言われますが、その有り難い推測はあまり当たっているとは言えません。
そもそも私の父方の家系は天然ボケの家系で(親戚の皆さんごめんなさい)、そういった計算や駆け引きが最も苦手で、私も例外なくその血を引いてしまっています。
それは分度器ドットコムの谷本氏にも「初対面の時、ものすごく冷静だと思ってたのに、意外と天然やったし」と指摘されていて、自分が歳をとるほど父親に似ていくことを痛感しています。

話を戻すと、笑いの重要性を感じていながら、テレビの番組などのエンターテイメントとしてのお笑いはあまり観ているとは言えません。
それはおそらく、そういったものに時間を割くことを心のどこかでもったいないと思っているからで、感動の大作と言われる映画は観ようとすることと合わせて考えると、観たら観たで笑ってしまうこともありますが、笑いは下らないものだという先入観に凝り固まっているからなのだと思います。
狂言師の安東伸元先生とお知り合いになれて、笑いについて考えるようになりました。
そして全てをひっくるめて私が下らないことだと思っていたことが恥ずかしくなるくらい、奥の深いものでした。
特に狂言などの笑いには、独特の美学あります。
権力者への風刺はよく扱われるテーマで、かって狂言は鋭い批判精神を持っていたと言えます。
多くのテレビ番組の笑いのように、弱い者や人の失敗を笑い物にするようなことはなく、ダンディズムのある笑いでした。
終始真剣で深刻なものの方が高尚で、格が上のように考えていた私は笑いに対してものすごく偏ったイメージを持っていたのだと知りました。
今ではテレビで見ることさえ少なくなってしまいましたし、実際に観にいって理解できない
こともたくさんありますが、狂言の笑いを私たちが表現するもので、取り入れることができれば、とても面白く、やりがいのある取り組みだと思い始めています・

作り手たちとの夜

2010-05-03 | 仕事について
日曜日の夜に、工房楔の永田さんが神戸に来られましたので、松本さんとカンダさんと集まりました。
今回は、神戸宇治川商店街西の焼肉店糸桜です。
糸桜までは歩いて15分ほどの距離なので、6月に予定しておりますヨーロッパ視察旅行の話で盛り上がりながら4人でゆっくり歩いて行きました。
私と谷本さんは、仕事柄ヨーロッパの文具店事情を見ておかなければならないという仕事上の理由でどうしても行かなければならないですが、松本さんの立場は微妙です。
親しいお客様方から一人だけ遊びなのだから、お小遣いは3万円までと厳しく決められて、遠足へ行く子供のような扱いを受けているようです。
花隈までは、比較的人通りもありましたが、神戸駅へあと少しのこの場所はとても寂しい感じになります。
でも私たちはこれから始まる肉の宴を前に気持ちが高揚していて、寂しく真っ暗な街並みなど気になりませんでした。
あまり広い店内ではありませんでしたが、若いスタッフが何人も働いていて、とても活気がり、居心地の良い空間でした。
料理のことはあまりよく分かりませんが、イタリアン風焼肉のコースといった感じの創作的な前菜などがあり、肉やホルモンの定番は素材がすごく良く、おいしくいただきました。
皆でひとつの網をつつくものではなく、じっくり時間をかけて楽しむ食事をすることができ、会話が弾み2時間があっという間に過ぎてしまいました。
今回はたまたま作り手3人との食事になりました。
私が店を始めて、続けるにあたって、職人さんたちとの出会いは、本当に大きかったと思っています。
夢と理想を持ってお店を始める人は、ものすごくたくさんおられると思います。
しかし、店を続けていくには商品が安定して供給されることもひとつの条件です。
もしそれがどこにでもあるものばかりでは、たくさんのお店やネットショップの中に埋もれてしまいます。
その店だけでしか手に入れることのできないものがいくつあるかということが、お店にとってとても重要なことで、松本さん、永田さん、カンダさんのような人たちは当店にとってかけがえのない人なのです。
最初、幸運にも松本さんと知り合って、その輪が1人増え、2人増えして、少しずつですが大きくなって今の仲間たちがいます。
きっかけはそれぞれ人と人とのつながりによって引き合わされて、今一緒に仕事をしているわけですが、気の合う同じような感覚を持った人たち集まっていて、ただ一緒に食事に行くだけでも元気がもらえるというのは、ただ一緒に仕事をしているという関係以上のものだと思っています。
日本には、ものすごくたくさんの手仕事による物作りをしている人がいます。
その中で、頭角を現して、生き残っていくには、相当の実力と幸運(これには人柄がいります)がないと叶いません。
松本さんは、厳しい鞄業界の中で、一流の職人としての地位を確立していますし、永田さんの銘木を見抜く眼力とそれを加工する技術とセンスは日本でもトップレベルにあります。
カンダさんは独立して日が浅く、マネージメントに関して松本さんのアドバイスを受けていますが、すでに多くのお客様に受け入れられている独自の感性による物作りを発展させて、より強固なものへと進化しようとしています。
私たち店を経営する者にはない苦労が作り手にはあって、売上を目標にしていく店とは違った感覚が独立系の職人さんには必要です。
そういった感覚を持った人だけが生き残これる厳しい世界で、この3人はとても輝いています。
仕事も人柄も好きなたちの作品だからこそ、私たちは自信を持って、自分で作った物のように、大切に販売することができるのです。
どこで作っているのか分からないような工場製品が多い中、当店では作り手の顔が見えるものをこれからも販売していきたいと思っています。
やっと暖かくなってきた夜の中、神戸の糸桜から、三宮駅まで私たちはいろんな話をしながらブラブラと歩いて帰りました。