茶道で使われるほとんどのお道具には正面があって、お点前では必ずそれをお客様に向くようにすることになっています。
土ものの模様のない茶碗でもそこに景色を見出して、見所を表にする。
作家ははっきりとそこが表だとしてその作品を仕上げているし、使う人もそれを尊重します。
作品を見てどこが正面だとか、趣向などの作り手の意図について考えるのはとても楽しいものだと思っているし、作り手にそれを確認することはほとんどの場合できないけれど、もし自分が間違っていたら、修正しなくてはならない。
工房楔の永田さんの作る木製品を見る時に、茶道具を扱うのと同じように考えている自分に気付きます。
例えばパトリオットボールペンはクリップがありますのではっきりと正面が分かるけれど、でもクリップ側にその材の景色の中に見出せる正面があるような気がしますし、万年筆用ボディこしらえやペンシルエクステンダーなどの正面の手がかりのないものにも、永田さんが意図している正面が存在します。
使われる方が好きに楽しんで下さればいいとして、永田さんはそういうことは一切言わないけれど、聞けば答えてくれる。
ひとつひとつのものに違う景色、見所を見出せるものが私たちが日常で手にするものの中にどれくらいあるだろうと思います。
それぞれ違う素材の、それぞれの見所をそのモノの中に表現した作品が、工房楔の木製品だと私は思っています。
年2回開催しています工房楔のイベントを3月28日(土)29日(日)に開催いたします。
木のものはその素材についての知識を深めればとても楽しく、愛着もより湧いてきます。
木に関しての情報は主にインターネットで調べていましたが、創業からの付き合いのあるお客様いT橋さんが地元伊丹の書店で見つけられた「原色木材加工面からわかる樹種事典」(誠文堂新光社)は永田さんがよく扱う材の多くが載っているものだと思いました。手間と情熱をかけて作られた本だと思いました。当店でも扱っています。