元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

使う人に愛情を注いでもらえるもの

2011-10-09 | 仕事について

例えば革製品でも、多少の縫製が弱くて縫い直しなどの修理に出さなければならないとずっと使い続けることができない物は作りとしては完璧ではないのかもしれません。

専門家から見るとこんな作りは許せないと思えるものでも、使っている人は修理に出してお金をかけてでも使い続けたいと思う。

それだけそのモノに対しての愛情があると、革の質とか、作りなどは素人である使う人からすると大した問題ではなく、そのモノにまつわる想いとか、そのモノがかもし出す雰囲気の方がずっと大事なのだという話を作り手の方から聞きました。

そのモノを供給する側としては、それぞれのこだわりを持ってそのモノを作っている。

それが素材であったり、作りであったり、デザインであったりする。

でも一番優れたモノというのは、使っている人に愛情を持って使ってもらえるもの。

何度でも直して、でも使いたいと思ってもらえるモノが一番優れたものなのではないかとという話を聞いて、とても良い話だったと心の中が暖かくなりました。

こういうモノをお客様に使ってもらうには、誰が作ったと同じくらいお店の役割が大切になってきます。

お店は作り手の想いをお客様に伝えて、そのモノを好きになってもらう。

その買い物の時の思い出を楽しい記憶として心にとどめてもらうようにする。

そういったモノにまつわる思い出を伝えるための心の演出(というとワザとらしい作為的なものに聞こえるけれど)をするのがお店の役割だと思っています。

当店の名前はペンはただのモノでしかないけれど、そこに作り手、売り手、使う人の想いをこめたいという願いを表していますので、そのお話に大変共感しました。

雑誌などでたまに見掛ける技術偏重は、当店に商品を作って下さっている人たちにはなく、皆そういったことを理解されていると改めて思いました。