元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

工房楔イベント開催いたします 9月28日(土)29日(日)

2019-09-27 | お店からのお知らせ

ハワイアンコアのボールペン。オリジナルダイアリー用カバーを今年はSkyWindさんにミツロウ引きのものを作っていただきました。

 

作りや素材の良い手帳を買ったら、それに見合ったペンを使いたい。100円のボールペンでは寂しい感じがします。

ジェットストリーム、フリクション、ゲルインキなど最近の日本製の100円のボールペンは滑らかに書けて、大変品質が良いけれど、そういう問題ではないような気がします。

私たちが良いものだとするものは、ヌルヌル書けたり、消すことができるという便利さ以上に、使う人にそれなりに使い方を求めるけれど、持っていていつまでも喜びをもたらしてくれるもの。工房楔の木製品もそういうものだと言えます。

樹脂の含浸、塗装などの表面処理を施していないので、エアコンの前に放置しているとヒビが入ったり、落としても当然割れることもあります。(修理もできます)
その代わり使っていくうちに木の油分が表面で光沢を作り、艶を出して美しく変化してくれる。

どこに持って行っても、例えば木にすごく詳しい人が見たとしても、銘木の中でも良材だと思ってもらえる。

ブランドではないけれど、使っている人や分かる人が分かる良さを持っているもの。

それが大人の持ち物なのだと、特にステーショナリーにおいては思っています。

当店で木工家工房楔の永田篤史さんがイベントを開催されます。


創業12周年

2019-09-23 | 実生活

今日当店は創業12周年を迎えました。

9月23日は万年筆の日ですが、当時それも知らずにスケジュールの都合が合って、たまたまオープンの日として選んだ日だったので、お客様に言われて驚きました。

そんなふうにこの店ははじめから幸運に恵まれていました。

当時のことを昨日のことのように思い出すと言って下さるお客様がおられますが、私としては早く忘れて欲しいと思っています。
品数が少なく、何も特長がない、お客様がこの店を続かせてあげようと思わない限りすぐに倒れてしまいそうな店でした。
それは今も変わっていなくて情けないけれど、店というのはその店を良いから続いて欲しいと思って下さるお客様が買って下さるから続くものなのです。

創業当時も今も書くことは楽しいということを伝えたいという想いは変っていないけれど、当時の自分は考え過ぎていたし、何も知らなかったと分かっています。
今も何も知らないことには変わりないけれど,シンプルに自分のやりたいと思っていることを好きだと思うやり方ですればいいと思うようになっています。

それは38歳だった青年が、50歳のいい齢になって厚かましくなったからかもしれないし、個人経営の店は結局そうでないと存在意義がないということに気付いたからかもしれません。
チェーン店や大きな店と違って、個人の店は店主の生き様がその店に表れていて、それも魅力のひとつだと思います。
店の仕事でお金を得て生活していて、でもそれだけでなく夢やロマンを追い求めている。それが見えない個人店はただの不便で品数の少ない店になってしまう。
当店も、そんな個人店でありたいと思っています。
だからいくら儲かると言われてもやりたくないと思うことはやらない。でも私の場合、自分がやりたくないと思うことを上手く結果が出るようにできる能力がないこともあるけれど。

最近は店は孤独だと思って仕事しています。
横のつながりを持って、協力して大きなことをする時代なのかもしれませんので、それに逆行する考え方だとは思っています。
集まることは悪いことではないし、仲の良い人は多い方がいいに決まっている。
横のつながりは持つべきだとは思いますので、イベントなどにできるだけ参加するようにはしています。

でも自店だけでもお客様を集められるようになりたい。自店だけで行動を起こせないといけないと思います。
偉そうなことを言いながら、当店にはまだまだ力がなく、頼りないですがしっかりと立っていられる店になっていきたいと思っています。

 

 

 


9月28日(土)29日(日)工房楔イベント

2019-09-20 | お店からのお知らせ

キングウッドのコンプロット10です。

キングウッド自体、銘木ではあるけれど、工房楔の永田さんの木製品の中ではそれほど珍しい材ではありません。

でもコンプロットの大きさでキングウッドが使えることは非常に珍しい。キングウッドのダイナミックな柄がコンプロットで生き生きと表現されている逸品だと私は思っています。

こういうものが永田さんの木製品の中にはいくつもあります。

新素材、超希少素材ももちろんいいけれど、いろんな杢の楽しみ、木の味わい方があります。

9月28日(土)29日(日)、当店で工房楔イベントを開催いたします。どうぞ、ご来場下さい。


手帳

2019-09-13 | モノについて

 

とても小さなことかもしれないけれど、考え続けていたことがまとまって、自分の小さな手帳に書くことができた時に喜びを感じる。

書いたものが何かになることはないかもしれないけれど、ひとつの考えがまとまったということが嬉しいし、手帳に書き込むという行為が何とも好きです。

自分が手帳に書き込むことが好きだからこの仕事をしていて、自分でも使いたいと思うものをオリジナルで作ったりします。

大和出版印刷さんの名作の紙リスシオ1で最近作ったミニ5穴システム手帳用のリフィルはただでさえ楽しい手帳に書くことを、ものすごく楽しくしてくれるものだと思って、私も毎日使っている。

しっかりした紙質、極上の書き味、くっきりとした筆跡は文字が上手くなったように勘違いする。

手帳に書いたものは、自分の思考の記録として後から読み返すことができて、その時の雰囲気のようなものを懐かしく感じることができればそれでいい。

毎週金曜日にホームページに更新している「店主のペン語り」でオリジナルダイアリー2020年版が出来上がったことをご報告します。

10年前にオリジナルダイアリーを最初に作った時、リスシオ1を使っていたことを思い出した。

当時その書き味に感動して、ただ書いていたいと思いました。それは今も変わっておらず、その書き味を味わうために書きたいとさえ思います。

リスシオ1はある古い機械でしか作ることのできない紙で、リスシオ1を作るためだけに老朽化した機械を維持することができず、機械が廃棄処分になってしまい、リスシオ1は二度と作ることのできない貴重なものになってしまった。

貴重な素晴らしい紙なので、細部にこだわって、神戸の腕の良い町工場の力を借りて、自分でも使いたいと思えるミニ5穴のリフィルを製品化した。

小さな紙片だけど、これは私以外の人たちにも大きな喜びをもたらしてくれるものだと思っています。

9/15()かなじともこさんの智文堂Pop Up Storeというイベントを当店で開催します。新作のミニ5穴リフィルも発表されるということで、手帳を楽しくする新たなものをまた当店で扱うことができます。


革表紙のメモ

2019-09-10 | 実生活

革表紙のメモ 本体5400円(税別) 替紙440円(税別)


Writing Lab.のブログ「旅の扉」を今月末で閉鎖します。
Writing Lab.の中心メンバーの一人駒村さんが抜けてからしばらく、Sトー氏を加えて続けていて好評いただいておりましたが、昨年末終了を宣言して、1年近く経ちましたので、潮時だと思いました。

もう6,7年経つかもしれない。
京都のインディアンジュエリーショップリバーメールの駒村さんと知り合って、一緒にいろんなステーショナリーを企画して、双方の店で売っていました。

その時の売れ筋商品にサマーオイルメモノートという商品がありました。
私が自分で革を切ってメモ帳の表紙にしていたものを駒村さんが商品化しようと言い出して実現したものですが、結局こういうメモ帳が一番使いやすいと思っていた。
そのサマーオイルメモノートを「革表紙のメモ」として、また作りました。

台革は厚いサマーオイル革のままですが、表紙の素材を使い込むと艶が出て、色変化する、そして香りの良い革ミネルヴァボックスに変更しています。
中紙は、切り取り用のミシン目を入れました。それもかなり細かいマイクロミシン加工をして気持ち良く切り取れるようにしました。200枚の紙は天のりでまとめて、好きな厚さに割って使えるようにしています。
紙は当店の試筆紙と同じ紙の一番手薄いものにして書き味も良い。


当時できなかったことが、大和出版印刷の川崎さんの仲介で知った村井製本所さんの技術で実現した。

 

2店の協力関係も駒村さんの体調によって休止せざるを得なくなって、行き来が途絶えて、何年も経った。
あまりにも時間が経ってしまっていて、今さら再開しようという気分ではなかったけれど、駒村さんがどうしているか、どう思っているかは気になっていた。

今年になってリバーメールに別件で電話をしたら、いつも出る店長ではなく駒村さんが出た。
駒村さんは、インディアンジュエリーの仕事も順調で、元気に世界を飛び回っていることが分かった。
行き来がなくなって、連絡を絶ってから気になっていたけれど、あまりにも時間が経ってしまい、連絡し辛くなってしまったと素直に言った。

駒村さんが当店との仕事が嫌になって、私たちに見切りをつけたのではないかと半分思っていたので、悪い感情を残していなかったことが分かって嬉しかった。

きっとこれからも当店も、リバーメールもそれぞれの世界でやっていくのだと思うけれど、リバーメールが、駒村さんがどこかでがんばっていることは何となく励みになっていて、駒村さんが当店のことをどこかで聞いた時に、恥ずかしくないようにしたいと思っている。

 


仕事の旅

2019-09-01 | 実生活


出張販売でいつもと違う交通機関に乗ったり、違う場所に身を置くことは好きで、観光できるわけではないけれど、旅を味わっています。

店が続いていくには出張販売に出ることが必要だと本能的に思って、出張販売に出るようになりましたが、仕事と旅を組み合わせたいとずっと思っていました。
こういう組み合わせ方になるとは9年前には思わなかったけれど、こうしたいという希望があって、それを想い続けると、自分の思考や行動がその方向に自然と向かい、わりと近い形になるのだと思います。

でも仕事で旅に出ることをやってみると、そう気楽なことばかりではなくて、旅費などの経費の他、店を留守にしていることなどを考えると、それに見合った成果を出して帰らないといけないプレッシャーがあります。

旅に出る前は気分が重くなるほどのプレッシャーだけど、怠け者の自分には多少の負荷は必要なのだと、自分で分かっています。


仕事は実験であり、店は実験室だと最近思います。

オリジナル商品を発売したら、お客様方がどう反応するか、どういう告知の仕方が効果があるのか、そして出張販売の成果はどうか、旅に出て自分が何を考えるか、そして長い年月を経て店がどう変化していくのかなど、すべての原因と作用、結果に興味が尽きず、店や自分の変化が面白いと思っています。
9月23日、当店は12周年を迎えますが、今の当店の姿や自分自身を当時想像できなかった。

自分や店の12年後の変化が分からなかったくらいなので、今の世の中もイメージできなくて当然です。
言葉では、世界は狭くなる、こちらがじっとしていても国際化の波に飲まれるとイメージしていたけれど、こんなに早く、一気に来るものだと思いませんでした。
気が付いたら、仕事において国境がなくなっていた。

そういった必要性もあって、来月一人で台湾に行くことにしました。
毎年台南で大きなペンショーが開催されていて、その視察に行くことが名目ですが、ほとんど台北に滞在して街やお店を見て来たいと思っています。

台湾は日本をお手本にして発展したのかもしれないけれど、商売の勢いとしては完全にリードされている。
台湾を見て勉強になったり、刺激を受けたいと思いました。

日本がアジアの先進国だった時代は10数年前に終って、今は精神的なお手本とならないといけない段階にきているような気がします。
日本に来られる方々は日本の文化や風土を良く思ってくれていて、それを味わうために来てくれる。
それに応えることができる品格を国家も人も身に付けていないときっと、誰からも相手にされなくなってしまうと思います。