元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

突然の夏休み気分

2007-07-28 | 万年筆
次の打ち合わせまで時間が空いてしまいましたので、大倉山の中央図書館に行きました。
神戸駅から湊川神社の横を通って
5,6分歩いた所に中央体育館、文化ホール、大学病院などが集まった文化ゾーンの中に図書館はあります。
そのまわりの雰囲気にすごく懐かしいものを感じて、汗をかきながらもゆっくりとその周りの空気を感じながら歩きました。
小学生から大学生までずっと夏休みと言えば図書館で調べ物をした思い出があり、そんな記憶が蘇ってきたのでした。
最近よく行くようになった、街中の図書館と違って、広くて、本の数が明らかに多いことが分かりましたし、ザワザワした雰囲気がなかったのも嬉しく思いました。
そこで日本の田舎の風景ばかり集めた写真集を選んで席に座りました。
ゆっくりと時間をかけて、見ていたようであっという間に時間が過ぎていました。
その後、少し居眠りしてしまいましたが、次の打ち合わせの時間が迫ってきましたので、下界におりていきました。
暑い日、ほんの少しでしたが子供の頃の夏休みの気分を味わうことができました。

京都から

2007-07-28 | 仕事について
これから来る時代のトレンドについて理解して、それを感性にして仕事をしている人に出会いました。
今日、京都から竹細工メーカー問屋の公長齊小菅の小菅八郎社長と後継ぎの達之さんを迎えお話させていただきました。
大阪の小菅さんのショップにたまたま立ち寄り、その製品に触れ、何かを感じてコンタクトを取り、京都の本社を訪ねたのが出会いでした。
その時は達之さんとお話をして、自分がしようとしていること、これからやってくる流れなどのお話をして、業種が違っても、感じることは同じなのだと、大変共感を覚えて帰ってきました。
その後達之さんから話を聞いた小菅社長が私達に興味を持ってくれて、今回神戸まで来てくれたのでした。
会談はこの厳しい時代に老舗を大きくした実力のある小菅社長の考え方やこれから来る時代についてのお話を私がおうかがいするという感じになりましたが、そのお話を聞いていて、大阪の店で直感的に感じたのは製品全てをデザインしている小菅社長の先見的な感性をその作品に見たからだったのだと、今日気付きました。
近くのコーヒーショップで私達は3時間以上も話し込んで、自分達がしようとしていることが、時代が求めていることからそれほど大きくズレていないことを再確認でき、大いに励まされながらも辛口な意見も聞くことができた大変有意義な時間でもありました。
その後近くの商店街をブラブラ歩きながら、神戸の状況などを私が分かる範囲でお話したりして、お二人をとても身近に感じることができました。
公長齊小菅。私達のような個人事業の会社から見ると全国にいくつもの店を構えて多くの顧客を持つとても大きな会社ですが、私達のような者に興味を持ってくれて、わざわざ親子で車を運転して来て下さったことに恐縮してしまいましたが、今後も商品やそれ以外の部分でのご協力も考えて下さっているようでした。

神戸セレクション

2007-07-26 | 仕事について
ル・ボナーさんと大和出版印刷さんが進めておられたオリジナルペンケースとオリジナルノートのプロジェクトに誘っていただいて、参加させていただいています。
私はまだ何のお役にも立てていませんが、先日そのプロジェクトが、神戸らしい良質なものを選んだ神戸セレクションに認定されました。http://www.kobe-selection.jp/result/result_presentation.html#fromkobe_jp
オリジナルペンケースの製作にあたっているル・ボナーの松本さんはいくつもの試作を重ね、微調整をしていましたが、革質、縫製、仕上げなど私が知る限りでは最高のものだったように感じました。
オリジナルノートは私も参加しましたが、何人もの人たちがたくさんの紙の中からベストだと思えるものを選択し、それを腕の良い製本家が装丁するという贅沢な仕様で、こちらも最高の物が出来上がります。
どちらも完成次第、私の店でも扱える予定で、完成が非常に楽しみです。
こんなプロジェクトに誘ってくださった、ル・ボナーの松本さんと大和出版印刷の武部社長、川崎さんに心から感謝しています。

折形

2007-07-25 | 仕事について
ずっと以前にある雑誌で折形の存在を知りました。
詳しいことは何も分かりませんでしたが、何か厳格で凛々しい日本人の精神性が感じられ、気になっていました。
ずっと心の片隅に仕舞っていましたが、最近ある女性からその形や背景を教えてもらいました。
昔、絹の文化を持っていた貴族に対し、和紙の文化の武家から折形は生まれたとのことでした。
贈り物やちょっとしたお裾分けのときに和紙や半紙でその物を、それぞれの家に伝わるやり方で包む。
中身が何か分かるように、ちょっとだけ見せたり、見せることのできない物は、折り方を変えて、その形で中身を知らせる。
こんなにも謙虚で、奥ゆかしい文化が日本にあったのだと知りました。
そんな折形のテイストや気持ちを取り入れ、商品の包装ができるようにアレンジしたものをその人は研究の末形にしました。
私の店はまだ姿ができていないけれど、感謝の気持ちを形にする折形を手に入れました。
古くからある武家では、姑から嫁に、そしてまた嫁に、それぞれの家に伝わる折形が伝えられたそうです。
そんなふうに伝えられた、折形のストーリーにも心惹かれますし、そこに込められた、他人を思いやる奥ゆかしい日本人の心にも感動を覚えました。

思いやりの時間

2007-07-21 | 仕事について
トップページの画像を見て、大和出版印刷の武部社長がペリカン800番を気に入られ、用意するように言ってくださいました。
シルバー好きの武部社長の好みに合わせてM805を前日に調整し、それを携えて同社を訪れました。
今回ホームページの打ち合わせのために六甲アイランドまで来たのを忘れてしまうほどの時間でした。
お客様とペンを挟んでお話するという感覚からしばらく離れていましたが、こんなに楽しいものだったのかと、改めて自分の仕事に誇りを持ちましたし、ペンについて語り合う時間がこんなに居心地のいい、優しい時間だったと思い出すことができました。
しかし、今回は私の作った空間ではなく、武部社長のこだわりが凝縮された大和出版印刷の応接室でのことでしたし、一見豪快に思えますが、実は気配りの人だと分かる武部社長の人柄によるものだったので、早く自分自身でこんな時間を作り出したいと思いました。
大和出版を出て、川崎さんとル・ボナーさんにお邪魔することにしました。
ル・ボナーさんでは松本さんの無料コンサルタント藤野さんを交えて、松本さんが納車を待っているというアルファロメオ145の話で盛り上っていました。
ここでも、爆笑の連続でとても楽しい居心地のいい時間が流れていましたし、会社経営を知る藤野さんからとても貴重な話をお聞かせいただいて、グーグルアースで私の店舗候補地を見て意見を聞かせていただいたり、非常に有意義な時間を過ごすことができました。
この数ヶ月本当にたくさんの人たちとの素晴らしい出会いがあり、その全てが自分自身で切り拓いたものではなく、必ず誰かが紹介してくれたもので、とても自分が恵まれていることを改めて感じました。
今日は本当に実り多い、濃密な1日だったと思いました。

愛車

2007-07-18 | 万年筆
私は車というものは、長く壊れずに安心して走ってくれればそれが一番の性能だと思っていますので、トヨタビッツに8年も飽きずに乗っています。
しかし、最近どうもまわりの車好きの悪影響を受けているような気がします。
車を語らせたら、この人以上に美しく語れる人はいないだろうという鈴木氏の角目のベンツの少しだけ硬いけれどそれが安心感につながる乗り心地や、雨の日には下回り雨が入ってくるというル・ボナー松本さんの1968年製ビートルなど、魅力的な車を所有されている方々たちのせいです。
そして、先日(本日も車に関してでした)ブログで松本さんはアルファ145を手に入れたいという決意表明をされて、さらにエンスーへの道を突き進んで行くように思われます。
最近のアルファロメオはかなり分かりやすいデザインに変わってきているようですが、松本さんが目をつけている145も含め、以前はかっこいいのか、かっこ悪いのか分からないデザインで、でも目が慣れるととても味わいのある奥の深い美的感覚でデザインされていることが私でも分かりました。
そんな145を松本さんが手に入れられるのを私は無邪気に願っています。
思えば私もただ知らない林道を走って、忘れられたような峠を越える喜びだけの為に、ジムニーに乗っていた時期がありました。
ギア比が小さく、街乗りではしょっちゅうギアチェンジをしないといけないとても乗りにくい車でしたが、そんな不便さよりも余りある楽しみがその小さな四輪駆動車にはありました。
車好きの人たちの気持ちも分からないわけではなく、ただ今の私にはそんな余裕はなく、仕事や人生を軌道に乗せた友人たちの車狂いの有様を羨ましく眺めています。

トップページが出来上がりました

2007-07-16 | 仕事について
紆余曲折があり、中にはご迷惑をおかけしてしまった方もいて、時間がかかってしまいましたが、今後のこのページhttp://www.p-n-m.net/を表紙として、中身を完成させていく予定になっておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
ホームページの制作にあたってくださっているのは、ル・ボナーさんのホームページも作っている大和出版印刷さんです。
大和出版印刷さんは、私が独立を表明した当初からホームページの制作を申し出てくださっていましたが、私は他の方と試作に入っていましたのでお断りしていました。
しかし、私の専門的な知識のなさから、そちらの試作の出来栄えに満足することができず、急遽大和出版印刷さんにお願いしたのでした。
私がやりたいと思っていること、好むところを情熱のある若い社員である、川崎さんと多田さんのお二人が汲み取ってくれて、とても美しく仕上がったと思っています。
今回トップページに採用したペンは、ペリカンM800です。
もちろん意味もなくM800を選んだわけではなく、このM800によって伝えたいと思ったことがあったからです。
私はM800が万年筆の良心を表したペンのひとつだと思っています。
万年筆にとって最適なバランスは、人間工学からも、万年筆メーカーの長年の経験からも重さ30g、直径13mmという数値から生み出されると言われています。
中心付近を持って書いても、首軸を持って書いても嫌なストレスを感じずに書くことができるのは、そのバランスが優れているからですし、気持ち良いペン先の滑りは最上の部類に入ると思っています。
デザインはシンプルでスタンダードなものを採用していますが、その両切りのデザインを一目見たらペリカンと分かる個性も持っています。
実用性の良さと、シンプルな中に、抑えた控えめな主張を持たせたこのペンは、お客様が永いライフサイクルの中で愛用されて、このペンにして良かったと思われると思います。
私達もそのような良心のある仕事をしていきたいという想いをこのペンに重ねています。

美意識と苦悩

2007-07-15 | 万年筆
台風一過。大阪湾沿岸の陸地全てが見渡せることは、夏の間はあまりありませんが台風が大気中のもやを全て吹き飛ばし、空気が澄み切っていました。
そんな日、待ち合わせの人たちでごった返す神戸駅で備前焼の作家浅野庄司氏と待ち合わせました。
浅野氏とは2月に不思議な縁で知り合うことができ、それ以来お付き合いさせていただいています。初めてお会いしたときから、ざっくばらんで構えたところのない自然体の方だということはわかりましたし、誠実な良心の人だと思いました。
5月にお会いさせていただいた時は、今年予定していた窯入れを中止し、9月に予定していた個展も止めざるを得ないとわざわざ言いに来てくださいました。
納得できる作品が揃わないというのが理由でした。
浅野氏はご自分の美意識を備前焼で表現する芸術家ですから、ご本人が納得できないと言うのであれば仕方ないのかもしれませんが、調子の良い時だけでなく苦悩している姿も作品に残すべきなのかもしれないと、浅野氏自身も心の隅で思われていたのだと思います。
岡山に帰ってからも多くの人達から説得されて、氏の作品を期待する熱い声に考えを変えざるを得なかったようです。
浅野氏から8月に窯入れをし、9月4日から2週間氏の故郷である倉敷で個展をすることになったというお話をお聞きしてとても嬉しく思いましたし、浅野氏も5月の苦しんでいた時と違って、何となく腹をくくったような強さを感じました。
ご自分の作品はほぼ完成させていて、畑違いの私のお願いを含んだものも作ってみようかと思っていただけたようで、ずっとイメージしていたもののスケッチを元にお話しました。
不思議な縁があって知り合うことができた、この誠実な陶芸家の仕事にとことん関わりたいと思った私はある申し出をして、浅野氏を驚かせてしまいました。
「また何を言うのかと思ったら、とんでもないことを言い出だしたね。」
年上の友人が年下のわけの分かっていない人間を持て余すような、でも優しさのある懐の深さをその言葉から感じました。
私の申し出を浅野氏が呑むかどうかわかりませんが、それが叶ったらまたご報告します。


神戸空港で再び

2007-07-10 | 万年筆
小雨の中、鈴木氏の角目のEクラスは力強く空港橋を渡り、ロータリーに滑り込んでいきました。
私は知りませんでしたが、車好きの間では、今でもこの角目の頃のベンツは良かったと語り草になっているようです。
鈴木氏は学生の時に始めた事業が成功して、このEクラスを新車で買って、しばらく乗ってから売ったそうですが、最近同じ車台のものと運命的な再会をし、乗り始めています。
質実剛健なドイツ車のイメージを私はこの車でイメージして、この車と鈴木氏を重ねてイメージします。
人の生き様と車について、今まであまり深く考えたことはありませんでした。
車とは生活の足かあるいは洋服のように古くなれば着替えるファッションの一部くらいにしか思っていませんでしたので、ベンツに乗る、しかも良心の塊と言われたベンツに乗るという誇りみたいなものを鈴木氏から感じ、人の生き方を表現する車もあるのだと思いました。
再び神戸空港に来たのは、私のコンサルタント担当の鈴木氏と革職人の奥野氏との3人での会談のためでした。
あんなものがいい、こんなものがいいと言いたい放題の私と鈴木氏で盛り上がり、それを奥野氏が聞いて、ノートに書き留めるという時間がしばらく続きました。
奥野氏は口数は少ないですが、ちゃんと私達の話の奥まで考えて聞いていて、たまに発言される言葉は本質をついていて見事でした。
職人になる人というのはこういう人だと思いましたし、奥野氏は今まであまり目を向けていなかったステーショナリーというものを急激に吸収しようとしていることも感じられました。
仕事の話が一通り終わり、鈴木氏がフェラーリに乗っていたという話になりました。あまりにも維持費がかさむのと、あまりにも実用的ではないということで、もう乗っていませんが、乗っていたということがステータスに感じられるフェラーリのブランドイメージの強さに凄まじいものを感じました。
鈴木氏はレーシングカーも所有していて、サーキットを走らせていたこともあり、そのエンスー振りは半端なものではありませんでしたが、そんな彼が角目のEクラスに始まり、同じ車に戻っていることに面白さを感じました。
角目のEクラス。ペンでいうとペリカンM800あたりでしょうか。

突っ張ることの意義

2007-07-08 | 万年筆
自費で万年筆の雑誌「スティロ」を発行されているKさんが、貴重な休日を岡山から出てきて下さり、三宮でお会いすることができました。
温厚で思いやりに溢れたKさんが、「スティロ」では辛口の発言をされていることに、その文章を書いている人は本当に同じKさんだろうかと、私も不思議に思っていました。
普通あまり敵を作りたくないと思って、無難な発言に終始してしまうことが多いと思いますが、それをあえて発言し、行動されている貴重な方です。
波風を立てずに、穏やかに過ごすことの方が遥かに楽で、臆病心から言いたいことを言わず、自分の気持ちや意見に蓋をしてしまうものです。
しかし、それでは何も変わらないし、道は開けていきません。
間違っていることを間違っていると言う、至らないものに辛口の意見を言う。
誰も言わなかったことをKさんは読者たちに、問いかけています。
あえて突っ張って生きていくことは大変で、勇気のいることですが、とても魅力的でかっこいい生き方だと思えました。
尖がった発言をするには、強くなければいけませんし、知識も必要です。自分自身を律する力も必要になってきます。そんなKさんの強さが「スティロ」での発言に表れています。
その発言は、あまりにもちゃんと万年筆をお客様に薦めていない万年筆業界への怒りも込められていて、そんな売り方をしているから万年筆を使う人が減ってしまったというもっともな指摘に、万年筆の仕事に携わる人間として耳の痛い内容もたくさんあります。
しかし、私がKさんとのお付き合いをずっと続けてくることができたのは、今までの私の発言が聞きかじりなどではなく、自分で感じたことを発信してきたという私自信の自負とそれをKさんが理解してくれているからだと勝手に思っています。
「50代になると体のあちこちが痛くなってくる。」と言われていましたが、非常に頑丈な手を感じながら握手して別れました。
貴重な時間を私との会談に割いてくださったことに心から感謝しました。
シヤープで辛口な文章をいつまでも書き続けていただきたいと思いましたし、Kさんの何十分の一でも突っ張って生きていきたいと思いました。