一期一会 ~万年筆店店主のブログ~

哲学、想いを発信している、Pen and message.店主吉宗史博のブログです。

ルーペ

2017-07-30 | 実生活

ルーペは調整士にとって、それがないと何も始まらないとても重要な道具です。

私は万年筆の調整を教えてもらうようになった時にいただいたものをいまだに使っています。

万年筆がよく売れていた時代に、ペンの販売員に配っていた25倍のルーペで、一般的に性能の良いルーペと違っていて、レンズの中央でしかクリアに見ることができません。

小さなペンポイントを見るので視野が狭くてもよくて、ルーペを前後させることで被写体を大きくしたり、小さくしたりして見ることができればいいので、こういう仕様なのだと思います。

誰にでも配った、というものなので特別な素材など使われていない普及品的な真鍮にクロムメッキしたものです。

同じ見え方をしてもっとゴージャスなスターリングシルバーとか、金無垢とか、銘木などのものがあれば喜んで買うのに、なかなか代わるものがなく、もう20年以上使い続けている。

ルーペを使い始めたばかりの時、いかにかっこよく構えて、ペン先を見るかということを研究したことがありました。

目から40cmくらいの位置にルーペを構えて、焦点を探し回らずに一瞬で合わせて見るのが一番かっこいい。視野が狭く、焦点が合わせにくい高倍率なルーペでそれをするから、よりかっこ良くてプロっぽい。

ルーペを目に近付けて焦点を探しまくるのはかっこ悪いと思い込んでいて、ルーペを離して、一発で焦点を合わせる練習を家で密かにしていた。

本当に下らない調整の本質とは何の関係のないことだと思うけれど、当時の自分には重要なことだった。でも、若い頃はペンポイントがルーペなしで見えていた。今はルーペがないとペンポイントの状態が見えなくなっているので、その道具も使い方も重要度がより高くなっているのかもしれません。

私たちは時には一日中これを見て、この中の景色を何とか美しくしようとする。細かい作業ですねとよく言われるけれど、私自身はこのルーペのおかげでそんなに細かい仕事だと思っていない。

 

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人口島の夜

2017-07-25 | 実生活

恒例の正方形ダイアリーカバーの打ち合わせに3人でル・ボナーさんを訪れました。

店を閉めてから行くので六甲アイランドに着くのは8時頃になってしまいます。

夜の六甲アイランドは行き交う人も少なく、所々照らされているライトの輝きがかえって物悲しく見えます。

周辺のお店の灯りが消えて真っ暗な中、ル・ボナーさんの灯りだけがあって、この街で繁栄している数少ないお店のひとつであることを象徴しているような風景だと、夜訪ねるたびに思う。

松本さんが当店に来て下さったりして、何度も会っているけれど、ル・ボナーさんを訪れるのは1年振りです。

毎年のダイアリーカバーの製作の用事がなければ、なかなか六甲アイランドに来ることがないと言うと寂しいし、用事がなくても松本さんに会いに来ればいいと思うけれど、仕事の邪魔をしたくないとか色々考えてしまいます。

打合わせ前に近くの中華料理屋さんで食事をしながら世間話をしました。

私も、その思い出で一生生きていけると思うほど楽しかったし、松本さんもあの旅行は楽しかったと言ってくれる松本さん、分度器ドットコムの谷本さんと行ったドイツ~チェコ~イタリア旅行の話は毎回しているけれど楽しい。

こういうところで言うべきことかどうか分からないけれど、当店が立ち上がる10年前以前から助けてくれていた松本さんに対しての私の感情は複雑です。

心から慕っていて、会えばとても楽しいし、いつまでも話していたいので常に関わっていたいと思う。

でも何かを作ってもらったり、仕事を頼むことは面倒をかけているような気がして、申し訳なくてとても言いにくい。

松本さんはご自身のお仕事で手一杯で、仕事がなくて困ることなどない。

独立系鞄職人界のヒーローで、カリスマだけど、苦労して今の地位を築いてきたことを知っているので、仕事に困っていない今はマイペースで好きな仕事だけをやってもらいたいと思う。

本当は毎年お願いしているダイアリーカバーも面倒を掛けていて、松本さんに甘える形で作ってもらっているので、心苦しいけれど、これがなくなるのも寂しい。

そこには身内に対する心の葛藤しかなく、良い物を作るなどプロとしての意識とか、それを求めているお客様の存在はなくて、聞く人が聞いたら何でそんなことを思うのか分からないかもしれない。

しかし、そんな仕事の建前も、プロフェッショナルの肩書も松本さんとの関わりにおいては捨てる。

革の保管室で面白そうな革を松本さんが広げてくれて、その話を聞いているのは楽しい。

いつまでもそうやって聞いていたいけれど、そういうわけにもいかないので、松本さんが勧める革の中で私も今回はこれを使いたいと思うものを選びました。

夜が更けて、さらに寂し気になった六甲アイランドを出る時、いつも後ろ髪引かれるような気持になります。

でもまた松本さんに会うために訪れたいと思います。

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仕事道具

2017-07-23 | 実生活

 

あまり敏感な方ではなく、有難味というものをジワジワと感じてくる性質で、自分の仕事道具への愛着も時間が経って持ち始めます。

どの道具も代わりの利かないもので、しかもまた手に入れるには大変なエネルギーも要るので、大切にはしていたけれど、それにモノ以上の愛情は持っていなかった。

でもそれらの道具によって自分の仕事が成り立っていると思うと、そして出張販売などで旅をともにすると思い入れも強くなってきます。

出張販売のために新調しました携帯用ペン先調整機は、これを持ち運ぶために道を選ばないといけなかったし、飛行機では預けないといけなかった。

新幹線では自分の席からはるか離れて最後尾に置いておかなくてはならなかったので、駅に停まるたびに盗まれていないか見に行かなければならなかった。

携帯用と言っても、10数kgの重さがあって、探し回って一番フィットしたホームセンターコーナンのアルミ運搬ケースに入れて、大きな車輪のキャリーカートに載せて運ぶ。

でも手をかけられると愛着がより増すのかもしれません。

機能的には完璧で、調整機に対する私の全ての要求を叶えてくれているので、苦労して持ち運ぶ価値は十分にありますので、どんなに大変でも仕事に持って出る。

一番重宝しているのは、最近かなり機会が多くなった細字研ぎ出しやスタブ加工時に使う、粗研ぎ用のヤスリを装備している点です。使い捨てのヤスリをロッドを外さずに簡単に早く交換できる機能です。

他にもいろんな機能があって、何でも言いたいし、細部の写真も掲載したいけれど、大切に思えば思うほど、隠したくなってきました。

紹介したいのか、したくないのか分からない内容かもしれないけれど、仕事道具への愛着を書いてみたいと思いました。

 

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個性

2017-07-18 | 実生活


デザインは普通で、無難だけど、ペン先が個性的な国産の万年筆


子供の頃から特に個性的でもない平凡な人間でした。

普段、自分が平凡であるということを意識しているわけではないけれど、何かに秀でた才能を持つ人を見たり、カッコよく個性的な身なりをした人を見たりすると、自分の平凡さ加減を思い出します。

見た目も、起伏のない性質も、それが何となく負い目に感じられていて、若い頃は本来の自分以上に個性があるように見せかけようとしたこともありましたが、無理していることは自分がよく分かっているし、他人から見てもそれは見苦しかったと思います。
あまり思い出したくない若気の至りでした。

しかし、もう自分の何かを変えるというのは難しい年齢になったし、何よりもありのままの自分を自分が受け入れるようになって、自分と戦わなくてもいいようになりました。

自分は見た目も、性質も平凡だから普通の行動をする。
自分の個性を表現するのは、仕事ですればいいと思えるようになったのは、結構いい齢になってからで、もっと早く気付いていればよかった。

お祭り騒ぎに興じて騒いでハメを外す、いわゆるバカになるということがとても嫌いでお祭りを楽しめたことはないし、だいたいお祭り騒ぎという言葉自体大嫌いだと言うと、とても陰気な人間に思われるのかもしれないし、それも負い目に感じていた。

ついでに言うと、飲み会などで今日は無礼講でと聞くと、嫌な気分にしかならないのは、私がお酒を飲めないからなのかもしれないけれど。

個性的な身なりも自分には似合わない。何せとても特徴のない外見をしているから。
雑誌などを参考に服をコーディネートしたり、同じものを買って着ても絶対に似合わないのは、モデルと自分の個性が違うからだ。

それよりも自分なりに上質だと思える、自分好みのスタンダードなものを身に着ける方が自然で楽しい。


そんな風に思えるようになったのは齢をとったからかもしれないし、自分なりに個性を表現できる仕事の意味がやっと分かりかけてきたからかもしれません。

私たちのような店は、人の心を掴む他のお店がしていないことをいかに見つけるかが大切だと思っている。

流行を追いかけたり、誰もがしていることはしたくない。

これは平凡な人間のせめてもの反発のような気もするけれど。

 

 

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出張販売週間の終わり

2017-07-11 | 仕事の考え

 

3週間連続での出張があっという間に終わった。

私はすごく楽しかったけれど、札幌でお世話になった北晋商事の金さんと奥様、KA-KU奈良店では㈱酒井の菅野さんと南園さん、福岡では工房楔の永田さんの強力なサポートがあって、本当に感謝しています。

それぞれのイベントでは、一人でオペレーションするということをイメージして出掛けたけれど、結局人の助けが必要でした。

おかげで各イベントは課題は残したけれど、大きな問題はなく終わりました。

つい最近のことなのに、各イベントがものすごく懐かしく感じるのは、それらに人たちの交流、お客様との出会いがあったからで、その点でも感謝しています。

今回のイベントも、私が外に出て仕事をしてみたいから、衝動的に飛び出したと思われるかもしれませんが、考え続けてその機会が訪れたから重い腰を上げたという方が正しいかもしれません。

外で仕事してみたいという想いはずっと持っていて、やってみるとやはり楽しかったけれど、店に籠ったままで慣れた仕事をしている方がじっくり仕事に向き合える。

でも敢えて外に出て行ったのは、それが当店にとって必要な活動だと思ったからでした。

それがなければいくら外に出て仕事がしてみたいと思ってもやらない。

仕事においていつも自分を動かしているのは、名誉とか欲ではなく、生活への不安だと言うと変なのだろうか。

この店を良くしていかなければ、自分や家族、スタッフの生活が成り立たたなくなるという危機感が、私の仕事の原動力になっている。生きていくためにこの仕事をしていると言うと、あまりにもロマンがないのかもしれないけれど。

今回出張販売イベントや調整応援をしようと思ったのも、その場所を札幌と福岡にしたのも、あれこれ理由をつけているけれど、私の生存本能が決めたことだったような気がします。

でも各イベントを毎年継続して、それぞれの都市の需要に合ったものにして、もっと集客できるものにしたいと思っています。

昨日から店にいて、出張中にたまった仕事を片付けているけれど、しばらくは店がより良くなるように、腰を落ち着けて仕事していきたいと思っています。

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Pen and 楔 福岡展2017 7/8(土)9(日)

2017-07-06 | 仕事の考え

当店と工房楔との共同開催の出張販売イベントを福岡で開催いたします。

当店はオリジナルをはじめとする商品販売と万年筆の調整販売、お持込品のペン先調整を、工房楔は今回のイベントのために仕込んだ数々の木製品を販売いたします。

私たちの福岡での初のイベントになります。どうぞ、ご来場下さい。

福岡は数年前に家族旅行で訪れた時から良い印象を持っていました。

多くの人が行き交い大きくなり続けている近代的な博多駅周辺。コンパクトな中に街が詰まっていて、それでもゴミゴミしていない清潔感のある天神。天神から歩いてすぐですが、落ち着いた上質な雰囲気のある大名、赤坂付近。

この街で仕事がしてみたいと、今回のイベントはそんな私の思い付きを工房楔の永田さんが賛同して下さり、いろいろ教えてくれて実現しました。

どんなイベントになるか分からないけれど、重ねることで良いものにしていきたいと思っています。

福岡地方、かなりの降雨量で被災された方もおられるかもしれません。お見舞い申し上げます。
ご来場が可能な方はお気をつけて、ご来場下さい。
心よりお待ちしております。


・イベント中、ペン先調整、調整販売をご希望される方は30分ごとの予約制とさせていただきます。
ご予約はメール(pen@p-n-m.net)か電話(078-360-1933)でお申しつけ下さい。(9日は空きがありますので、ご予約なしでも承ることができます)
・イベント会場でのご決済は、当店、工房楔別々のお会計になります。当店は現金のみのお会計になり、クレジットカードのお取り扱いができませんので、ご了承下さい。(工房楔さんはクレジット決済が可能です。ちなみに万年筆銘木軸こしらえはPen and message.商品になります
ご不便おかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

 

 

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KA-KU奈良店さんの調整応援

2017-07-03 | 実生活

大和西大寺といういくつもの近鉄電車の路線が交差する奈良の交通の要所のようなところに、奈良ファミリーというショッピングセンターと近鉄百貨店があります。

その近鉄百貨店内に筆記具専門店KA-KU(カーク)奈良店があります。

東急ハンズさんの横の目立たないあまり大きなスペースではないお店ですが、そのお店で、そのお店の顧客サービスを目的としたペン先調整会をしてきました。

このお店のテナント元である近鉄百貨店さんが、この企画を新聞折り込みしたチラシに盛り込んで下さった効果は大きく、チラシを見て来られたというお客様が、年配の方を中心に来られました。

皆様、持っていていつかまた使いたいと思っていた万年筆を持って来て下さり、ゆっくりと時間をかけながらペン先調整をしながらお話しました。

そういう時の私の興味はいつも同じで、どちらから来られたかということです。ほとんどの方が地元の方でしたので、チラシが効果を発揮したのもうなずけました。

神戸も好きでよく行くと皆様言って下さり、奈良の話題よりも神戸の話をよくしました。

札幌での出張販売同様、第1回目ということで課題と反省のたくさんあるものでしたが、明るい光が見えて、次回できることが見えたことは幸運でした。

百貨店の社員食堂も初めて経験して、大いに気に入りましたし、売場とバックヤードの境目で、お辞儀して入退出することもやってみたかったので、楽しい経験ができました。

最後になったけれど、KA-KU奈良店のスタッフの皆さんに大いに助けてもらって、ペン先調整に集中することができたこと、楽しく過ごすことができたことに感謝しています。

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