店をしていて楽しいなと思うことはいくつもあります。
この店に皆が集まるひとつの家のようになって、温かい穏やかな雰囲気に包まれると、この時間がずっと続けばいいなと思います。
特に冬は屋内の温もりが嬉しいので、団欒の季節だと言えます。
男ばかりが集まるとそれぞれの意見を言い合う議論のようになることがあります。
理屈っぽい話がいつまでも続いて、どんどん次の話題に移っていく。
話題はどんなものでもよくて、これは男のコミュニケーションの手段だと思っています。
家で何人かの男が集まるとこういう議論のようなものになって、子供は傍で聞いて、大人の考えや生き方を察して、自分も大人になった時にこんなに難しい話ができるのだろうかと、大人のすごさを知ります。
誰にもこういう大人の話を聞く機会があればいいなと思います。
大人になるまでに大人の話を黙って聞くことは、自分が話すことよりもはるかに大事で、その蓄積が薄っぺらい若さにその人の奥行きを作るような気がします。
大和座のお稽古場で、皆でああだこうだと言い合っていた時も安東先生が、こういう場が芸の肥しになるとおっしゃったけれど、本当にそうだと思います。
そういう議論から考えのきっかけを掴むこともあるし、書くもののネタを仕入れることもあります。
議論の中で、自分が言ったことが気付きになったりするし、人が言ったことはもっと大切な何かになっている。
仕事について、人生について話し合えるこういう場は、自分の人生にとっての宝物だと思っています。