元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

議論する

2013-11-26 | 仕事について

店をしていて楽しいなと思うことはいくつもあります。

この店に皆が集まるひとつの家のようになって、温かい穏やかな雰囲気に包まれると、この時間がずっと続けばいいなと思います。

特に冬は屋内の温もりが嬉しいので、団欒の季節だと言えます。

男ばかりが集まるとそれぞれの意見を言い合う議論のようになることがあります。

理屈っぽい話がいつまでも続いて、どんどん次の話題に移っていく。

話題はどんなものでもよくて、これは男のコミュニケーションの手段だと思っています。

家で何人かの男が集まるとこういう議論のようなものになって、子供は傍で聞いて、大人の考えや生き方を察して、自分も大人になった時にこんなに難しい話ができるのだろうかと、大人のすごさを知ります。

誰にもこういう大人の話を聞く機会があればいいなと思います。

大人になるまでに大人の話を黙って聞くことは、自分が話すことよりもはるかに大事で、その蓄積が薄っぺらい若さにその人の奥行きを作るような気がします。

大和座のお稽古場で、皆でああだこうだと言い合っていた時も安東先生が、こういう場が芸の肥しになるとおっしゃったけれど、本当にそうだと思います。

そういう議論から考えのきっかけを掴むこともあるし、書くもののネタを仕入れることもあります。

議論の中で、自分が言ったことが気付きになったりするし、人が言ったことはもっと大切な何かになっている。

仕事について、人生について話し合えるこういう場は、自分の人生にとっての宝物だと思っています。

 


スピーチが終わって

2013-11-20 | 実生活

スピーチが終わりました。

先に申し上げますが、今回の機会を作って下さった兵庫県立播磨南高等学校の皆様、話を聞いてくれた13人の生徒の皆さん、この機会に誘って下さり、時間中サポートし続けて下さったM先生に心から感謝申し上げます。

 

ここ数週間ほど、いやこの日が決まってからずっとかもしれませんが、いつも頭の中にあって、ああでもない、こうでもないと大和出版印刷の薄型ノート1冊を書きつくして、そこからもはみ出しても話したいと思うことを書き続けていました。

高校1年生の人に話せるようなことを自分が持ち合わせているのか、分かりませんでした。

でも今回のテーマを好きなことを仕事にするというふうにしようと決めました。

皆同じように高校を出て、大学に行って、企業に就職してそのまま定年を迎えるという生き方以外にも選択できる生き方はあるということを伝えたいと思いましたし、どんな環境でも情熱を持って、前向きに生きて欲しいと思いました。

 

話す前にプラチナプレピーを配りましたが、なかなかインクが出ず、立ち会ってくださったM先生も生徒の皆さんの間をまわってくれて、やっと全員の万年筆が書けるようになりました。

前半の自分の仕事についての説明は、その場になじんでいないような、私が勝手の舞い上がってしまってボロボロでしたが、生徒の皆さんは黙って聞いてくれていました。

本当に言いたかったことは言えたと思いますが、高校1年生の皆に伝わったかどうか?

M先生が私が言ったことを とてもきれいな板書をしてくれて、ノートをとるように言ってくれましたので、皆さんノートにいろいろ書き込んでくれていました。

話が終わった後、質問してくれた男の子がいて、その子にはもっと突っ込んだ、具体的な話もできたのかもしれないと思いました。

懐かしいチャイムの音とともに時間が終わって、田んぼや民家に囲まれた学校を、北区する生徒さんたちとともに出ました。

今度はもっと上手くできるかもしれないと、やり残したような気分でしたが、高校生の時の自分に言いたかったことは言えたと思いました。


伝えたいこと

2013-11-17 | 仕事について

私がいつも伝えたいと思っていることは、何かを伝えたいと思い始めてから変わっていなくて、同じ場所、同じ環境の中にいても、その日常は自分の心の持ち方、考え方で全く違うものになるということに尽きます。

でもこれは当店に来られるようなお客様は皆分っておられることで、話の流れで確認し合うようなことはあっても、特別に話すようなことではないと思っています。

仕事や毎日がしんどいとかつまらないと思っている人や、まだ仕事を始めたばかりの人や、まだ学生の若い人たちに伝えるべきことなのかなと思っていました。

今回、播磨南高校で自分の職業観について話す機会を与えられたことは、実はとても有り難いことだったのです。

最初、1学年240人のたくさんの人を相手にするスピーチ形式になるのではと思っていましたが、各自が話を聞きたいと思う職業の人を選んでその教室に行く形式ということが分りました。

自営業で万年筆店をしている店主の話を聞きたいと思ってくれた人は13人で、大学のゼミの人数くらいになって、私にはちょうどいいのかもしれないと思いました。

それでも13人の人が万年筆店主の話を聞きたいと思ってくれたことに感心しました。

将来にいつも漠然とした不安を持っていた高校生の時に大人の人、自分の仕事を持って、自分の生活を確立していて羨ましく思っていた大人の人から聞きたいと思っていたことは、どうすればその生活を手に入れることができたかということで、そんな話もしたいし、若い人たちが、これから自分で決断して道を選ぶ役にわずかでも立つ話しもしたい。

11月20日が過ぎると、もうこういうことは考えなくてもよくなるけれど、実はとても楽しんでいる。

当日は緊張すると思うけれど。


ブログを書くこと

2013-11-12 | 仕事について

ラインティング・ラボの革製品を作ってくれている革工房/ショップのベラゴさんが当店のすごく近くに引っ越して来られました。http://bellago.exblog.jp/

前にあった旧居留地はとてもイメージの良いブランド地域だったけれど、元町駅西口北側は、海岸通らトアウエストなどのブランドが付かないけれど、適度に閑静でこだわったお店が点在する私としてもおすすめの場所です。

ベラゴの牛尾さんのイメージにもとても合っている場所だと思い、ベラゴさんの更なる発展に役立つ場所だと思います。

 

ここ数週間いろんな締め切りやら、用事やらがあってブログが更新できていなかった。

ブログの更新は靴の手入れと同じで、しなくてもいいけれど、自分が趣味に思っているやりたいことなので、これができていないことは不本意なのです。

前の晩から考えていること、あるいは数日間頭の中でブスブスとくすぶっていることを店に来るまでの通勤時間で文章にすることがとても楽しく、時間があっという間にすぎてしまいます。

この時間のためにライティング・ラボのサマーオイルメモノートがあって、専用の太字のペリカンM450がある。

JR神戸線の電車の中で万年筆で一生懸命何か書いている変な男がいたらそれは私である可能性が高いし、もし私でなかったら私もその人に会ってみたい気がします。

来週の水曜日は播磨南高校でのスピーチがあって、それについて考えていますが、考え抜いて何か楽しみになってきました。

 

 


母の背中

2013-11-05 | 実生活

子供の時、団地の自宅から父や母の自転車の荷台に取り付けた子供用の椅子に乗ってよく出掛けました。

私は子供の頃、病弱で常にどこかの病院にかかっていたし、小児ぜんそくを持っていたので、毎週近くの大阪医大に行かないといけませんでした。

母の自転車の荷台に乗って高槻の町へと向かう道は、いつもとても長く感じられました。

たまに同年代の子を見かけると、母の荷台に乗っている自分が気恥ずかしくてうつむいたり。

その時はもちろん気付かなかったし、最近まで思い至らなかったけれど、手のかかる子供がいて母はある程度の年齢になるまで自分の時間を持つことができなかったのではないかと、今頃になって思うようになりました。

父よりもいろんなモノが好きで、世界の一流品と言われるものを持っていて、いろんなことに興味があったと思うけれど。

最近事故などがあって、たまにニュースなどで取り上げられて知ることがあるけれど、パチンコ屋さんに子供を連れて行く母親がいるという。

ご本人は当然パチンコに夢中なので、子供のことは放ったらかしになります。

でも子供というのは目が離せないものなので、それを外で放っておく無神経は危険だと思うし、パチンコ屋さんのような大人だけが行く場所に子供も連れて行くという境界感覚のなさに腹が立ちます。

親になったら腹をくくって子供の時間に付き合うべきだと思うのは今風ではないのだろうか。

でもそれは私も若い父親だったので、気付かなかったけれど。

子供の頃、父親に雀荘に連れて行かれて長時間放っておかれたことを鮮明に覚えている妻は、息子が大きくなるまで自分の時間など持っていなかった。

大人になってから気付いて、今頃感謝してもおそいけれど、母のおかげで粘り強く物事継続する体力、モチベーションを保って長く仕事するような丈夫さは身についていた。