元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

伊集院静氏の訃報

2023-11-26 | 実生活

私が恵まれていると思うのは先生と呼べる人が何人もいて、その人たちのアドバイスをヒントに今までやってくることができたことです。

でも自分も齢をとるのと同じように先生方も齢をとっていって、昨年生き方の師としていた狂言師の安東伸元先生が亡くなってしまった。
とても先生に追いつけないけれど、その背中を追って生きてきた私は追うべき背中を見失ってしまった。

でも先生の言葉は私の中で生きていて、自分を見失わない指針になっているような気がする。

伊集院静氏の言葉は、親戚のおじさんが目を真っ直ぐに見て偉ぶらずに優しく話してくれる言葉のように素直に聞ける気がした。
カッコつけずに、飾らない言葉で語られる言葉は人の心に届くのだと実感した。

伊集院氏を知ってから、それまで夢中になって読んでいた生き方を語る人たちの言葉が薄っぺらいものに感じられて読まなくなった。
その代わり伊集院氏の本を新刊が出たら無条件に買うようになりました。

伊集院氏のようにダンディズムを持って美しく生きたいと思う人が増えたら、日本はとてもいい国になれるだろう。
私もなかなか上手くいかないけれど、伊集院氏のように生きたいと思いました。
伊集院氏の言葉の根底にあるものは、他者への優しさだと思っています。
何か道ならぬことをした人にも何か事情があったのだと酌む心の広さのようなものがあった。
今の時代はそういう人を寄ってたかって攻撃して、自分の正しさをアピールしたい人が多いけれど、そんなことをしても仕方ない。
それよりも皆が攻撃する人の事情を理解してあげて、思いやってあげる優しさを示す姿を親は子に見せるべきだと思う。

大衆心理とは逆のことを言っていた人だけど、多くの人の心を掴んで共感された。
かっこつけない言葉と優しさ。私たちの世代はまた先生と呼べる人を失ってしまった。


優勝パレード

2023-11-24 | 実生活

阪神とオリックスの優勝パレードが神戸と大阪であってニュースで観た人も多いと思います。

新しいビルが建ち並び整った御堂筋の景色に対して、神戸の建物はどれも古く不揃いな感じで、震災から、あるいは80年代からその景色は変わっていないように見えます。

だから良いとか悪いというわけではなく、懐かしい想いにさせる風景が神戸にはあってホッとすることもあります。
でもたまに大阪に出て行くと、街はきれいになっていて、焦りのようなものを感じないわけでもない。
それが神戸の人の今の感覚だと思います。

話をパレードに戻すと阪神が前に日本一になったのは38年前で、選手で日本一を経験していた岡田監督は悲願だっただろう。

Fさんは新卒で会社に入った年で、結局定年まで日本一にならなかったと言っていました。
私は高校2年生で、その夏長野の母の実家のレタス畑のアルバイトをしていました。
信濃毎日新聞のスポーツ欄で阪神の神がかり的な強さを確認するのが楽しみでした。
今自分がこうしていることは想像できなかった。

38年というのはあまりにも長くて、それぞれの人生が詰まった時間でもあります。