私は物を売る仕事をしているのでお客様が来て下さったら何か買っていただけるようにしないと仕事をしていないことになります。
今日はこれを買うという目的を持って来て下さる方はとても有り難いですが、そういった明確な目的がないお客様にも買いたいと思ってもらえるように何かをおすすめしないといけませんし、おすすめするのが礼儀だと最近思うようになりました。
しかし何かモノをおすすめするというのは本当に難しく、あまりしつこくするとお客様がうっとおしく感じてしまわれるのではないかと思ったりします。
本当に上手なお店の人は相手に不快感を与えず、買ってあげたいと思わせたり、薀蓄に惚れさせたり、自分に必要だと感じさせたりとそれぞれの持ち味でスマートに商品をすすめて買わせてくれる。
財布の中にお金があれば買うし、なくても後で何とかなるかと思いながらクレジットカードを差し出す。
上手な店員さんたちのように私はスマートにおすすめすることができず、商品をすすめると途端に胡散臭くなるとEさんに言われたことがあります。
多くのお客様から商売っ気がないと思われている理由はその辺りにあるわけです。
自分は商品をすすめるのが下手だということを前提に思いついたのが、店主のおすすめBOXです。
コンプロット4(クワトロ)ミニに、主に書き味において選りすぐりの万年筆を最も書きやすい状態に調整して入れておく。
その中に入っている4本はこの店の中で最も書き味の良い4本だということを視覚的に伝えるものです。
実はこういったことを以前からやってみたいと思っていましたが、具体的な形体が思いつきませんでした。
工房楔の永田さんのコンプロット4(クワトロ)ミニと出会って実現した今回の企画です。
今ボックスに入っている4本は、
パイロット変わり塗り M
ペン先の寄りを柔らかくしてインク出を多く、書き味を柔らかくしています。丸いイリジュウムに少し面を作っているの で、紙への当たりもソフトな印象。
アウロラ88 B
丸く辺りの硬いアウロラのイリジュウムですが、中心に面を作って辺りを柔らかくしています。寄りを弱めてインク出を少し増やしています。
こうすることでアウロラはものすごく気持ちよく書けるようになります。
セーラープロフィットレアロ B
セーラーはツボにはまればすごく気持ちよい書き味を持っていますが、そこから外れると書き味が悪くなります。ツボの書き味はそのままに外れた時の引っ掛かりをマイルドになるように角を落としています。
ペリカンM800 B
ペリカンのBはイリジュウムが大きいためか書き味は大変良いですが、書き出しがほとんど出ません。書き出しが出ないことを解消しながら、書き味良くしました。
店に陳列している万年筆は標準調整を心掛けていて、入荷したときにメーカー調整を補助する程度の調整にとどめています。
ボックスの中の万年筆は書き味が良くなるまでとことん手を入れています。
店主のおすすめ、ぜひお試しください。