元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

旅の扉更新しました

2012-05-30 | 仕事について

WRITING LAB.のブログ「旅の扉」更新しました。(http://www.writinglab.jp/)

キャラクター紹介ページを設け、コメントの投稿もできるようにいたしましたので、ぜひご覧ください。

WRITING LAB.として企画しました、革工房「IL Quadrifoglio」の当店でのイベントが6月2日(土)に迫っています。

当日、革小物の特注カラーの受付、イニシャル入れサービス、ブセット(熱コテ)による実演なども行います。

ぜひご来店ください。

 

 


道具を語る

2012-05-28 | 仕事について

人が自分の道具について語るのを聞くのがとても好きです。

それは野球選手のバットやグローブであることもあるし、ミュージシャンが楽器について語るものだったり。

自分が大切にしている道具について語る時、その人の自分の仕事に対する最も純粋で初心的な言葉聞くことができるような気がします。

私共のお客様の場合それは万年筆です。

それぞれのお客様は職場など日常の場所において共感してくれる人が少なく、万年筆に関しては孤独な想いをされていますので、ご自分の万年筆について語る機会が少ないと思います。

皆様の万年筆の個人的なお話をうかがうと少しお客様とお近付きになれたように嬉しく思います。

でもそれぞれの事情によって選ぶ万年筆の種類、字幅、インクの色様々で、それをお伺いするのは楽しい。

万年筆に関してもそうですが、皆様が最も目を輝かせてお話下さるのは、ノートや手帳などの紙製品の使い方についてです。

紙製品の選択、使い方はそれぞれのお仕事、ライフスタイルなどによって様々です。

長い年月をかけて考え抜かれたもの、そしてもっと自分の仕事を良くしてくれるものならすぐにでも取り入れたいと思っている。

どんな寡黙な方でも紙製品の使い方の工夫についてお聞きすれば、それについて語ってくれます。

そういう私も平凡で、起伏の少ない半生を語るのは楽しくないけれど、自分の手帳やダイアリーについて語るのは少しも苦になりません。


枇杷の実

2012-05-27 | 仕事について

今頃の季節、果物屋さんにビワが並ぶのを目にすると、小学校6年生まで家族4人で暮していた高槻の団地の部屋でのことを色々思い出します。

団地の棟の裏が花壇になっていて、父か母が1階だったウチの窓の下のところに食べたビワの種を埋めたら、それなりの木になって実が生るようになりました。

ウチが植えたということもあるし、ウチの窓の下ということもあって、そのビワをもぎる権利はウチにあって、窓からビワをもぎって食べていました。

木や葉っぱ、実はどれもあまり美しくないけれど、食べるととても美味しいと思っていて、ビワは今でも大好きな果物のひとつです。

子供時代のほとんどを過ごしただけあって、桜台小学校の目の前のその団地の部屋には本当にたくさんの思い出があって、今でも団地でのことをよく思い出します。

初めてうちにクーラーがついた日のことはよく覚えていて、木目調の今から思えばかなり分厚いクーラーから極端に冷たい風がけっこう大きな音とともに吐き出されていました。

確か本体から鎖のようなものが出ていて、それがパワーの切り替えだったような気がします。

夏の日曜日の家族の楽しみは、熱いうどんをクーラーでキンキンに冷えた部屋で食べるというもので、何とも素朴な楽しみだったと思う。

私たちの暮らしや、楽しみはあの頃と比べようもないくらい便利で、ハイテクになったけれど、何かと引き換えでないとキンキンに冷えた部屋でうどんを食べるということさえできなくなった。


日食

2012-05-21 | 仕事について

金環日食を見ました。

日食グラスグラスは買いそびれましたが、雲が薄くかかっていましたので、フィルターをかけたような感じできれいにリング状になった太陽を見ることができました。

日食とは言え、太陽が完全に隠れるわけではないのでそんなことはないだろうと思っていましたが、陽の光が黄色くなって、薄暗くなって、金環よりもこのことの方が面白く思いました。

昔の人は、リング状の太陽よりも、この光の変化に驚いたのではないだろうか。

窓を開けて、リング状になった太陽を見ながら、黄色い陽の光を楽しんでいると、二軒隣の息子の同級生のF君が日食グラスをかざしながら登校していった。

お互い少し照れたように笑いながら、会釈し合いました。

テレビでは大騒ぎしすぎで、他にも報じることはあるだろうと思いますが、誰とでも話のきっかけになる話題で楽しむべきだと思いました。

 

ボローニャ近郊のフェラーラの地震では崩れた建物の下敷きになった人が多く、被害が拡大しているという。

向こうの、古い建物の中だけリフォームして、街並みを保存しながら現代の暮らしに合わせるやり方はとても素晴らしいと思っていたけれど、耐震性という問題を突きつけられる形になってしまいました。

今後どのようにしていくかはともかく、あまり多くの人がなくならないことを願わずにはいられません。


Il Quadrifogrio(イル・クアドリフォリオ)のイベント開催6月2日(土)

2012-05-20 | 仕事について

土曜日のWRITING LAB.の打ち合わせにクアドリフォリオの久内さんご夫妻が来てくださいました。

イベントで発売開始するとても美しいペンケースが各色1つずつですが、完成したのでその仕上がりを見せに来てくれたのでした。

このペンケースはWRITING LAB.とクアドリフォリオのお二人との共同企画で土曜日の話し合いの中で、何度か試作を重ねて今の形になりました。

日本人の職人が作ったものであるけれど、その完成はイタリア仕込。

繊細で器用な日本人は物作りに向いている、そしてイタリア人は色や形、触感などフィーリングに対するセンスが飛び抜けている。

その両方をクアドリフォリオのお二人は兼ね備えていると思っています。

イベント時、ブセット(熱コテ)による吊り込み作業のデモンストレーションも予定していて、見て楽しむこともできるイベントにしたいと思っています。

ぜひご来店ください。


カンダミサコペーパーウェイト入荷

2012-05-18 | 仕事について

窓を開けて自然の風を入れた室内が気持ちいい季節になりました。

酷暑になるとさすがにそういう気持ちにはなれないけれど、夏もできるならクーラーの使用を抑えて、なるべく風を入れていたいと思う方なので、これからの季節は机の上にある紙類が飛んでしまったり、本のページが勝手にめくれたりします。

ペーパーウェイトはそんな夏の季節にあればとても便利なものだけど、デザインもサイズもちょうど良いものが少ないと思っていました。

カンダミサコさんのペーパーウェイトはコンパクトで本を押さえても邪魔にならないし、デザインもシンプルで質感も冷たくなく、暑苦しくなくて丁度いい。

真鍮に革を巻きつけて、手で磨いて光沢を出して、ひとつひとつのものが丁寧に作られている小品。

そんな風情のカンダミサコさんのペーパーウェイトが久し振りに入荷してきました。
https://www.p-n-m.net/contents/products/category2-11.html)

 

先日の神戸大丸へのカンダミサコさんのスポット出店は大成功に終わったようです。

カンダさんから直接結果などを聞いたわけではないけれど、お客様方から聞いたお話、売場の雰囲気などからそれは感じ取ることができました。

徹夜まではしていないけれど、それに近い状態で連日物作りをして臨んだ出店で、物の種類、カラーバリエーションが豊富で、売場作りも本当に上手いと思いました。

ご夫婦二人だけで革製品作りで生きていくカンダミサコさんと旦那さんの気持ちの強さ、才能を改めて感じました。


作り込む

2012-05-15 | 仕事について

WRITING LAB.のブログ「旅の扉」更新しました。(http://writinglab.jp/

オリジナル商品を作って、改良して少しずつ手を加えて熟成させることができたら、最終的にとても良い物になっていくだろうと思います。

もしかしたら、最終というものはなくて、熟成は永遠に続くのかもしれませんが、私はそうやって商品の価値を高めていきたい。

そうやって仕様が作り込まれていくのが定番商品の良いところで、限定品ではそれができません。

自分たちが作ったオリジナル商品の1回の製作ロットが終わって、次回製作に移行できる時に改良できるところはないかと思います。

コンセプトが変わらず、内容が良くなることだったらどんな意見も聞きたい。

それでも私たちのような小さなお店には値段やロットという壁が立ちはだかることが多いけれど。

WRITING LAB.オリジナルメモノート替紙(https://www.p-n-m.net/contents/products/WL0004.html)の仕様を少し変更したいと思いましたが、価格が倍以上になると知り見送りました。

皆様にご提案させていただいて、気に入っていただければお客様各自でしていただこうと思いました。

本当に簡単な作業です。

メモノートの簡素さはいいけれど、紙をちぎる時に小さな紙片が出てゴミになると思っていました。

それを防ぐことができて、尚且つ紙を切り離しやすくする工夫です。

紐を通す穴の上にカッターで切り込みを入れていただくだけで、とても簡単に切り離すことができ、ゴミも出ませんので、ぜひお試しください。

私も自分で切り込みを入れて使い始めましたが、とても使いやすくなりました。


台湾の雑誌「Watcher」に紹介されました

2012-05-15 | 仕事について

日本にも海外の品物を紹介する雑誌がたくさんありますので、台湾にもあって当然ですが、何か不思議な感じがします。

でも当店にも台湾や中国から少ないけれどお客様が来られることがあります。

最低限の受け答えだけでも英語でできるようにならないといけないですね。「イエス!」「センキュー!」だけでは恥ずかしい。

時計ライターNさんが当店を題材に記事を書いて下さって、台湾の高級品情報誌「Watcher」に掲載されました。

当店に置いていますので、また見に来てください。


家族の万年筆

2012-05-13 | 仕事について

息子が高校3年生になりました。

高校の入学祝いにラミー2000を贈ってからそれほど歳月は流れていないような気がします。

人の子が成長するのは本当に早く感じると思うことがありますが、自分の子も大きくなるのが早いとこの頃よく思う。

贈ったラミー2000を息子が使っているかどうかとても気になりますが、贈った物を使っているかどうか聞くのも何か野暮なようで聞いていなかった。

息子のペン立てにはいつもあの黒いボディがささっていて、ペン先をルーペで見れば使っているかどうかすぐに分かるのだけど。

最近妻がラミーサファリの白い万年筆を買ってきて欲しいと言いました。

家計簿や買い物メモ、他のノート書きなどを万年筆で書きたいというのが、サファリを所望した理由ですが、なぜ白なのかというと携帯電話が白だからと言います。

確かに彼女の、白にワンポイントのラインがライトグレーの携帯電話とサファリのホワイトはお揃いに見えました。

これが以前のクリップとペン先が黒のサファリでは揃った感じが出なかったと思うと、ラミーもサファリを時代に合わせて変化させているのかもしれないと納得。

携帯電話とサファリのコーディネートを見た息子が、自分も携帯電話と同色の万年筆が欲しい言い出しました。

ただ彼の携帯電話はブルーのメタリック色で、それと揃えるとしたら、プラスチックのサファリではなく、値段が倍近いアルミボディのアルスターになり、2000の万年筆を使っていないのならもったいない。

そこでラミー2000を使っているのかと息子に聞くことになりましたが、息子は使っていると言います。

いつもダイニングテーブルで勉強している息子がラミー2000を使っているところなど見たことがない。

何に使っているのかと聞くと、文芸部で定期的に発行している部誌の執筆に使っているということで、私たちは納得しました。

アルスターは制服のポケットに差して使うと言う。

それにしても携帯電話と万年筆のコーディネートとは。

そんな自然で軽い万年筆との関わり方があったとはと妙に感心してしまいました。


屋根裏プラハ(田中長徳 新潮社)

2012-05-12 | 仕事について

写真に興味がなく、田中長徳という人に特に予備知識を持ちませんが、軽妙な文体が読みやすく、親しみを持ちました。

プラハの街に思い入れのある人はきっとこの本を読んで、懐かしくプラハを思い出されたと思います。

私も一人で歩いたプラハの街を思い起こしながら読み進んでいきました。

もう2年前に行った旅行でしたが、訪れたベルリン、ニュルンベルグ、プラハ、ボローニヤ、モデナ、パルマ、フィレンツェという街のことが気になります。

書名にそれらの街の名前を見つけると手に取って読んでいる。

年月が経つほどにそれらの街への憧憬は強くなって行きます。

以前、ペリカンが都市シリーズという世界中の都市をテーマにした限定筆記具を発売しましたが、どこかのメーカーが同じように都市シリーズとして、上記の都市をテーマにしたペンを発売したら、たぶん手に入れると思います。

それらの街が遠く海外であるからその思い出が貴重なのではなく、その街々での思い出がどれも自分の人生の中でも、特に美しいと思えるものだったから懐かしく思う。

プラハについては一人で歩いて、いろんなことを考えたから、他の街とはまた違った風な思い出になっています。

思い出をいつまでも大切に思っているのは、自分らしくなくて嫌だけど、一人旅の思い出の地プラハの街にはいまだに強く惹かれるものがあります。