元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

工房楔お年玉企画など

2017-12-28 | お店からのお知らせ

1月6日(土)11時から工房楔のお年玉企画をいたします。
恒例になっている企画で、工房楔の木製品をかなり安く買える企画で、モノはかなり良いものだけど高額だったものを永田さんが、採算度外視して放出したものが出ます。
ぜひ、1月6日(土)11時以降にホームページを見ていただきたいと思います。

 

本日最終営業日です。(正確には明日棚卸がありますが)

当店のような、時間がゆったりと流れているとお客様に言っていただける店でも、2017年が慌ただしく終わろうとしています。

今年もお客様方には本当にお世話になりました。

万年筆という世の中に絶対的に必要ではないけれど、あれば人生が楽しく充実する趣味のものと言えるモノを扱っている店だけど、やっている方は本気で、真剣に、一応苦しみながらやっています。

他の店との競争は万年筆においてはないと思っているけれど、私たちのような実際に店を構えている店は、インターネットなどの安売り店とどのように戦っていくか、他の趣味のものに対してどのように優位性をアピールするかが考えないといけない、多くのお店が直面している業界で考えないといけないことだと思っています。

今までのようにモノだけを売っていたらきっと潰れてしまうだろうし、やっている方も楽しくないと思います。

自分が万年筆と一緒に何が売りたいのか、何を伝えることができるのかをはっきりと出していかないと、使う価値のない店になってしまう。社会において、絶対に必要なものではないけれど、あればその街のお面白さや奥行きに貢献できる店でいたいと思っています。

今年もそんなことを考えながら、しかし絶対的な正解にたどりつけないまま終わろうとしています。

来年もそんなことを考えながら日々営業しているのだと思います。

来年もよろしくお願いいたします。


万年筆を修めたい

2017-12-24 | 実生活

物販の仕事は、12月に入ってクリスマスが終わるまで一気に駆け抜けるようなところがあって、その間は短い繁忙期ということになります。

当店もさすがにこの時期は忙しいので、店の実力がついたとか、このままずっとこんな日が続くかもしれないと勘違いしてしまいそうになりますが、そうではない。クリスマスが終わるとちゃんと暇になります。

当店はクリスマスが終ってから最終営業日(12月28日)までの短い間、棚卸をしたり、来年の営業の準備をしたりします。

もう来週には年末年始の休みに入っていると思うと、あまりの時間のなさに焦ります。

今年1年振り返ってみると、当店に求められていることについて考える年だったと言えます。

実は今まではそういうことは考えていなくて、自分は何がしたいのかとか、今の制約の中で何ができるのかということを考えてきたような気がします。

しかし、今年は出張販売に出て、それを成功させたいと思うようになったこともあるかもしれませんが、お客様は当店に何を求めているのだろうと考えるようになりました。

初めて行く土地での出張販売は、当店に何が求められているのか知るのにとてもいい機会でした。

当店は万年筆だけでなく、万年筆で書くことを楽しむことを追究する店として、万年筆の周辺のもの革製品、木製品、紙製品なども良いものを揃えようとしてきて、職人さんたちの力添えによりそれは実現していると思いますが、万年筆店としての基本をもっと追究しなければいけないと思い始めました。

万年筆店として万年筆を完璧に修めながら、周辺のステーショナリーも提案していく。
それがお客様方が当店に求めていることについて考えて、導き出した今後の方針です。

万年筆店でありながら、万年筆において今までできなかったこと、やっていなかったことを来年はできるようにしたい。

シリアスに、決意表明のように書いているけれど、それを万年筆を楽しみながら、追究して、それを皆様と共有したい。
私の万年筆に対する考え方も皆様にご理解いただけるように、来年も発信していきたいと思っています。


二種類のカバー

2017-12-21 | 仕事について

 

今年から正方形ダイアリー/ノート用の透明カバーを作って販売し始めています。

もともとグイード・リスポーリ氏の四角いグリーティングカードと、正方形ダイアリー/ノートがほとんど同じサイズだったことから、これを表紙にしたらすごく楽しいのではないかということで販売を始めました。

ル・ボナーさんの革カバーがあるのに、値段の安い透明カバーを発売したら、革カバーが売れなくなるという考え方もあるのかもしれないけれど、そんなことはないと思っています。

むしろ正方形ダイアリー/ノートが活性化して、相乗効果が生まれるのではないかと思います。

表紙とカバーの間に何か挟んだりするための透明カバーとル・ボナーさん秘蔵の革、お勧めの革を使った革カバーとでは、その楽しみ方が全然違う。

 

革カバーの楽しみは、その革の手触り、質感、エージングを楽しみ、その革の出自を楽しむ。

今年限定の革カバー テイカのオイルネバックはシルクのような滑らかな手触りを持った革で、使い込むと美しい艶を帯びます。

この手触りはヌバックだからこそできたものだと思います。

クラシックカーフは野趣み溢れる革で、個人的にはこういうワイルドな趣のある革が好みです。
イギリスで確立された鞣し技法が現代の環境基準には適合しなくなって、その方法がインドに伝えられインドで鞣された革だそうです。環境的にはあまりよくないのかもしれないけれど、こういう革には魅力があります。

シュランケンカーフは、ル・ボナーさんの定番で、その扱いやすさといつまでも変わらず美しく使えるところはさすが定番革です。

相乗効果が生まれたかどうか、まだ分からないけれど、いろいろアレンジして使うことのできる透明カバーの存在で、オリジナル正方形ダイアリーはより幅広い層のお客様に使っていただけるようになったと思うし、革カバーの良さを再認識しました。

 

 

 


英語講座 Kobe Writing Club 開講いたします

2017-12-17 | お店からのお知らせ

学生の頃、英語が大嫌いでした。英語という科目が嫌いだったという方が正しいかもしれません。

それでもそれから今に至るまで、英語のことを無視し続けてきたことは何となく負い目として心の中にあり続けました。

この店を始めた頃はあまり実感しませんでしたが、日本は海外からの人や情報など様々なものの波に飲まれるだろうと思われて、やはり当店のような小さな店でもそれは意外と早くやってきました。

一方的に飲み込まれて、その中で翻弄されるのは嫌なので、今年自分から飛び込んで行く覚悟を決めて始めた仕事があります。

それは来年早々お伝えするつもりですが、その仕事をお任せしている岩田朋之さんを講師にした英語講座を来年2月開講いたします。

私自身、お尻に火がついていて英語を学ぶきっかけにしたいと思っています。

以下、英語講座Kobe Writing Clubの募集内容です。

 

 

~手で書くことから始まる英語の楽しみ英語講座~ Kobe Writing Club開講のご案内

万年筆で、筆記体で綴りながら、音読を楽しみ、みんなで意味や感想を話し合う英語講座を始めることになりました。

講師は、当店の輸入交渉をお願いしている岩田朋之先生です。

岩田先生は、旅行代理店などで勤務後、独立して現在日本企業の輸入をサポートする会社アジアンロードを経営しておられます。

企業の英語トレーニングなど、英語講師としても実績があります。

岩田先生は帰国子女などのネイティブではなく、仕事の中で英語を再勉強して身に付けたので、英語を習う人が難しいと思う所などがよく分かるそうで、それは英語講師として大変な強みだと思います。

万年筆店であるPen and message.での英語講座 Kobe Writing Clubへのご参加のお申込みをお待ちしております。

 

カリキュラム(120)

1.    ウォーミングアップ 

2.    今週の課題についての解説

3.    ライティング練習

休憩

4.音読

5.歓談(英文の意味や感想についてできる限り、英語で楽しく話し合います)

6.講師まとめ 英文の出てくる重要単語や構文などについて整理します。

・受講料1回3500(講座で使用するノートは別途お買い求めいただきます) 

 

必要なモノ

・好きな色のインクを入れた万年筆 (文章の内容によってインクの色を変えてみるのも一興かと思います)

・講座指定のノート (正方形サイズの方眼ノートを予定しています)

 

日程

毎月第2木曜日 18:3020:30 1120

2回目 2018年38() 3回目412() 4回目510() 5回目614()

 

参加のご予約は電話、メールなどで承りますが、受講料を前払いいただくことでご予約確定といたします。(キャンセルは承れませんのでご了承ください)

各日程、定員に達しましたら、募集を締め切らせていただきます。

よろしくお願いいたします。


究極のガラスペン

2017-12-12 | モノについて

先日、江田明裕さんのガラスペンを当店で買われたお客様からメールをいただいて、あんなに細く滑らかに書けるガラスペンは他にないとお褒めいただきました。

様々なものに詳しく、厳しい目をもって実際に使い込まれる方なので、その言葉は本当に嬉しかった。

江田さんのガラスペンは、万年筆、革製品、木製品が中心と並ぶ当店において、いいアクセントになっていると思います。重厚なものの中に、透明感があって、清らかな明るいものがある。

当店は長い間、ガラスペンを扱ってこなかった。これと思うものに出会わなかったのがその理由ですが、お客様からガラスペンはないの?とはよく聞かれていました。

たまたま休みに倉敷を歩いていて、立ち寄った建物の一角に江田さんの工房があって、ガラスペンが目についた。

試し書きして書きやすかったから購入したということにしているけれど、もちろん試し書きはしたけれど、本当は江田さんの人柄がその作品を物語っていて、良いはずだと直感で買って帰りました。

そして、持ち帰って試してみたら書きやすかった。

直感は、この人とは波長が合いそうだとか、この人なら良いものを作りそうだというようなものだったけれど、本当に幸運な出会いによって、当店は江田明裕さんのガラスペンを扱っている。

もし私がたまたま倉敷のあの工房に入らなければそれはなかったと思うとヒヤヒヤしますが、当店はどこにでもあるものばかりを扱いたいわけではなく、自分が良いと思うモノ、尊敬できる人のものを扱っていたいと思っているので、展示会などに出向いてもあまり収穫はないのかもしれない。

 

万年筆に限らず、ペンの書き味において細く滑らかに書けるということは究極だと思います。

太くて滑らかに書けるものはいくらでもあるけれど、細く尖ったもので滑らかに書けるようにするためには、技術が優れていないとできませんし、時間もかかる。

大量生産されるガラスペンでは書き味の調整まで気が回らないのは当然だと思います。

江田さんは、美しい軸のペンを作るというガラス作家としての仕事と同じくらい、書き味にもこだわっていて、滑らかな書き味のガラスペンを作りたいと思っておられる。

これからもこういう当店ならではのモノと出会いたいと思うけれど、これは本当に運なのかもしれない。

 

 


モノの力

2017-12-03 | 実生活

11月の定休日に奈良に行きました。ポカポカ陽気で気持ち良かった。

私くらいの齢になると、たくさんのものはいらないから、大切にして持っておきたいもの、自分の美意識を表してくれるようなものだけを持っていたいと思うようになります。その範疇に入らないものもありますが、万年筆などはそれに入ると思っています。

ある人は、人に話せるエピソードのある個人的に面白いものと言われるけれど、それも持っておく価値の充分にあるものだと思いました。

そろそろ人が何と言おうが、自分が良いと思うものだけを持っていたいと思うので、手に入れるものは減っていくかもしれないけれど、単価は上がっていきます。

簡単に手に入れることができるものではなく、それを手に入れるために衝動買いをしないなど、がんばって時間をかけて手に入れる。
手に入れるまでの時間も楽しめるようになったのは、齢をとったおかげかもしれません。

持っていて楽しいものは、絶対に高いと思っていて、その価値感に当てはめると安くて良いものはない。
1万円の日本の万年筆の価値は、絶対に3万円の万年筆の価値を超えることはないと思っています。

私たちは万年筆がただよく書ければいいわけではなく、コストパフォーマンスが高いということも大した価値ではないように思えます。

人によって、万年筆のあり方は様々だと思いますが、それは精神的なものと結びついたものであってほしいとずっと思ってきました。
それを当店は「message.」という言葉に集約している。

例えば、私は日々の仕事に追われて、毎日の売上に一喜一憂する小さな人間だけど、その万年筆を手にすると理想だと思う自分の姿を思い出すことができるというものを持っていたいと思う。自分が持っていてこうだから持っていると人に言えるような万年筆ばかりを持っていたいと思います。

私はモノを売って生きているくらいなので、モノの力を信じている。
人はモノによって元気づけられたり、強い気持ちになれたりする。
力がもらえたり、精神的な支えにモノはなる可能性があって、そういう万年筆を当店は販売していきたいと思っています。